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シークレット作品①
【欠けたピースは戻らない】⑤
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昌也は、俊之の顔を見つめていた。
「長生きしよーな。親より」
そう言った、俊之の言葉に笑ってしまった。
「そうだな!」
二人共、両親が、53歳で他界した。
「60歳までは、生きような」
「うん」
長生きしたいか?と問われればわからないというだろう…。
長く生きれば、何が変わるのだろうか?
許せないが、広がっていくだけじゃないのか?
二人は、心の中でそう思い合っていた。
「幸せって何だろね。トッシー」
「わからないよ、昌也」
「でも、今。トッシーといるのは幸せだよ」
「それでいいよ。それだけで…」
そう言って、またキスをする二人
「酒飲も」
「うん」
昌也は、ビールを取りに行く。
戻ってくると、俊之は疲れから眠っていた。
その寝顔を見つめていた。
.
.
.
.
.
「昌也、お母さんときなさい」
「いや、行きたくない」
「行きたくない言ってもくるの」
「お父さんと三人でおろう」
「無理なの!もう、私達は離婚するの」
「無理ってなんで?」
10歳の昌也の心は、深く傷ついた。
昌也にとっては、優しい父親だった。
「あの人はね。お母さんを大事にしなかったの。物みたいに扱ってたの。大人になったら、昌也にもわかるから」
大人になって昌也が思った事は、我慢しとけよだった。
大人になったって、昌也には母親の気持ちが理解できなかった。
18歳になった昌也は、その苛立ちを母親にぶつけた。
【お前は、何がしたいわけ?俺には、一人でする事も許さなかったくせに、自分は男に抱かれてるんか?】
【お父さんは、物みたいやったけど。浩二さんは違うのよ。優しくて女として見てもらってるもの】
【女、女って、お前はいつお母さんの時があった】
【家の事してたし、立派に育ったじゃない、まーくん】
【ふざけるな!俺は、二人が好きやった!なのに、何もかも勝手に決めて。自分勝手に振る舞って。お前が、女として生きたかったなら俺を何で産んだ】
【それは、愛し合ってたからよ】
【愛し合ってた?いつ、愛し合ってた?愛し合ってたなら、今だって傍にいるはずや!】
心が張り裂けそうで、家を飛び出した。
それから、昌也は一度も母親に会わなかった。
昌也が、25歳の冬に警察から連絡がやってきて母親が心中した事を聞かされた。
【糞みたいやな】
そう強く思ったのを覚えている。
母親は、最後まで昌也よりも男をとった事に絶望した。
欠けたピースが、広がっていく。
その欠けを埋める方法が、見つからなかった。
そんな日々の中で、昌也は俊之に出会った。
欠けたもの同士で、繋がった心
.
.
.
.
.
「トッシーに出会ってなかったら、今でも性に嫌悪しかなかったよ。」
昌也は、俊之の頬を撫でる。
母親に、言われてから機能不全に陥っていた自分を助けてくれたのが俊之だった。
お互い男が好きだった わけではなかった。
たまたま、引き合ったに過ぎなかった。
同じ痛みと苦しみを抱えていたから、引かれ合った。
俊之は、昌也と違って親戚付き合いがある。
だから、辛さは昌也より倍だと思ってる。
母親の一年に一回の命日には、必ず叔母さんの元に行かなければならない俊之
その度に、どれだけ父親が悪い人間だったのかを聞くのだと言う。
それで、また俊之の心がすり減っているのを知っていた。
「トッシーは、優しすぎるよ」
昌也は、ビールを飲んだ。
叔母さんに、悪いからという理由だけで俊之は母親の命日も回忌も通っている。
「もう、傷つけられたくないよな」
幼い自分達をこれ以上傷つけて欲しくないと昌也は思っていた。
あの地獄みたいな日々を時々覗くだけならいいけれど…。
ガッツリと思い出させられるのだけは、勘弁して欲しかった。
母親がよく読んでいた不倫漫画に不倫は正義のような書き方が描(えが)かれていたのを見てゾッとしたのを昌也は思い出した。
「長生きしよーな。親より」
そう言った、俊之の言葉に笑ってしまった。
「そうだな!」
二人共、両親が、53歳で他界した。
「60歳までは、生きような」
「うん」
長生きしたいか?と問われればわからないというだろう…。
長く生きれば、何が変わるのだろうか?
