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前野友作
何のために
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糸埜(いとの)さんの言葉に、私は何の為に人で産まれたのかわからない気持ちになった。
「ここを貫く言葉(やいば)を出してしまったなら、すぐに謝るのです。後から、後悔したって意味はないのです。」
「その子のお母さんは何て言ったのですか?」
「疲れていたから、つい言ってしまったと言いました。しかし、そのついが取り返しのつかない事になるのを私は話しました。」
糸埜は、宮部さん、村井さん、伊納(いのう)さんを見つめた後に私を見た。
「昔、私が弟のように可愛がっている男がこう言いました。人はみんな、刃物を隠し持っているのだと…。私が、それは何かと尋ねたら彼はこう言いました。それは、言葉だよって。その刃物を誰もが持っている。だから、悪戯に口に出してはいけないのです。だから、私達には考える力があるのではないでしょうか?想像する力があるのではないのでしょうか?」
「だから、私達は言葉を選ばないといけないのですね。」
「そうですね。一字一句大切に話すべきです。言いすぎたなら、謝るべきです。」
糸埜は、荻野さんにキーホルダーを返す。
「村井さん、許さない事は、許すことよりも険しい道ですよ。自らも血を流しながら歩かねばなりません。それでもいいのならば、憎しみの炎を燃やし生きればいい。でも、その痛みを我慢する事が出来ないのならば許すしかありません。噛み砕いて、噛み砕いて、胃袋に流し込んで生きて行くしかないのです。」
「あの、お二人にいつか、会いに行きます。許せる日がきたら…。」
「お待ちしています。」
「宮部さんの雑誌。楽しみにしています。」
「はい、是非読んでくださいね。」
「それでは、帰りましょう」
「はい」
「失礼しました。」
荻野(おぎの)さんと前野さんは、残った。
私達三人は、伊納さんと村井さんの家から出た。
「宝珠(ほうじゅ)、宮部さんを送りましたら話をしましょうか?」
『巫女と話をするから、ついてきてくれるか?』
「予定って、巫女さんだったのですね!!」
『はい、そうですよ。』
「何だ、そうでしたか…」
「ホッとしましたか?」
「いえ、いえ、そんな事はありません。」
宮部さんは、うつむいた。
「わかりやすいですね。宮部さん」
「えっ?そんな事ないです」
宮部さんは、ブンブンと頭を振っていた。
糸埜は、後部座席をあける。
宮部さんは、後部座席に乗り込んだ。
糸埜は、車を出して宮部さんを送り届ける。
「あの、三日月さん」
『はい』
「肉体が戻ったら、約束」
『わかっていますよ。』
「後、早乙女さんのお手紙は仕上げておきます。」
『よろしくお願いします。』
「はい、では、必ず連絡してくださいね。」
『肉体が戻れば、必ず連絡しますよ。』
「はい。あの」
宮部さんは、潤んだ瞳で私を見つめる。
「私は、三日月家(みかづきけ)の方々にもっと関わって生きていきたいです。」
私は、糸埜の顔を見た。
「宮部さん、関わって下さい。私達とたくさん。そして、記事にしてくれたら嬉しいです」
『そうですね。こんな仕事がある事を世の中に広めて下さい。沢山の人に教えてあげて下さい。』
宮部さんは、私と糸埜の顔を交互に見つめる。
「私は、三日月家の皆さんを好きになりそうです。皆さんのお話が大好きです。皆さんの幽体のお話をたくさんの人に届けたいです。」
「是非、お願いします。」
『私からも、お願いします。』
宮部さんは、ニコッと微笑んだ。
「では、帰ります。お疲れさまでした。」
「宮部さん」
「はい?」
「念珠(ねんじゅ)さんと美条(びじょう)さんが、帰宅次第。宮部さんの器を直すので、神社に来ていただけますか?」
「はい、わかりました。」
『ゆっくりおやすみ下さい』
「甘いの食べますね。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
