11 / 20
もう一回
しおりを挟む
「光君が、探偵やってて、なっこさんをずっと探してもらっていたんです。」
「私を、何故?」
「あの日、兄が何故ここに来たか知りたいんじゃないかと思いまして…。」
「関西弁じゃないんですね?」
「ああ、僕はずっとこっちです。引っ越しの日に、兄は父に連れていかれ、僕は、ここに残りました。」
「そうですか」
同じ声をしているのに、別の人間である川北さんを見ていると涙が止まらなかった。
「なっこって名前しかわからんかったから、探すん苦労しました。」
冬木さんは、頭を掻いていた。
彼が、光の従兄弟なのは見ているだけでわかる。
纏う雰囲気が、全く同じなのだ。
それは、あの日の光を見ているようで…。
「手紙を兄が、書いていたんです。なっこへと書かれた手紙がボストンバッグから5通出てきたんです。」
川北さんは、斜めがけにしたバックからその手紙を取り出した。
「これが、最後の手紙です。これだけ、日付が書かれていました。失礼ながら、中身を読ませていただきました。」
そう言って、血のついた封筒の束を渡される。
「読めません」
「なっこ」
そう言った私の手を静樹が、握りしめた。
「静樹さんのお知り合いだったんですね」
川北くんは、静樹に向かって微笑んだ。
「そうなのよ。春樹君」
静樹の顔が、少し強ばった。
「お二人が、読んだなら…。それでいいじゃないですか」
バサバサと、封筒が落ちた。
「なっこさん」『なっこ』
ハッ、封筒を拾った冬木さんの姿が一瞬、光(ひかる)に重なった。
胸が、ズキンと痛む。
「冬木さんが、読んでくれませんか?」
涙がボロボロと流れてきた。
「かまいませんよ」
「それなら、これがいるね」
斜めがけのバックから、川北君はレジャーシートを取り出してひいた。
「私は、少しはずすわ」
静樹の声に、「僕もそうします」
と川北さんもいなくなった。
「ほんなら、読みますよ」
「はい」
そう言って、真っ赤に染まった封筒から手紙を取り出した。
【なっこへ】
その関西訛りの独特なイントネーションが、彼の存在をハッキリと感じさせる。
「もう一回名前を呼んで」
「ええですよ。」
【なっこへ】
「もう一回」
「はい」
【なっこへ】
「もう一回」
【なっこへ】
もう一回と出そうになった口を押さえる。
「何回でも呼びましょか?まだ、先にだって名前はあるんやで。わざわざ、口を押さえんでも。20年分、代わりに呼んだるよ」
その笑顔が、彼に重なっていく。
「ぁぁあああ。死んだんですね。もう、NEWSが言ったんですか?それとも、彼の死体とご対面してきたのですか?ぁーぁぁぁああ」
私の言葉に、冬木さんは背中を擦ってくれる。
「まだ、何もわかってへんから。心配せんで、大丈夫やから」
そう言って、背中を撫で続ける。
数10分後、私は、ようやく落ち着いた
そんな私に冬木さんは笑いかける。
「落ち着きましたか?」
「はい、ごめんなさい」
「かまへん、かまへん」
「あの、読んでくれますか?」
「ほんなら、読みますね。」
そう言って、冬木さんは、手紙をゆっくり開いた。
「私を、何故?」
「あの日、兄が何故ここに来たか知りたいんじゃないかと思いまして…。」
「関西弁じゃないんですね?」
「ああ、僕はずっとこっちです。引っ越しの日に、兄は父に連れていかれ、僕は、ここに残りました。」
「そうですか」
同じ声をしているのに、別の人間である川北さんを見ていると涙が止まらなかった。
「なっこって名前しかわからんかったから、探すん苦労しました。」
冬木さんは、頭を掻いていた。
彼が、光の従兄弟なのは見ているだけでわかる。
纏う雰囲気が、全く同じなのだ。
それは、あの日の光を見ているようで…。
「手紙を兄が、書いていたんです。なっこへと書かれた手紙がボストンバッグから5通出てきたんです。」
川北さんは、斜めがけにしたバックからその手紙を取り出した。
「これが、最後の手紙です。これだけ、日付が書かれていました。失礼ながら、中身を読ませていただきました。」
そう言って、血のついた封筒の束を渡される。
「読めません」
「なっこ」
そう言った私の手を静樹が、握りしめた。
「静樹さんのお知り合いだったんですね」
川北くんは、静樹に向かって微笑んだ。
「そうなのよ。春樹君」
静樹の顔が、少し強ばった。
「お二人が、読んだなら…。それでいいじゃないですか」
バサバサと、封筒が落ちた。
「なっこさん」『なっこ』
ハッ、封筒を拾った冬木さんの姿が一瞬、光(ひかる)に重なった。
胸が、ズキンと痛む。
「冬木さんが、読んでくれませんか?」
涙がボロボロと流れてきた。
「かまいませんよ」
「それなら、これがいるね」
斜めがけのバックから、川北君はレジャーシートを取り出してひいた。
「私は、少しはずすわ」
静樹の声に、「僕もそうします」
と川北さんもいなくなった。
「ほんなら、読みますよ」
「はい」
そう言って、真っ赤に染まった封筒から手紙を取り出した。
【なっこへ】
その関西訛りの独特なイントネーションが、彼の存在をハッキリと感じさせる。
「もう一回名前を呼んで」
「ええですよ。」
【なっこへ】
「もう一回」
「はい」
【なっこへ】
「もう一回」
【なっこへ】
もう一回と出そうになった口を押さえる。
「何回でも呼びましょか?まだ、先にだって名前はあるんやで。わざわざ、口を押さえんでも。20年分、代わりに呼んだるよ」
その笑顔が、彼に重なっていく。
「ぁぁあああ。死んだんですね。もう、NEWSが言ったんですか?それとも、彼の死体とご対面してきたのですか?ぁーぁぁぁああ」
私の言葉に、冬木さんは背中を擦ってくれる。
「まだ、何もわかってへんから。心配せんで、大丈夫やから」
そう言って、背中を撫で続ける。
数10分後、私は、ようやく落ち着いた
そんな私に冬木さんは笑いかける。
「落ち着きましたか?」
「はい、ごめんなさい」
「かまへん、かまへん」
「あの、読んでくれますか?」
「ほんなら、読みますね。」
そう言って、冬木さんは、手紙をゆっくり開いた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたと別れて、この子を生みました
キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。
クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。
自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。
この子は私一人で生んだ私一人の子だと。
ジュリアとクリスの過去に何があったのか。
子は鎹となり得るのか。
完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。
⚠️ご注意⚠️
作者は元サヤハピエン主義です。
え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。
誤字脱字、最初に謝っておきます。
申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ
小説家になろうさんにも時差投稿します。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる