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祈り……
残り、3秒
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「残り、3秒です。」
糸埜(いとの)さんの声がする。
三日月さんは、どこにいるの?
【宝珠が、振り返ってしまう】
【母上】
「残り、2秒です。」
カチカチ、カチカチ、カチカチ
時計の音が、大きく聞こえる。
0秒になれば、全てが終わる。
「残り、1秒です。」
【母上】
【見つけた!!!】
ドンッ、ドンッ、ドーーン
ビカンッ……
辺り一面を白い光が包み込んで、何も見えなくなった。
ゴロゴロドーーン、ゴロゴロドーーン、ゴロゴロドーーン
雷鳴が轟いた。
ザァー、ザァー、ザァー
雨が、さっきより強くなった。
何も、見えない時間が長い。
どうなったの?
三日月さんは、どうなったの?
カメラのフラッシュをたかれてるような、稲光が目の前にある。
何も見えない。
ドーーン、ドーーン、ドーーン
大きな太鼓を叩いてるような雷が鳴り響く。
ポタポタ、ポタポタ、ポタポタ
雨足が急に弱くなった。
突然、黄金色の光が、辺りを包みだした。
パァーーーッと、神社が光に照らされ始めた。
何が、起きてるの?
ゆっくりと目を開けると、そこら中に虹のアーチが出来ている。
「三日月さん」
私は、三日月さんに触(ふ)れる。
三日月さんは、人間に戻っている。
真っ黒だった両手が、元に戻っていた。
「宝珠、宝珠」
皆、三日月さんに駆け寄る。
目を覚ます気配はない。
「宝珠、宝珠」
「三日月さん」
皆、名前を呼んだ。
それでも、目覚めない。
案内人さんが、やってきた。
「喜与恵、そなた」
「人間になりました。」
案内人さんは、そう言って泣いていた。
「宝珠、宝珠」
案内人さんは、三日月さんを抱えて泣いた。
涙が、三日月さんの頬を濡らした。
「三日月さん、三日月さん」
「宝珠、宝珠」
間に合わなかったのだろうか?
ギリギリだったから…。
どうか、どうか、目を覚まして
「う、うーん」
「三日月さん」
「宝珠」
三日月さんは、案内人さんの顔を見つめた。
「誰ですか?」
「えっ?」
私達も、見つめる。
「あの、誰ですか?」
「何の冗談ですか?」
「あの、皆さん。誰ですか?」
三日月さんの目が、怯えている。
案内人さんは、三日月さんから離れた。
ポロポロ泣いている。
「喜与恵」
糸埜さんが、抱き締めている。
「すみません。帰ります」
三日月さんは、身体を起こした。
「待って、家はわかるのですか?」
糸埜さんは、三日月さんを止めた。
「いえ、何も覚えてなくて」
「なら、思い出すまで、ここにいてください」
糸埜さんは、そう言った。
「すみません。じゃあ、少しだけ」
三日月さんは、ニッコリと微笑んだ。
その笑顔は、紛れもなく三日月さんだった。
「生きてるだけで、よかったです。」
案内人さんは、泣いていた。
そうだ、生きているだけよかったのだ。
他に何を望むのだ。
「宮部さん」
「はい」
「宝珠は、いつ記憶がもどるかわからないです。」
「はい」
「宮部さんの事を思い出したら、連絡しますね」
私は、案内人さんにそう言われて連絡先の名刺を渡した。
「喜与恵、三日月さんを部屋に連れて行ってあげて」
「わかりました。失礼します。」
案内人さんは、頭を下げて行ってしまった。
「宮部さん、送りますよ」
「糸埜さん」
「長い夜でしたね。」
「はい」
「あのー。」
「はい」
「記事、楽しみにしてますよ。」
「はい」
私は、涙を拭った。
「不思議ですね。服がもう乾いてるなんて」
「確かに、あれはあちらの雨だったのでしょうかね」
糸埜さんは、笑った。
「宮部さん、三日月の取材に来てくださいね」
「いつでも、いいのですか?」
「はい、勿論です。」
「では、記事が出来ましたら行きますね」
「はい」
「どれくらいで、書くのですか?」
「下書きをうつすだけなので、3日ほどですね。」
「早いですね。楽しみです。」
「あの、師匠さんがはいっていた彼は?」
「さあー。どうなりましたかね」
糸埜さんは、後部座席を開けてくれた。
「何か、わかりましたら三日月家(みかづきけ)に行きます」
「お待ちしております」
「はい」
糸埜さんは、私の家まで送ってくれた。
糸埜(いとの)さんの声がする。
三日月さんは、どこにいるの?
