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封印、抹消の戦い

私よ、さようなら

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私は、抜け落ちて、みんなを見つめていた。

私よ、さようなら…。

二度と会えない私。

私は、数珠のネックレスを握りしめていた。

もう二度と会えない。

涙で前が滲んでいく。

しばらくして、糸埜(いとの)が抜け落ちた。

「宝珠」

「これを…」

私が、渡す光の綱を糸埜は握る。

「私は、諦めていませんよ。宝珠」

「ありがとう、糸埜」

賀珠(かじゅ)が、抜けた。

「宝珠、最後まで諦めるなよ」

「あぁ、ありがとう」

私は、光の綱を渡す。

ゆっくりと五条が抜けてきた。

「宝珠、絶対助けてやるから」

「ありがとう」

私は、五条にも光の綱を渡す。

ゆっくりと祐大さんが抜けてきた。

「宝珠、負けるなよ。わかったな」

「ありがとう」

私は、祐大さんにも光の綱を渡す。

広大さんが、抜けてきた。

「宝珠、最後まで生きとくんやで!」

「ありがとう」

私は、広大さんに光の綱を渡す。

【時間だ!宝珠よ、導きなさい】

『はい』

私は、皆を連れて歩く。

「最後の一滴、さぁー、さぁー、さぁー、さぁー、さぁー」

三日月のもの達が離れた。

美佐埜(みさの)さんが、後ろでエネルギーを送っている。

「宝珠さん、さよなら」

「さよなら、雪埜(ゆきの)」

泣きながら、手を振る雪埜や三日月のもの達の横を通りすぎた。

「時刻は、5時43分までです。鈴の音の合図と共に扉を閉じなさい。」

『はい』

「では、皆さん。行ってらっしゃい。宝珠、さようなら」

美佐埜さんが、泣いている。

『さよなら』

皆、器にはいる。

『では、行きましょう』

私は、皆の器の前に立つ。

「では、開きます。」

リンリン、リンリンと鈴の音が響き渡る。

『あー、あー、あー』

と掛け声が響く。


「さぁー、さぁー、さぁー。来ました」


ドンッととてつもない音とバチンと稲光りが光、辺り一面を光が包み込んだ。

『きたか、待っておったぞ』

億珠さんが、言った。

白い光の結界が、出来ている。

何千もの幽体が、全力を出してる。

私は、皆より前に前に進んでいく。

【黒き能力と白き能力と赤き能力に身を包み、そなたはゆっくり歩き出す】

あの方の声が、響く。

『宝珠、頼んだよ』

皆の人形が、皆の姿に変わった。

『はー、はー、黒白赤青、混ざれば稲妻走りてこの血を闇夜と混ざれば、三日月のー。』

作っていた祝詞をみんなが読み始めると人形が、私についていく。

向こうで、笛の音を巫女と喜与恵が鳴らし出した。

ピューー、ピューーー

『満月と交わり一つの光とてーー、奈良橋とーー千川とー三津木が交じり合う、血の定め。』

私は、ゆっくりとゆっくりと歩き出す。

『黒き痣と黒き爪、繋げるあの世とこの世なりー、助けられぬ鍵となり、数多の幽体引き連れて』

黒、白、赤、青の神社の祝詞をバラバラにインスピレーションだけで繋げている。

『白き結界を作りて、赤の剣を差し出して、青き稲妻走りとて』


見つけた。

『きたか、宝珠』

『師匠』

『宝珠、助けてくれ』

『三日月先生』

成木さんの肉体の中に、五木結斗と二条さんが入っていた。

『どうするべきか、考えていた。』

『何をですか?』

『お前の事だよ!どうするべきか考えていた』

『どういう意味ですか?』

人形が、周りを囲んだ。

私は、赤き剣を掴んだ。

『殺すか、殺さぬか考えていた。』

師匠は、どす黒い剣を手に取った。

『早く、喰らえよ』

『まだ、楽しもうじゃないか、宝珠』

あの方の言葉が、頭をよぎる。

【いいですか、万珠に会ったら…。万珠の言葉にけっして耳を貸してはなりませぬよ。万珠は、そなたを嫌っております。そなたが、嫌がる事しか言いませぬ】

聞いては、いけない。

絶対に、聞いてはいけない。

『まずは、そうだなー。お前の母親の話から始めようか、宝珠』

『早く、幽体を喰らえ。化け物』

『化け物は、お前だろ?宝珠』

【目を合わせては、ならぬ】

あの方の声がする。

ここから先は、あの方の声が私を導く。

私は、目を伏せた。

『0.01秒遅かったな』

ニタニタと笑ってる。

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