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手繰り寄せる記憶
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「じゃあ、これにするわ。」
「プレゼントですか?」
「はい」
いつの間にか、静樹がネックレスを買っていた。
「自分で決めたかった?」
「ううん」
私の笑顔に、静樹はホッとしていた。
カードで、お金を払っていた。
お店を出て、買い物をしてケーキを買って、お花を買って家に帰ってきた。
「あら、痛かったわね」
ちょっとだけのヒールなのに、私は靴擦れをおこしていた。
静樹は、玄関で消毒をして絆創膏を貼ってくれた。
「ありがとう」
「さあ、ご飯にしましょ」
お花は、玄関に置いたままにした。
手際よく静樹は、ステーキを焼いてスープやサラダを作る。
「完成」
フランスパンを切って持ってきた。
「いただきます」
「なっこ、Happy Birthday」
グラスをカチンと合わせた。
私は、その声にあの日を思い出していた。
「なっこ、Happy Birthday」
「ありがとう」
「二十歳の誕生日祝えてよかったわ。ホンマ、よかったわ」
そう言って、彼は私の頭を撫でる。
「ありがとう」
「来年も一緒に祝おうな」
何故か、二十歳の誕生日を祝ってくれたのだ。
この日、私は秋にふられた。
誕生日は、あの日から不幸を寄せ付ける。
「呪われてるかな?」
ワインを飲む前に呟いた私の言葉を静樹は、聞き逃さなかった。
「呪われてるわけないわよ」
「頭の中の時系列が、グチャグチャで…。」
「二十歳の誕生日を祝いにきてくれたのよね?」
「うん」
「それから、なっこは誕生日の日に彼にふられた。」
「うん」
「次に、彼が現れたのは成人式だった」
「うん」
「別に、何もおかしいことないじゃない」
「でも、何か忘れていて」
「20年前の記憶なんて、そんなもんよ。私だって、春樹が言った言葉とかどこでかわからなくなってきてるもの」
「初老かな?」
「そうね。最近、老眼がきてる気がするし」
静樹は、そう言って笑った。
日々の生活を重ねていく事は、君を忘れていく事
思い出にかえる。そんな綺麗な表現じゃない。
上書きされて忘れていくのだ。
気づけば、その何もかもを脳が捨て去ってしまうのだ。
食事を終えると、静樹は小さなホールケーキに数字の蝋燭を立てて火をつけた。
苺のショートケーキが、私は一番大好きだった。
41歳…。
「ふぅー」
「おめでとう、なっこ」
「ありがとう」
「なっこには、いつまでも笑っていて欲しいから」
静樹は、そう言ってさっきの誕生日プレゼントを渡した。
「開けていい?」
「どうぞ」
箱を開けると、笑顔の口元のようなネックレスがあった。
「可愛い」
「よかった。つけてあげるわ」
「うん」
私は、静樹にネックレスをつけてもらった。
「洗面所で、見てきたら?とっても似合うわ。ケーキ切って、珈琲いれるから」
「わかった」
私は、静樹に言われて洗面所にネックレスを見に行く。
キラキラと輝いている。
ドクンと急に胸が痛む。
彼の話は、時系列が狂っている気がしていた。
最後は、本当にあの日だったのか?