私と糸埜は、宮部さんが帰宅するのを見届けてから神社に戻ってきた。
「ここを貫く言葉(やいば)を出してしまったなら、すぐに謝るのです。後から、後悔したって意味はないのです。」
「その子のお母さんは何て言ったのですか?」
「疲れていたから、つい言ってしまったと言いました。しかし、そのついが取り返しのつかない事になるのを私は話しました。」
糸埜は、宮部さん、村井さん、伊納(いのう)さんを見つめた後に私を見た。
「昔、私が弟のように可愛がっている男がこう言いました。人はみんな、刃物を隠し持っているのだと…。私が、それは何かと尋ねたら彼はこう言いました。それは、言葉だよって。その刃物を誰もが持っている。だから、悪戯に口に出してはいけないのです。だから、私達には考える力があるのではないでしょうか?想像する力があるのではないのでしょうか?」
「だから、私達は言葉を選ばないといけないのですね。」
「そうですね。一字一句大切に話すべきです。言いすぎたなら、謝るべきです。」
糸埜は、荻野さんにキーホルダーを返す。
「村井さん、許さない事は、許すことよりも険しい道ですよ。自らも血を流しながら歩かねばなりません。それでもいいのならば、憎しみの炎を燃やし生きればいい。でも、その痛みを我慢する事が出来ないのならば許すしかありません。噛み砕いて、噛み砕いて、胃袋に流し込んで生きて行くしかないのです。」
「あの、お二人にいつか、会いに行きます。許せる日がきたら…。」
「お待ちしています。」
「宮部さんの雑誌。楽しみにしています。」
「はい、是非読んでくださいね。」
「それでは、帰りましょう」
「はい」
「失礼しました。」
荻野(おぎの)さんと前野さんは、残った。
私達三人は、伊納さんと村井さんの家から出た。
「宝珠(ほうじゅ)、宮部さんを送りましたら話をしましょうか?」
『巫女と話をするから、ついてきてくれるか?』
「予定って、巫女さんだったのですね!!」
『はい、そうですよ。』
「何だ、そうでしたか…」
「ホッとしましたか?」
「いえ、いえ、そんな事はありません。」
宮部さんは、うつむいた。
「わかりやすいですね。宮部さん」
「えっ?そんな事ないです」
宮部さんは、ブンブンと頭を振っていた。
糸埜は、後部座席をあける。
宮部さんは、後部座席に乗り込んだ。
糸埜は、車を出して宮部さんを送り届ける。
「あの、三日月さん」
『はい』
「肉体が戻ったら、約束」
『わかっていますよ。』
「後、早乙女さんのお手紙は仕上げておきます。」
『よろしくお願いします。』
「はい、では、必ず連絡してくださいね。」
『肉体が戻れば、必ず連絡しますよ。』
「はい。あの」
宮部さんは、潤んだ瞳で私を見つめる。
「私は、三日月家(みかづきけ)の方々にもっと関わって生きていきたいです。」
私は、糸埜の顔を見た。
「宮部さん、関わって下さい。私達とたくさん。そして、記事にしてくれたら嬉しいです」
『そうですね。こんな仕事がある事を世の中に広めて下さい。沢山の人に教えてあげて下さい。』
宮部さんは、私と糸埜の顔を交互に見つめる。
「私は、三日月家の皆さんを好きになりそうです。皆さんのお話が大好きです。皆さんの幽体のお話をたくさんの人に届けたいです。」
「是非、お願いします。」
『私からも、お願いします。』
宮部さんは、ニコッと微笑んだ。
「では、帰ります。お疲れさまでした。」
「宮部さん」
「はい?」
「念珠(ねんじゅ)さんと美条(びじょう)さんが、帰宅次第。宮部さんの器を直すので、神社に来ていただけますか?」
「はい、わかりました。」
『ゆっくりおやすみ下さい』
「甘いの食べますね。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
私と糸埜は、宮部さんが帰宅するのを見届けてから神社に戻ってきた。
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