上 下
7 / 94
喜与恵の視点

懐かしい思い出

しおりを挟む
宮部さんが、帰ったのを見届けてから、私は声をかけた。

「宝珠(ほうじゅ)、お疲れ様」

「ありがとう、喜与恵(きよえ)。疲れたよ」

チュッと頬にキスをされた。

「軽いです。最近の宝珠は!」

「だって、直接そうなった仲でしょ?リバーシブルだっけ?ほら、勉強したし」

「もう、晩御飯作ります。」

私は、宝珠を叩いてキッチンに来た。

あの快楽を知ってしまったのに、待てと言われ続ける日々に、戻ってしまった。

半年間の交わりは、宝珠の記憶を戻すためだった。

能力者に戻らなくて、このまま一緒にいようと思っていた。

なのに私は、私の記憶のない事が寂しくなってしまったのだ。

礼珠さんが、鍵になり、天野神(あまのかみ)が救いだしたお陰で、宝珠は人に戻り、全てを忘れた。

私も、人に戻された。

いったんは、神社で預かっていたのだけれど、私も宝珠も能力がない為に神社から出て行く事になった。

私は、途中で嘘をついた。

「喜与恵は、私の何なのだ?」

何度も聞かれた結果。

「恋人でした。」

と嘘をついたのだ。
 
そして、私と宝珠は、糸埜(いとの)さんや美佐埜さんや三日月家の皆さんのお陰で、宝珠の家で暮らし始める事が出来た。

「喜与恵ーー。お腹すいた!」

「はいはい」

上條陸さんと伊納円香(いのうまどか)さんの紹介で、私はお掃除の仕事も始めた。

働いてる間は、三日月家の皆さんが、様子を見に来てくれていた。

幸せだった。

普通の幸せを手に入れたのだ。

でもね、酔っ払うと宝珠が泣きながら真理亜さんの名前を呼ぶのだ。

「真理亜ーー。真理亜」

暫くして我に返って、
「喜与恵、ごめん。変な事言ったね」って笑うのだ。

真理亜さんと宝珠の契約も、遥か昔から続く記憶も、知っている私としては、もうこれ以上嘘をつきたくなかった。

真理亜さんと宝珠を引き離す事も出来ないのだ。

「喜与恵、しようか?」

初めての交わりは、宝珠がニコニコと子供のように笑って言ったのだった。

宝珠とそのような関係に、なれるのはわかっていた。

でも、やっぱり違うって言われるのではないかと思った。

「どうすれば、いいのか知りません。」

「それね!満月湊(まんげつみなと)から聞いたんだよ。男同士は、そこを使うんだって。」

余計な事を言いやがって、満月の家は昔から子宝に恵まれにくいと聞いている。

満月湊は、ゲイだった。

満月百合は、レズだった。

多分、血筋を絶やさない為に三日月からまた養子をもらうのであろう。

そんな事よりも、宝珠にそれを言った事が問題なのだ。

「宝珠、明日にしましょう」

50歳にもなって、そのような場所を使うとは思っていなかったのだ。

「大丈夫、優しくするから」

能力者一族の見た目は、若いけれど体力は、年相応だ。

「怖いのです。宝珠」

ビジョンでは、私が宝珠にしている立場だったのに、現実は逆だ。

「リバーシブルって言ってね。どっちもやるのがいいって、湊が教えてくれたんだよ。」

もう一つ余計な事を教えた満月湊に怒りを覚えた。

「もう少しだけ、時間が欲しいです。」

「だったら、イチャイチャしよう」

一緒に住んで、三ヶ月目の出来事に私は酷く困惑していた。

「宝珠、その触(さわ)ってはみたいです。」

「じゃあ、今日は触(さわ)りあいっこしようか?」

「はい。私から先に…」

「わかった」

宝珠のにずっと触(ふ)れたかった。

こんな事は、二度と出来ないと思っていた。

私は、宝珠のに触(ふ)れる。

涙が込み上げてくる。

「喜与恵、泣かないで」

宝珠は、私の頬の涙を拭う。

40年間、ただ、宝珠を愛していた。

そんな、愛する人のそれに触(ふ)れられる事がこんなにも嬉しい事だと知らなかった。

「涙がとまらないね。喜与恵」

「すみません。」

「いいよ。拭ってあげるから」

宝珠が、私が触(ふ)れていて膨らんでくる事が嬉しい。

愛しい。

「ずっと、宝珠だけを見てきたのです。ずっと、こうする事を夢に見てきたのです。」

「嬉しいよ、喜与恵」

宝珠は、私に優しく笑いかける。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...