上 下
15 / 94
真理亜と再会

人形師に会いに行く。(光珠)

しおりを挟む
「おはようございます。」

「光珠、おはよう」

「私が、運転手しますよ!今日は、暇なので」

「私に、取られたくなくていつも迎えに来てるのではないのか?自信がないのか?まだ、そうなっていないのか?」

宝珠は、私に聞こえる声で言った。

「宝珠。希海さんと喜与恵さんは、ちょっと待ってて下さい」

「「はい」」

私は、宝珠を引っ張っていく。

「何だよ」

「そんな話を宝珠から、されると思いませんでした。」

「迎えに来るのは、何故だ?」

「宝珠に取られるのが、嫌だからかもね。」

「最初の頃、onにしてたのか?」

「あぁ、馬鹿でしょ?何か、初めてだった。希海さんの前だとありのままでいれると思った。だから、onにしていた。」

「聞いてしまったのだな!私への気持ちを…。」

「はい、聞きました。宝珠を愛してると…。」

「それで、信用出来ないのか?」

「信じたいです。でも、あんなに悲しそうな感情と声を聞いたら…。信じたくても信じられないんです。それで、宝珠の記憶が戻りインタビューをすると言われたので。」

「ついてきちゃったのか?仕事を全部休んでか?馬鹿だな」

宝珠は、私の肩を叩いた。

涙が、でてくる。

昔からだ!

宝珠に肩を叩かれたら、自分の悩みなど小さきものに思う。

相変わらず、宝珠は素晴らしい。

私、何かよりも沢山辛い思いを抱えてきたからだ。

「泣くなよ。縁は、光珠の方が強いし、私は宮部さんへの感情はないし。宮部さんだって、もうないんだよ。」

「それでも、宝珠が希海さんといたいと思っていた日があったのを感じる。」

「今、onにするなよ!」

宝珠に肩を叩かれた。

「すまない。私は…。」

「失えば、壊れるんだろ?あの子以来の恋か?」

「あぁ、そうです。私は、20年恋愛をしていませんから…。難しいですね。」

「宮部さんに、気持ちをぶつけてみたらどうだ?そんなんで、いなくなるわけないから!それぐらい強い縁なのだから…。」

「無理ですよ。無理です。私は、怖いのです。わかりますよね。宝珠」

「失うのは、誰だって怖いものだよ。」

宝珠は、私を抱き締めた。

「20代とは違います。今、失えば立ち直れない。」

「そんな事ないよ。人は、誰でもそう思うけれど…。立ち直れるもんだよ。光珠、一人じゃないだろ?大丈夫だ!私もいる。」

「宝珠、向き合わねばならないって事ですよね。」

「今から、会いに行く人の話を聞けば変わるんじゃないか?」

「必要な時しか、近づいてこないんですよね!」

「そうだよ、行こう」

やっぱり、私は物心ついた時から三日月宝珠が大好きだった。

三日月宝珠は、憧れであり、目標であり、私の分身だった。

「すみません、お待たせしまして」

「いえ」

希海さんがいるのは、私の隣なのだから…。

「光珠さん、おにぎり食べますか?朝ごはん、まだですよね?」

「ありがとうございます。」

私は、希海さんからおにぎりをもらって食べる。

宝珠は、喜与恵さんとはしゃいでいる。

「喜与恵、これ辛い」

「あーー。それ、私のです。キムチおにぎり返して下さい」

「もう、食べちゃったから」

「宮部さんが、私に作ってくれたんですよ。辛いの苦手ですよね!返して下さい」

「嫌だよ」

私は、ミラー越しに二人を見た。

「フッ」

笑ってしまった。

「楽しい?」

「あぁ、ごめん」

「ううん、よかった。楽しんでて」

「出発するよ」

「うん」

私は、エンジンをかけて発進した。

宝珠と向き合えばよかった。

さっき、onにした。

宝珠は、気づいていたと思う。

それでも、宝珠はありのままを私に聞かせた。

喜与恵が、好きだーーか!馬鹿だな。

「もうすぐ、つきますね」

「そうだね」

「ここですね」

私は、車を停める。

「近くの駐車場に停めてきますね」

「はい、待ってますね」

私は、駐車場に停めに行く。

宝珠と、もっと話そう。

希海さんと出会ってから、宝珠と
話せていなかったから…。

だから、ヤキモチ妬くんだよな。

私は、車から降りて歩き出した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ
ファンタジー
アラサーのサラリーマンのサトーは、仕事帰りに道端にいた白い子犬を撫でていた所、事故に巻き込まれてしまい死んでしまった。 実は神様の眷属だった白い子犬にサトーの魂を神様の所に連れて行かれた事により、現世からの輪廻から外れてしまう。 そこで神様からお詫びとして異世界転生を進められ、異世界で生きて行く事になる。 異世界で冒険者をする事になったサトーだか、冒険者登録する前に王族を助けた事により、本人の意図とは関係なく様々な事件に巻き込まれていく。 貴族のしがらみに加えて、異世界を股にかける犯罪組織にも顔を覚えられ、悪戦苦闘する日々。 ちょっとチート気味な仲間に囲まれながらも、チームの頭脳としてサトーは事件に立ち向かって行きます。 いつか訪れるだろうのんびりと冒険をする事が出来る日々を目指して! ……何時になったらのんびり冒険できるのかな? 小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しました(20220930)

Lv.

雪鳴月彦
ミステリー
 本州から離れた場所にひっそりと存在する孤島、那鵙島(なげきじま)。  そこに集められた、九人の男女。  その内の一人に依頼され、共に島へと向かった主人公、白沼 恭一とその妹白沼 マリネ。  誰もいない無人島へと招かれた彼らは、正体のわからない殺人鬼、〈CONVICT〉により次々と死体へと変えられていく。  脱出不能、通信不能の島の中で行われる、理解不能の皆殺しゲーム。  果たして、全員が断罪されてしまう前に犯人の正体を暴くことは可能なのか――? ‡登場人物‡ 白沼 恭一 (24) 便利屋 白沼 マリネ (19) 恭一の妹・浪人生 絵馬 詩織 (26) 高校教師・恭一の友人 笠島 健次 (51) 映画評論家 美九佐 行典 (64) 音楽指揮者 花面 京華 (25) 心理カウンセラー 貴道 勇気 (58) 元料理長・料理評論家 伊藤 和義 (36)  部品製造業者 月見坂 葵 (26) 海外ボランティア団体会員 木ノ江 明日香 (33)医師 川辺 久 (65) 世話人 ※この作品はフィクションです。登場する人物・団体・地名等は全て架空のものとなっています。

私モブ(幽霊)だよねっ!

弥生 桜香
恋愛
目が覚めたら綺麗な花壇にいた私 そこで出会ったイケメン男子 見覚えがあるような、ないようなイケメン男子遭遇し 違和感を覚える えっ!ちょっと、待ってっ! 嘘でしょっ! 透ける体 浮いている足元 …まさか…私…… 幽霊少女と出会った、イケメン男子 その出会いは偶然か? 謎多き、秘められた物語(ストーリー)が始まった

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...