【宝珠が、振り返ってしまう】
【母上】
「残り、2秒です。」
カチカチ、カチカチ、カチカチ
時計の音が、大きく聞こえる。
0秒になれば、全てが終わる。
「残り、1秒です。」
【母上】
【見つけた!!!】
ドンッ、ドンッ、ドーーン
ビカンッ……
辺り一面を白い光が包み込んで、何も見えなくなった。
ゴロゴロドーーン、ゴロゴロドーーン、ゴロゴロドーーン
雷鳴が轟いた。
ザァー、ザァー、ザァー
雨が、さっきより強くなった。
何も、見えない時間が長い。
どうなったの?
三日月さんは、どうなったの?
カメラのフラッシュをたかれてるような、稲光が目の前にある。
何も見えない。
ドーーン、ドーーン、ドーーン
大きな太鼓を叩いてるような雷が鳴り響く。
ポタポタ、ポタポタ、ポタポタ
雨足が急に弱くなった。
突然、黄金色の光が、辺りを包みだした。
パァーーーッと、神社が光に照らされ始めた。
何が、起きてるの?
ゆっくりと目を開けると、そこら中に虹のアーチが出来ている。
「三日月さん」
私は、三日月さんに触(ふ)れる。
三日月さんは、人間に戻っている。
真っ黒だった両手が、元に戻っていた。
「宝珠、宝珠」
皆、三日月さんに駆け寄る。
目を覚ます気配はない。
「宝珠、宝珠」
「三日月さん」
皆、名前を呼んだ。
それでも、目覚めない。
案内人さんが、やってきた。
「喜与恵、そなた」
「人間になりました。」
案内人さんは、そう言って泣いていた。
「宝珠、宝珠」
案内人さんは、三日月さんを抱えて泣いた。
涙が、三日月さんの頬を濡らした。
「三日月さん、三日月さん」
「宝珠、宝珠」
間に合わなかったのだろうか?
ギリギリだったから…。
どうか、どうか、目を覚まして
「う、うーん」
「三日月さん」
「宝珠」
三日月さんは、案内人さんの顔を見つめた。
「誰ですか?」
「えっ?」
私達も、見つめる。
「あの、誰ですか?」
「何の冗談ですか?」
「あの、皆さん。誰ですか?」
三日月さんの目が、怯えている。
案内人さんは、三日月さんから離れた。
ポロポロ泣いている。
「喜与恵」
糸埜さんが、抱き締めている。
「すみません。帰ります」
三日月さんは、身体を起こした。
「待って、家はわかるのですか?」
糸埜さんは、三日月さんを止めた。
「いえ、何も覚えてなくて」
「なら、思い出すまで、ここにいてください」
糸埜さんは、そう言った。
「すみません。じゃあ、少しだけ」
三日月さんは、ニッコリと微笑んだ。
その笑顔は、紛れもなく三日月さんだった。
「生きてるだけで、よかったです。」
案内人さんは、泣いていた。
そうだ、生きているだけよかったのだ。
他に何を望むのだ。
「宮部さん」
「はい」
「宝珠は、いつ記憶がもどるかわからないです。」
「はい」
「宮部さんの事を思い出したら、連絡しますね」
私は、案内人さんにそう言われて連絡先の名刺を渡した。
「喜与恵、三日月さんを部屋に連れて行ってあげて」
「わかりました。失礼します。」
案内人さんは、頭を下げて行ってしまった。
「宮部さん、送りますよ」
「糸埜さん」
「長い夜でしたね。」
「はい」
「あのー。」
「はい」
「記事、楽しみにしてますよ。」
「はい」
私は、涙を拭った。
「不思議ですね。服がもう乾いてるなんて」
「確かに、あれはあちらの雨だったのでしょうかね」
糸埜さんは、笑った。
「宮部さん、三日月の取材に来てくださいね」
「いつでも、いいのですか?」
「はい、勿論です。」
「では、記事が出来ましたら行きますね」
「はい」
「どれくらいで、書くのですか?」
「下書きをうつすだけなので、3日ほどですね。」
「早いですね。楽しみです。」
「あの、師匠さんがはいっていた彼は?」
「さあー。どうなりましたかね」
糸埜さんは、後部座席を開けてくれた。
「何か、わかりましたら三日月家(みかづきけ)に行きます」
「お待ちしております」
「はい」
糸埜さんは、私の家まで送ってくれた。
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