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一日をあなたに
放った言葉
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「私は、言ったんだ。おじさんの言い方は、悪いかも知れませんが、私も迷惑してるんです。さっきから、赤ちゃんの泣き声に…。そう言うと、その場にいる全員が私に冷たい視線を向けた。ナイフみたいな眼差しに、耐えられなくて次の駅で降りた。」
「宝珠(ほうじゅ)、それって…」
「苛立ちから、能力を全開にしたんだよ。触(ふ)れずに気持ちは読めるから…。みんなの悪意は、私とおじさんに向けられていた。だったら降りろよ。赤ちゃんは泣いて当たり前だし。耐えれない状態で電車乗るなよ。お前も子供だったくせに。あー。世の中は、赤ちゃんが正義なんだ。赤ちゃんが、正解なんだ。赤ちゃんがいなければ、ダメなんだ。私は、そう感じながら電車を降りた。」
宮部さんは、私の涙を拭ってくれる。
「そしたらね、降りてたまたまぶつかった人がね。うぜー。赤ちゃん泣いてる。一本電車遅らそって心で話してて。何だかスッキリしたんだ。その人にとって、赤ちゃんが正義じゃないってわかった事だけが少し嬉しかった。」
「宝珠…。話してくれて嬉しい。」
「希海(のぞみ)の気分が晴れたなら嬉しいよ。」
「そのせいで、沢山の人が苦しんでるのよね。意地になってでも欲しいのよね」
「世の中は、赤ちゃんが正義だよ。少なくとも、私はあの電車で感じた。生きづらいと思ったよ。私みたいに子を授けられないものにとってわ。希海のような人にとっても…」
宮部さんは、ポロポロと流れる私の涙を拭ってくれる。
「親戚の子供がね。私が、友達の結婚式に出るために買った。5万円のドレスにね。ケチャップをつけて油性ペンで落書きしたの。ピンク色のスカートに…。可愛くする為に花を書いてあげたって」
宮部さんは、思い出して泣いてる。
「私ね、叩いてしまったの。希海ちゃん可愛くなったよって笑ったその子の頬を…。お母さんには、子供のした事に目くじら立てて何してんのって怒られて、親戚には、希海ちゃん結婚できないからってうちの子にあたらないでよって言われたの。その時に、この生き物は何をやっても許されるんだって思ったの。例え、私をこの子が今刺しても許されるんだって思ったの」
私は、宮部さんの涙を拭う。
「ずっと、大嫌いだった。自分だって子供の頃があったのは、わかってる。私は、産まれてはいけない人間だったんじゃないかって悩んだ事もある。本当に、嫌いなの。誰にもわかってもらえないの。自分の子供を産んだら、産んだらって、欲しくないって言ってるのに何でそうなるの?妬んでるとか言われるけど、思った事なかった。ただ、普通ってラベルをつけられてからは色んな事に妙にイライラしたの。欲しくもない子供にイライラしたの。それが、欲しいからだって自分に言い聞かせたの。でも、やっぱりどう考えても違うの。どう考えても、私が子供を抱いてる姿なんか想像できない。出来るのは、子供を床に叩きつけてる映像だけ。私は、おかしいのよね。おかしいのでしょ?宝珠」
私は、首を横に振った。
「猫が好き、犬が好き、鳥が苦手、猿が苦手、ピーマンが苦手、トマトが好き。それと同じだよ。希海は、産まれてきた時から子供が嫌いなんだ。それを無理に否定しなくていいじゃないか。関わらなくたっていいじゃないか。」
宮部さんは、私の涙を拭ってくれる。
「占い師の仕事をしている時に、子連れのお客さんがきた。見ている間も、ずっと子供が泣いていた。私は、集中できずにいた。三日月先生、子供が苦手ですか?そういう人は、すぐに見抜く。苦笑いを浮かべた私に抱けば好きになると言って抱かせてきた。希海と同じだよ。服にミルクをはかれた。気持ち悪かった。でも、その人は悪びれもせずに赤ちゃんはミルクを吐くものだからと笑ったよ」
