163 / 202
一日をあなたに
どうしても、好きになれない
しおりを挟む
宮部さんは、涙でいっぱいの目を私に向ける。
「まだ、実家に居た時に、両親に結婚して早く子供を産みなさいと言われた。私は、今と全く同じ事を言ったの。そしたら、両親は自分の子供を産めばなおると言った。私には、直るように思えなかった」
宮部さんは、ハンカチを取り出して涙を拭ってる。
「仲良かった友達からも子供は可愛いと言われた。私は、同じ話しをした。そしたら、子孫繁栄に、興味がない人なんかいないわっているとしたら、思考回路が壊れてるんじゃない?って、バグが起きてるだけよって!本当に好きな人の子供なら産みたくなるわって言われた。」
宮部さんの痛みを感じて、私は涙がとめられない。
「だから、おかしいんだと思った。皆と同じように子供を欲しいと思わなくちゃいけないんだって!だから、必死に取り繕ったの。好きなフリをして。親戚の子供を抱いたり遊んだり…。でも、可愛くないのよ。涎を垂らされて汚(きたな)いって思った。お菓子を食べたベタベタな手で触(さわ)られて吐き気がした。頑張っても、頑張っても直らなくて…。だけど、おかしいんだって。だから、普通にならなきゃって皆と一緒にならなきゃって…。」
私は、宮部さんの頬に右手を当てて涙を拭う。
「そうしていったら、自分が何の為に生きていくのかわからなくなったんじゃないか?希海(のぞみ)」
宮部さんは、目を開いて私を見つめている。
「普通と書いたラベルをつけたら、自分が欲しいものが結婚や子供のような気がした。でも、少しずつずれていくようになる。歳を重ねていくと、自分が欲しいものが浮かび上がっては消えていく。無理に、そこにいる必要はないはずなのに…。世間という枠が、自分を押さえつける。」
宮部さんは、私の右手を握りしめる。
深呼吸をひとつしてから話す。
「私は、自信がないの。誰かの親になれる自信が全くない。それは、自分の子供であっても同じ。子孫繁栄が備わってるっていいますけど、私にはないです。昔から、子供を欲しいとも思わない。親戚を見ていても、この人達と違う道を行くのだと幼い頃からずっと思っていた。そこに、私の思い描(えが)いてる幸せなど何一つないのがわかってたから…。」
私は、宮部さんの涙を拭ってあげる。
「それのどこがいけないのだ?結婚したいと嘆く人がいる。子供が欲しいと嘆く人がいる。一方で、結婚したくないと嘆く人がいる。子供は欲しくないと嘆く人がいる。どちらも、あっていいじゃないか?何故、他人が自分と違う価値観でいると、自分が生きてきた場所が素晴らしいと押し付けるのか…。私には、全く理解できないんだ。」
宮部さんは、私の頬の涙を拭ってくれる。
「希海。私は、希海が苦しんでるのがわかる。痛みが流れてくる。可愛くないと思って嫌な顔をする自分を責めなくていい。どうして、皆が子供を好きだと決めつけるのだ。打ち明けてくれたのだから、私もお返しするよ。」
私は、希海が頬に当ててくれてるその手を左手で握りしめる。
「私も嫌いだった。毎日、酒を飲まないと寝れなかった日々の中で電車で赤ちゃんが大声で泣いた。向こうも大変なのは、わかる。わかるけど、頭に響くのだ。だから、さっきのは私の本音だよ。寝不足や二日酔いの時の子供の声は頭に響いてガンガンと割れるように痛い。苦痛で、大嫌いで、本当に子供が嫌いだった。」
宮部さんは、ボロボロ泣いている。
「ある日、電車に乗ってるおじさんが怒鳴りつけた。うっせー。黙らせろって、そしたら周りの人間は、こう言った赤ちゃんは泣くのが仕事なの。あなたも昔はそうだったでしょ?いちいち、苛々するなよ。まるで、そのおじさんが一番の悪になった。赤ちゃんは正義で、おじさんは悪。世の中と似てると思った。子供がいる人が、正解で、いない人は不正解。そんな気持ちになった。だから、私は、つい言ってしまったんだ。」
宮部さんは、私の右手をギュッと握った。
