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宝珠の考え
自分勝手
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「殺されなくても、明日には死ぬ」
「ふざけてんのか?お前は、いつもいつも、ふざけてんのか?」
「ふざけてなどいない」
「糸埜(いとの)が、それで喜ぶと本気で思ってるのか?」
「ナイフを押し当てるのは、やめてくれるか?」
そういうと、ポケットにナイフをしまってくれた。
「お前は、自分しか好きじゃないんだな」
「ふざけるな。」
「皆の事を思うなら、お前の記憶を消させようなどと考えないだろうが。」
「帰ってきたばっかりの肉体にやめてもらえるか。」
「だったらちゃんと言えよ。お前は、何故そんな事しか考えてないんだよ」
「糸埜の涙を見て思ったんだよ。もう、泣かしたくない。もう、私のせいで誰かに辛い思いをして欲しくない。目覚めて、ハッキリそう気づいた。ならば、記憶を消せば…。私なんかいなかった事に」
ガンッ…壁に強く押し当てられた。
「お前は、どこまで自分勝手なんだ。」
「何だよ」
「お前の為に苦しむことも悲しむ事も辛い思いをする事も、嬉しい痛みだと何故思えないんだよ」
「五条」
涙をボタボタと流してる。
「宝珠が、生きていた証がみんなに残る。それだけで、宝珠は生きていたんだ。これから先も、生きていくんだ。肉体がなくなり、魂が抹消されようとも…。生きてくんだよ。みんなの中で、宝珠はこれから先も生きていくんだ。」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
ヘナヘナと膝の力が抜け落ちる。
「宝珠、みんな。宝珠が生きていた事を忘れたくないんだ。わかってくれよ、宝珠」
私は、溢(あふ)れ出る涙を止められなかった。
「全部聞いてた。ごめん」
「いえ」
「後は、私に任せて」
「わかった。頼みます。」
五条が、消えていく。
「宝珠、みんなから消してもらいたいの?」
「美佐埜(みさの)さん」
「死ぬより辛い事は、皆の記憶からなくなる事って知ってるでしょ?」
美佐埜さんは、私の隣に座った。
「それは、違います。」
「知ってるよ。思い出せなくなる事でしょ?思い出したくても、思い出せなくなる事。それが、死ぬより辛い事でしょ?」
「美佐埜さん」
「宝珠は、そうなりたいんでしょ?みんなが、思い出せない存在。それが、いいって思ってるんでしょ?」
「はい」
「それは、宝珠の我儘よ。だって、皆、宝珠を忘れたくないもん。少なくとも、私は、覚えておきたいよ。関わりないニュースの人が亡くなったって、殺されたって、みんな忘れる。でも、宝珠は違う。この、頭の中に出会った幽体がみんな入ってる。例え、みんなが忘れても宝珠が生きてる限り覚えてくれる。」
美佐埜さんは、私を引き寄せた。
「私の夫を覚えてくれてるでしょ?それと同じ。私も宝珠を覚えときたい。糸ちゃんも宝珠を覚えときたいはずよ。それだけ、宝珠は私達家族にとって大切な大切な人間よ。自分勝手に暴走したら駄目。皆、ちゃんと宝珠とお別れしようとしてる。それでも、宝珠に生きて欲しいって願ってる。向こうで閉じ込められても死ぬわけじゃないでしょ?」
「それは…。」
「だったら、覚えておかせてよ。私達にも、宝珠が生きてた事。いつか、絶対。迎えに行ける方法見つけて行くから。ねっ?約束してよ」
美佐埜さんは、私に小指を差し出した。
「わかりました。」
私は、約束をした。
「どうして?って思ってる?ただ、辛くて悲しいだけなのにって思ってる?」
「はい」
「確かに、別れるのは辛いよね。でも、生きるのと死ぬのは、セットでしょ?人は、産まれ堕ちた瞬間からわかってる。この世界がいつか終わる事を魂としての自分に気づいてからゴールは死だってわかってる。なのに、人を傷つけて失って、同じような繰り返しをして生きてくのよ。」
「亮さんと最後に喧嘩別れになった事、後悔してますか?」
「してないって言ったら嘘になるかな。でも、あの時はアレしか言葉を選べなかったから」