宮部さんは、私の頬の涙をずっと拭ってくれている。
「宝珠(ほうじゅ)、それって…」
「苛立ちから、能力を全開にしたんだよ。触(ふ)れずに気持ちは読めるから…。みんなの悪意は、私とおじさんに向けられていた。だったら降りろよ。赤ちゃんは泣いて当たり前だし。耐えれない状態で電車乗るなよ。お前も子供だったくせに。あー。世の中は、赤ちゃんが正義なんだ。赤ちゃんが、正解なんだ。赤ちゃんがいなければ、ダメなんだ。私は、そう感じながら電車を降りた。」
宮部さんは、私の涙を拭ってくれる。
「そしたらね、降りてたまたまぶつかった人がね。うぜー。赤ちゃん泣いてる。一本電車遅らそって心で話してて。何だかスッキリしたんだ。その人にとって、赤ちゃんが正義じゃないってわかった事だけが少し嬉しかった。」
「宝珠…。話してくれて嬉しい。」
「希海(のぞみ)の気分が晴れたなら嬉しいよ。」
「そのせいで、沢山の人が苦しんでるのよね。意地になってでも欲しいのよね」
「世の中は、赤ちゃんが正義だよ。少なくとも、私はあの電車で感じた。生きづらいと思ったよ。私みたいに子を授けられないものにとってわ。希海のような人にとっても…」
宮部さんは、ポロポロと流れる私の涙を拭ってくれる。
「親戚の子供がね。私が、友達の結婚式に出るために買った。5万円のドレスにね。ケチャップをつけて油性ペンで落書きしたの。ピンク色のスカートに…。可愛くする為に花を書いてあげたって」
宮部さんは、思い出して泣いてる。
「私ね、叩いてしまったの。希海ちゃん可愛くなったよって笑ったその子の頬を…。お母さんには、子供のした事に目くじら立てて何してんのって怒られて、親戚には、希海ちゃん結婚できないからってうちの子にあたらないでよって言われたの。その時に、この生き物は何をやっても許されるんだって思ったの。例え、私をこの子が今刺しても許されるんだって思ったの」
私は、宮部さんの涙を拭う。
「ずっと、大嫌いだった。自分だって子供の頃があったのは、わかってる。私は、産まれてはいけない人間だったんじゃないかって悩んだ事もある。本当に、嫌いなの。誰にもわかってもらえないの。自分の子供を産んだら、産んだらって、欲しくないって言ってるのに何でそうなるの?妬んでるとか言われるけど、思った事なかった。ただ、普通ってラベルをつけられてからは色んな事に妙にイライラしたの。欲しくもない子供にイライラしたの。それが、欲しいからだって自分に言い聞かせたの。でも、やっぱりどう考えても違うの。どう考えても、私が子供を抱いてる姿なんか想像できない。出来るのは、子供を床に叩きつけてる映像だけ。私は、おかしいのよね。おかしいのでしょ?宝珠」
私は、首を横に振った。
「猫が好き、犬が好き、鳥が苦手、猿が苦手、ピーマンが苦手、トマトが好き。それと同じだよ。希海は、産まれてきた時から子供が嫌いなんだ。それを無理に否定しなくていいじゃないか。関わらなくたっていいじゃないか。」
宮部さんは、私の涙を拭ってくれる。
「占い師の仕事をしている時に、子連れのお客さんがきた。見ている間も、ずっと子供が泣いていた。私は、集中できずにいた。三日月先生、子供が苦手ですか?そういう人は、すぐに見抜く。苦笑いを浮かべた私に抱けば好きになると言って抱かせてきた。希海と同じだよ。服にミルクをはかれた。気持ち悪かった。でも、その人は悪びれもせずに赤ちゃんはミルクを吐くものだからと笑ったよ」
宮部さんは、私の頬の涙をずっと拭ってくれている。
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