「まだ、実家に居た時に、両親に結婚して早く子供を産みなさいと言われた。私は、今と全く同じ事を言ったの。そしたら、両親は自分の子供を産めばなおると言った。私には、直るように思えなかった」
宮部さんは、ハンカチを取り出して涙を拭ってる。
「仲良かった友達からも子供は可愛いと言われた。私は、同じ話しをした。そしたら、子孫繁栄に、興味がない人なんかいないわっているとしたら、思考回路が壊れてるんじゃない?って、バグが起きてるだけよって!本当に好きな人の子供なら産みたくなるわって言われた。」
宮部さんの痛みを感じて、私は涙がとめられない。
「だから、おかしいんだと思った。皆と同じように子供を欲しいと思わなくちゃいけないんだって!だから、必死に取り繕ったの。好きなフリをして。親戚の子供を抱いたり遊んだり…。でも、可愛くないのよ。涎を垂らされて汚(きたな)いって思った。お菓子を食べたベタベタな手で触(さわ)られて吐き気がした。頑張っても、頑張っても直らなくて…。だけど、おかしいんだって。だから、普通にならなきゃって皆と一緒にならなきゃって…。」
私は、宮部さんの頬に右手を当てて涙を拭う。
「そうしていったら、自分が何の為に生きていくのかわからなくなったんじゃないか?希海(のぞみ)」
宮部さんは、目を開いて私を見つめている。
「普通と書いたラベルをつけたら、自分が欲しいものが結婚や子供のような気がした。でも、少しずつずれていくようになる。歳を重ねていくと、自分が欲しいものが浮かび上がっては消えていく。無理に、そこにいる必要はないはずなのに…。世間という枠が、自分を押さえつける。」
宮部さんは、私の右手を握りしめる。
深呼吸をひとつしてから話す。
「私は、自信がないの。誰かの親になれる自信が全くない。それは、自分の子供であっても同じ。子孫繁栄が備わってるっていいますけど、私にはないです。昔から、子供を欲しいとも思わない。親戚を見ていても、この人達と違う道を行くのだと幼い頃からずっと思っていた。そこに、私の思い描(えが)いてる幸せなど何一つないのがわかってたから…。」
私は、宮部さんの涙を拭ってあげる。
「それのどこがいけないのだ?結婚したいと嘆く人がいる。子供が欲しいと嘆く人がいる。一方で、結婚したくないと嘆く人がいる。子供は欲しくないと嘆く人がいる。どちらも、あっていいじゃないか?何故、他人が自分と違う価値観でいると、自分が生きてきた場所が素晴らしいと押し付けるのか…。私には、全く理解できないんだ。」
宮部さんは、私の頬の涙を拭ってくれる。
「希海。私は、希海が苦しんでるのがわかる。痛みが流れてくる。可愛くないと思って嫌な顔をする自分を責めなくていい。どうして、皆が子供を好きだと決めつけるのだ。打ち明けてくれたのだから、私もお返しするよ。」
私は、希海が頬に当ててくれてるその手を左手で握りしめる。
「私も嫌いだった。毎日、酒を飲まないと寝れなかった日々の中で電車で赤ちゃんが大声で泣いた。向こうも大変なのは、わかる。わかるけど、頭に響くのだ。だから、さっきのは私の本音だよ。寝不足や二日酔いの時の子供の声は頭に響いてガンガンと割れるように痛い。苦痛で、大嫌いで、本当に子供が嫌いだった。」
宮部さんは、ボロボロ泣いている。
「ある日、電車に乗ってるおじさんが怒鳴りつけた。うっせー。黙らせろって、そしたら周りの人間は、こう言った赤ちゃんは泣くのが仕事なの。あなたも昔はそうだったでしょ?いちいち、苛々するなよ。まるで、そのおじさんが一番の悪になった。赤ちゃんは正義で、おじさんは悪。世の中と似てると思った。子供がいる人が、正解で、いない人は不正解。そんな気持ちになった。だから、私は、つい言ってしまったんだ。」
宮部さんは、私の右手をギュッと握った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる