不思議な桜が繋いだ縁【仮】

一日をあなたに

デートの朝

「うーん。」

よく寝た気がして目が覚めたけれど、まだ４時半だった。

喜与恵(きよえ)の姿は、なかった。

私は、起き上がった。

「宝珠(ほうじゅ)、早いですね」

「おはよう」

「歯を磨いて、顔を洗って下さいね。」

「うん」

私は、喜与恵に言われてそうした。

「おはようさん。用意したるから」

「広大(ごうだい)さん、早起きですね」

「一時間しか寝てへんよ」

「えっ！いいのですか？」

「別にええよ。一日ぐらい寝んくても生きてけるわ。ほな、行くで」

顔を洗って、歯を磨いた私を連れていく。

「初めての私服なら、ちょっとラフなんがええやん。」

私は、薄手のセーターを着せられた。

「白は、さすがに汚れたらアカンから薄い青やな。頭とようおうてるわ。ズボンは、このベージュのんはいてみ」

そう言われて、はく。

「めっちゃ、ええやん。ほんなら、行ってらっしゃい」

「まだ、朝の５時だ。」

「時間なんか、あっという間やで。ほら、皆が寝とる間に行かんかいな」

広大さんに、そう言われて出ていく。

「宝珠、これ、財布とスマホと車の鍵です。行ってらっしゃい」

「待って、鞄ぐらい持たなな」

そう言って、ボディバッグを渡された。

「それじゃあ、行ってきます」

「夜中の12時には、帰っておいでな」

「わかりました。」

「気をつけてね」

「ありがとう」

二人に手を振って、神社を後にした。

私は、宮部さんの家の下についた。

プルルル

『はい』

「朝早くに来てしまった。」

『待ってましたよ。上がってきてください。見えますか？』

宮部さんが、手を振ってくれてる。

「見えます」

『四階です』

「わかりました。」

私は、宮部さんの部屋に行った。

「お邪魔します。」

「どうぞ」

女の子の部屋にしては、殺風景だった。

「もっと、可愛いのがよかったですか？」

「いや、緊張してる。」

「そこに、座って下さい。朝ご飯作りますから」

ソファーに腰かける。

宮部さんの朝食が食べれるとは思わなかったから、嬉しい。

宮部さんは、サッサッと手際よく朝食を作って持ってきてくれた。

「和食ですが、嫌じゃなかったですか？」

「凄く嬉しいです。」

「よかったです。」

「いただきます」

「どうぞ、召し上がれ。いただきます」

宮部さんに言われて、お味噌汁を飲んだ。

「美味しいです。」

「よかったです。」

沢山、話をしたい。

「宮部さんは、何が好きですか？食べ物」

「あの、三日月さん。」

「はい」

「今日だけは、下の名前で呼びませんか？」

照れくさそうに俯いていた。

「はい、そうしましょう。敬語もなしにしましょうか？」

「はい。」

私は、ゆっくり深呼吸する。

「希海(のぞみ)」

「はい、宝珠」

「何だか、照れるね」

「そうね」

二人で、朝ご飯を食べ終わった。

「ごちそうさまでした。美味しかったよ」

「よかった」

宮部さんは、お皿を下げに行った。

「宝珠、何をしたい？」

「そうだね。デートがしたい。」

「朝日とか見に行けるんじゃない？まだ、５時半過ぎですし。」

「行こうか」

私と宮部さんは、家から出る。

私は、助手席をあける。

宮部さんは、車に乗り込んだ。

「海でも目指そうか」

「うん」

私は、車を発進させた。

海につく前に、朝日は昇ってしまった。

「綺麗だけど、残念」

宮部さんは、笑った。

「確かにね」

私は、色んな話がしたかった。

宮部さんが、何を考えて生きてきたかをちゃんと知りたかった。

「朝が、早すぎるよね」

「そうだね。」

「コーヒーでも、飲みに行かない？」

「いいよ。どこでも行く」

私は、宮部さんに指定されたカフェに車を停めた。

二人で、中に入る。

「いらっしゃいませ」

席に案内されて、コーヒーを頼んだ。

「希海の生きてきた人生を知りたい」

「一日で？」

「一日だけど、知りたい」

「例えば、どんな事から話すの？」

「小さな頃は、どんな子だった？」

「そうね、おてんばだったわ。男の子と木に登っちゃうようなタイプ」

そう言って、宮部さんは笑った。