美佐埜さんは、そう言ってネックレスを取り出す。
婚約指輪が、3つ光ってる。
「ふざけてんのか?お前は、いつもいつも、ふざけてんのか?」
「ふざけてなどいない」
「糸埜(いとの)が、それで喜ぶと本気で思ってるのか?」
「ナイフを押し当てるのは、やめてくれるか?」
そういうと、ポケットにナイフをしまってくれた。
「お前は、自分しか好きじゃないんだな」
「ふざけるな。」
「皆の事を思うなら、お前の記憶を消させようなどと考えないだろうが。」
「帰ってきたばっかりの肉体にやめてもらえるか。」
「だったらちゃんと言えよ。お前は、何故そんな事しか考えてないんだよ」
「糸埜の涙を見て思ったんだよ。もう、泣かしたくない。もう、私のせいで誰かに辛い思いをして欲しくない。目覚めて、ハッキリそう気づいた。ならば、記憶を消せば…。私なんかいなかった事に」
ガンッ…壁に強く押し当てられた。
「お前は、どこまで自分勝手なんだ。」
「何だよ」
「お前の為に苦しむことも悲しむ事も辛い思いをする事も、嬉しい痛みだと何故思えないんだよ」
「五条」
涙をボタボタと流してる。
「宝珠が、生きていた証がみんなに残る。それだけで、宝珠は生きていたんだ。これから先も、生きていくんだ。肉体がなくなり、魂が抹消されようとも…。生きてくんだよ。みんなの中で、宝珠はこれから先も生きていくんだ。」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
ヘナヘナと膝の力が抜け落ちる。
「宝珠、みんな。宝珠が生きていた事を忘れたくないんだ。わかってくれよ、宝珠」
私は、溢(あふ)れ出る涙を止められなかった。
「全部聞いてた。ごめん」
「いえ」
「後は、私に任せて」
「わかった。頼みます。」
五条が、消えていく。
「宝珠、みんなから消してもらいたいの?」
「美佐埜(みさの)さん」
「死ぬより辛い事は、皆の記憶からなくなる事って知ってるでしょ?」
美佐埜さんは、私の隣に座った。
「それは、違います。」
「知ってるよ。思い出せなくなる事でしょ?思い出したくても、思い出せなくなる事。それが、死ぬより辛い事でしょ?」
「美佐埜さん」
「宝珠は、そうなりたいんでしょ?みんなが、思い出せない存在。それが、いいって思ってるんでしょ?」
「はい」
「それは、宝珠の我儘よ。だって、皆、宝珠を忘れたくないもん。少なくとも、私は、覚えておきたいよ。関わりないニュースの人が亡くなったって、殺されたって、みんな忘れる。でも、宝珠は違う。この、頭の中に出会った幽体がみんな入ってる。例え、みんなが忘れても宝珠が生きてる限り覚えてくれる。」
美佐埜さんは、私を引き寄せた。
「私の夫を覚えてくれてるでしょ?それと同じ。私も宝珠を覚えときたい。糸ちゃんも宝珠を覚えときたいはずよ。それだけ、宝珠は私達家族にとって大切な大切な人間よ。自分勝手に暴走したら駄目。皆、ちゃんと宝珠とお別れしようとしてる。それでも、宝珠に生きて欲しいって願ってる。向こうで閉じ込められても死ぬわけじゃないでしょ?」
「それは…。」
「だったら、覚えておかせてよ。私達にも、宝珠が生きてた事。いつか、絶対。迎えに行ける方法見つけて行くから。ねっ?約束してよ」
美佐埜さんは、私に小指を差し出した。
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「はい」
「確かに、別れるのは辛いよね。でも、生きるのと死ぬのは、セットでしょ?人は、産まれ堕ちた瞬間からわかってる。この世界がいつか終わる事を魂としての自分に気づいてからゴールは死だってわかってる。なのに、人を傷つけて失って、同じような繰り返しをして生きてくのよ。」
「亮さんと最後に喧嘩別れになった事、後悔してますか?」
「してないって言ったら嘘になるかな。でも、あの時はアレしか言葉を選べなかったから」
美佐埜さんは、そう言ってネックレスを取り出す。
婚約指輪が、3つ光ってる。
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