「もしもし」
『なっこ、会わへん?』
一つに重なりあって数日後に、彼から連絡が来た。
「ネックレスつけたら、似合うで。この鎖骨の感じがとくに」
静樹につけてもらったネックレスを触りながら、鎖骨に右人差し指を這わす。
「なっこ、可愛いで。」
左手の人差し指で、顎から頬を撫でる。
その人差し指で、唇を触れる。
鏡に映る私は、あの日彼に触れられていた私だった。
「なっこ、見てみ。物欲しそうな顔してんで」
私は、唇を人差し指で撫でながら自分の口の中に突っ込んだ。
「なっこ、そんなに俺が欲しいんか?」
私は、首を縦にふる。
「めっちゃ、嬉しい。愛してるで」
ズキン胸が苦しくなって、指を口から抜いた。
「プレゼントですか?」
「はい」
いつの間にか、静樹がネックレスを買っていた。
「自分で決めたかった?」
「ううん」
私の笑顔に、静樹はホッとしていた。
カードで、お金を払っていた。
お店を出て、買い物をしてケーキを買って、お花を買って家に帰ってきた。
「あら、痛かったわね」
ちょっとだけのヒールなのに、私は靴擦れをおこしていた。
静樹は、玄関で消毒をして絆創膏を貼ってくれた。
「ありがとう」
「さあ、ご飯にしましょ」
お花は、玄関に置いたままにした。
手際よく静樹は、ステーキを焼いてスープやサラダを作る。
「完成」
フランスパンを切って持ってきた。
「いただきます」
「なっこ、Happy Birthday」
グラスをカチンと合わせた。
私は、その声にあの日を思い出していた。
「なっこ、Happy Birthday」
「ありがとう」
「二十歳の誕生日祝えてよかったわ。ホンマ、よかったわ」
そう言って、彼は私の頭を撫でる。
「ありがとう」
「来年も一緒に祝おうな」
何故か、二十歳の誕生日を祝ってくれたのだ。
この日、私は秋にふられた。
誕生日は、あの日から不幸を寄せ付ける。
「呪われてるかな?」
ワインを飲む前に呟いた私の言葉を静樹は、聞き逃さなかった。
「呪われてるわけないわよ」
「頭の中の時系列が、グチャグチャで…。」
「二十歳の誕生日を祝いにきてくれたのよね?」
「うん」
「それから、なっこは誕生日の日に彼にふられた。」
「うん」
「次に、彼が現れたのは成人式だった」
「うん」
「別に、何もおかしいことないじゃない」
「でも、何か忘れていて」
「20年前の記憶なんて、そんなもんよ。私だって、春樹が言った言葉とかどこでかわからなくなってきてるもの」
「初老かな?」
「そうね。最近、老眼がきてる気がするし」
静樹は、そう言って笑った。
日々の生活を重ねていく事は、君を忘れていく事
思い出にかえる。そんな綺麗な表現じゃない。
上書きされて忘れていくのだ。
気づけば、その何もかもを脳が捨て去ってしまうのだ。
食事を終えると、静樹は小さなホールケーキに数字の蝋燭を立てて火をつけた。
苺のショートケーキが、私は一番大好きだった。
41歳…。
「ふぅー」
「おめでとう、なっこ」
「ありがとう」
「なっこには、いつまでも笑っていて欲しいから」
静樹は、そう言ってさっきの誕生日プレゼントを渡した。
「開けていい?」
「どうぞ」
箱を開けると、笑顔の口元のようなネックレスがあった。
「可愛い」
「よかった。つけてあげるわ」
「うん」
私は、静樹にネックレスをつけてもらった。
「洗面所で、見てきたら?とっても似合うわ。ケーキ切って、珈琲いれるから」
「わかった」
私は、静樹に言われて洗面所にネックレスを見に行く。
キラキラと輝いている。
ドクンと急に胸が痛む。
彼の話は、時系列が狂っている気がしていた。
最後は、本当にあの日だったのか?
「もしもし」
『なっこ、会わへん?』
一つに重なりあって数日後に、彼から連絡が来た。
「ネックレスつけたら、似合うで。この鎖骨の感じがとくに」
静樹につけてもらったネックレスを触りながら、鎖骨に右人差し指を這わす。
「なっこ、可愛いで。」
左手の人差し指で、顎から頬を撫でる。
その人差し指で、唇を触れる。
鏡に映る私は、あの日彼に触れられていた私だった。
「なっこ、見てみ。物欲しそうな顔してんで」
私は、唇を人差し指で撫でながら自分の口の中に突っ込んだ。
「なっこ、そんなに俺が欲しいんか?」
私は、首を縦にふる。
「めっちゃ、嬉しい。愛してるで」
ズキン胸が苦しくなって、指を口から抜いた。
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