許せないが、広がっていくだけじゃないのか?
二人は、心の中でそう思い合っていた。
「幸せって何だろね。トッシー」
「わからないよ、昌也」
「でも、今。トッシーといるのは幸せだよ」
「それでいいよ。それだけで…」
そう言って、またキスをする二人
「酒飲も」
「うん」
昌也は、ビールを取りに行く。
戻ってくると、俊之は疲れから眠っていた。
その寝顔を見つめていた。
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「昌也、お母さんときなさい」
「いや、行きたくない」
「行きたくない言ってもくるの」
「お父さんと三人でおろう」
「無理なの!もう、私達は離婚するの」
「無理ってなんで?」
10歳の昌也の心は、深く傷ついた。
昌也にとっては、優しい父親だった。
「あの人はね。お母さんを大事にしなかったの。物みたいに扱ってたの。大人になったら、昌也にもわかるから」
大人になって昌也が思った事は、我慢しとけよだった。
大人になったって、昌也には母親の気持ちが理解できなかった。
18歳になった昌也は、その苛立ちを母親にぶつけた。
【お前は、何がしたいわけ?俺には、一人でする事も許さなかったくせに、自分は男に抱かれてるんか?】
【お父さんは、物みたいやったけど。浩二さんは違うのよ。優しくて女として見てもらってるもの】
【女、女って、お前はいつお母さんの時があった】
【家の事してたし、立派に育ったじゃない、まーくん】
【ふざけるな!俺は、二人が好きやった!なのに、何もかも勝手に決めて。自分勝手に振る舞って。お前が、女として生きたかったなら俺を何で産んだ】
【それは、愛し合ってたからよ】
【愛し合ってた?いつ、愛し合ってた?愛し合ってたなら、今だって傍にいるはずや!】
心が張り裂けそうで、家を飛び出した。
それから、昌也は一度も母親に会わなかった。
昌也が、25歳の冬に警察から連絡がやってきて母親が心中した事を聞かされた。
【糞みたいやな】
そう強く思ったのを覚えている。
母親は、最後まで昌也よりも男をとった事に絶望した。
欠けたピースが、広がっていく。
その欠けを埋める方法が、見つからなかった。
そんな日々の中で、昌也は俊之に出会った。
欠けたもの同士で、繋がった心
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「トッシーに出会ってなかったら、今でも性に嫌悪しかなかったよ。」
昌也は、俊之の頬を撫でる。
母親に、言われてから機能不全に陥っていた自分を助けてくれたのが俊之だった。
お互い男が好きだった わけではなかった。
たまたま、引き合ったに過ぎなかった。
同じ痛みと苦しみを抱えていたから、引かれ合った。
俊之は、昌也と違って親戚付き合いがある。
だから、辛さは昌也より倍だと思ってる。
母親の一年に一回の命日には、必ず叔母さんの元に行かなければならない俊之
その度に、どれだけ父親が悪い人間だったのかを聞くのだと言う。
それで、また俊之の心がすり減っているのを知っていた。
「トッシーは、優しすぎるよ」
昌也は、ビールを飲んだ。
叔母さんに、悪いからという理由だけで俊之は母親の命日も回忌も通っている。
「もう、傷つけられたくないよな」
幼い自分達をこれ以上傷つけて欲しくないと昌也は思っていた。
あの地獄みたいな日々を時々覗くだけならいいけれど…。
ガッツリと思い出させられるのだけは、勘弁して欲しかった。
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