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封印、抹消の戦い

神社

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三日月さんは、神社に連れてきてくれた。

助手席を開けてくれた。

もう、三日月さんとあんな風には出来ない。

三日月さんは、後部座席のものを取っていた。

神社にあがってすぐに、祭壇が組まれていた。

「さぁーさぁーさぁー」と掛け声をかけている。

「今は、魂を守る布に、みんなの血の入ったペンキを落としてるんだよ。」

三日月さんは、私を見た。

「そうなのね」

三日月家(みかづきけの)方は、慌ただしく動いている。

「肉体を守るのが、巫女と案内人とあの方なんだよ。10分前に、私達は魂だけになりあちらの中にはいるんだ。」

そう言って、三日月さんは祭壇の前を手を差した。

「さぁー、さぁー、さぁー」

「さぁー、さぁー、さぁー」

そう言いながら、祭壇を組んでいってる。

「ついたての壁の中に、私達ははいるんだ。向こうで、私だけがついたてから出る。鈴の音が合図でついたてを閉じたら、みんなは肉体に戻る仕組みだよ。私は、封印される。」

「はい」

三日月さんの言葉に、涙が込み上げてくる。

「宝珠さん」

「雪埜(ゆきの)、元気だったか?」

「はい。もう二度と会えないのを父に聞きました。」

「あぁ、そうだね。」

「宝珠さん、いつか必ず迎えに行きますから…。待っていて下さいね。」

「期待して待ってるよ」

「はい」

「これ、雪埜にプレゼントだ。」

「開けてもよろしいですか?」

「はい、どうぞ」

雪埜君は、プレゼントを開けてる。

「凄く、可愛いですね。大切にさせていただきます。」

「喜んでくれてよかったよ」

「はい、嬉しいです。では、また後で」

「後でね」

私は、雪埜君を見つめていた。

「15歳ですか?」

「あぁ、15歳だよ」

「凄く、しっかりしてますね。」

「三日月のものだからかな?」

「そんな気がする。」

「苦手だった?」

「全然。何か子供感がなかったです。」

「確かに、そうかもしれないね」

三日月さんは、笑っている。

「お帰り、宝珠。」

「糸埜(いとの)、ただいま。これを糸埜にプレゼントだよ」

「どうして?」

「宮部さんに、選んでもらったんだ。後、キーケースに車と家の鍵が入ってる。それと、スマホに必要な事は入力して最後に渡すよ」

「宝珠…。まだ、私は諦めていないから」

「わかってる」

三日月さんは、糸埜さんにネクタイを渡した。

三日月さんは、皆さんに渡している。

それを見ているだけで、涙が出てきた。

本当に、いなくなる。

三日月さんは、いなくなる。

話してるのを見てるだけで、精一杯で、何も耳に入ってこなかった。

「希海」

「はい!」

「私達の肉体の場所で、待てるみたいだよ」

「いいのかな」

「構わないみたいだよ。そこで、待っていたらいいよ。」

「宝珠は、宝珠は帰ってくるの…。」

三日月さんは、首を横に振った。

「ごめんなさい」

無理なのをわかっていて聞いた。

「謝らないでいいよ。私も出来ることなら戻ってきたかった。」

「宝珠」

残り、一時間をきっていた。

みんなは、さらに慌ただしくなる。

「糸埜、戻ってきたら、宮部さんを頼みます。」

「わかってます。」

「それから、残りの事も頼みます。」

「はい、もちろんです。」

「家の本棚に赤いノートがある。そこに、暗証番号やパスワードなど全て書いてある。よろしくお願いします。」

「任せて下さい」

糸埜さんは、ボロボロ泣いている。

「消えるときは、笑ってくれ。糸埜」

「もちろんだよ。もちろん、そうするから。宝珠も笑っていて」

「わかってる」

三日月の人とのお別れに時間をかけたくなかったのは、心が弱くなってしまうからだとわかった。

三日月さんは、涙を止められていなくて…。

これから、戦いに行く。

皆さん、もうボロボロに泣いていて…。

触(ふ)れられないもどかしさで、いっぱいで…。

私は、あんなに三日月さんに触(ふ)れられたのに…。

皆さんは、触(ふ)れられなくて…

見てるだけで、胸が締め付けられて、苦しい。

もう、どうにもならない事が苦しい。

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