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早乙女加奈枝
願い事
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来ないわけには、いかなかったの。
たまたま、雑誌の特集にこの場所が載ってた。
それを見つけてから、ここに来たくて仕方なかったの。
「加奈枝、本当にここ?」
「そのはずなんだけど…。」
「行き止まりだよ」
「そうね。帰りましょうか」
ビューーと、風が吹いた。
「凄い、風だったな」
「本当に」
私と友作さんの前に、神社は現れた。
「何だ、あるじゃない」
「ほんとだな!見えてなかったのかもな」
私と友作さんは、鳥居をくぐった。
「こんにちは」
「こんにちは」
薄汚れた袴を来た人が、立っていた。
絵馬を見つけて、私は友作さんを引っ張った。
「先に、絵馬にお願いを書くのよ。この神社はね、すごく有名なんだよ。友作さんも書いて」
「ああ」
疑い深い友作さんは、少し戸惑っていた。
【放れたくない】
誰ととは、あえて書かなかった。
見られるのも、面倒だったから…
「ほら、書いて」
「ああ、待って」
友作さんは、サラサラと書いた。
結って文字が、見えた気がしたけど気にしなかった。
「掛けたら、行くよ。次」
「あぁ、待って」
友作さんは、絵馬を掛ける。
私は、賽銭を投げてお願いをする。
【宮瀬歩を放したくない】
絵馬には、書けなかった願い事
「友作さん、次やってるわよ」
「わかった。待って」
躊躇ってばかりの友作さんは、ゆっくりとお願いをしていた。
これが、私に対しての願いならばごめんね。
私には、もう友作さんの優しさがいらないの。
「で、どうするの?」
「ここを、三周回って終わり。ついてきて」
「わかった」
私と友作さんは、三周回った。
「あの、お守りを買っていきませんか?」
「お守り?!」
「恋愛関係なら、必ず叶いますよ。」
「本当ですか?是非、買います。」
あの記事に、お守りの事なんか載っていなかった。
お守りを見に行く。
「こちらです。」
「高いよ、加奈枝」
「ダメよ!こういうのは、最後までちゃんとしなきゃ」
「わかった。俺が、買うよ」
友作さんが、出してくれようとした手を止めた。
「こういうのは、ちゃんと自分で買うからご利益があるのよ」
嘘だった。
貴方の為の願いじゃないからなのよ。なんて言えなかった。
「そういうものなのか?」
友作さんは、笑いながら自分のお守りを買った。
「肌身離さず持っていて下さいね」
「はい」
私は、友作さんの手を繋いで神社から出た。
きちんとお別れを言おう。
明日には、ちゃんと言うから…。
そう決めて、どれだけ日が経ったのかな?
勇気をもらいたかった。
私は、宮瀬歩と共に人生を歩いていく。
そんな覚悟を決めたかった。
「加奈枝、お腹すかない?」
「すいたわ」
「何か、食べてかえろうか?」
「うん」
決心が鈍る。
友作さんの笑顔を見ると…。
「どうした?」
「目にゴミが入ったみたいで」
「車まで、我慢できる?」
「大丈夫よ。出来るわ」
私は、ハンカチで目頭を押さえる。
言えない。
覚悟を決めたのに、言えなくなる。
友作さんを好きだった時を思い出す。
歩が現れなかったら、今頃友作さんの妻にでもなっていたはずだった。
車に乗ったら、すぐに友作さんは私の目を気遣った。
「見せて」
「はい」
ただ、泣いているだけなのよ。
貴方を愛せない事が、悲しいだけなのよ。
私の目の中に、友作さんが映る事が悲しい。
「大丈夫みたいだよ。まだ、痛いなら目薬を買ってこようか?」
「大丈夫よ。そのうちおさまるわ」
おさまりなんてしない
この、罪悪感は消えなどしない。
この、痛みだってなくなりやしない。
「なら、いいけど…。じゃあ、何か買って家で食べようか?加奈枝の目、辛そうだから。」
「そうね!そうしてくれたら、助かるわ」
何が、助かるというの?
パラパラと時間が、進んでいく。
罪悪感だけが、ゆっくりと降り積もる。
言いたくても、言えないもどかしさだけを抱えていく。
前野友作が、酷い男だったらよかったと何度も思っては泣いていた。
たまたま、雑誌の特集にこの場所が載ってた。
それを見つけてから、ここに来たくて仕方なかったの。
「加奈枝、本当にここ?」
「そのはずなんだけど…。」
「行き止まりだよ」
「そうね。帰りましょうか」
ビューーと、風が吹いた。
「凄い、風だったな」
「本当に」
私と友作さんの前に、神社は現れた。
「何だ、あるじゃない」
「ほんとだな!見えてなかったのかもな」
私と友作さんは、鳥居をくぐった。
「こんにちは」
「こんにちは」
薄汚れた袴を来た人が、立っていた。
絵馬を見つけて、私は友作さんを引っ張った。
「先に、絵馬にお願いを書くのよ。この神社はね、すごく有名なんだよ。友作さんも書いて」
「ああ」
疑い深い友作さんは、少し戸惑っていた。
【放れたくない】
誰ととは、あえて書かなかった。
見られるのも、面倒だったから…
「ほら、書いて」
「ああ、待って」
友作さんは、サラサラと書いた。
結って文字が、見えた気がしたけど気にしなかった。
「掛けたら、行くよ。次」
「あぁ、待って」
友作さんは、絵馬を掛ける。
私は、賽銭を投げてお願いをする。
【宮瀬歩を放したくない】
絵馬には、書けなかった願い事
「友作さん、次やってるわよ」
「わかった。待って」
躊躇ってばかりの友作さんは、ゆっくりとお願いをしていた。
これが、私に対しての願いならばごめんね。
私には、もう友作さんの優しさがいらないの。
「で、どうするの?」
「ここを、三周回って終わり。ついてきて」
「わかった」
私と友作さんは、三周回った。
「あの、お守りを買っていきませんか?」
「お守り?!」
「恋愛関係なら、必ず叶いますよ。」
「本当ですか?是非、買います。」
あの記事に、お守りの事なんか載っていなかった。
お守りを見に行く。
「こちらです。」
「高いよ、加奈枝」
「ダメよ!こういうのは、最後までちゃんとしなきゃ」
「わかった。俺が、買うよ」
友作さんが、出してくれようとした手を止めた。
「こういうのは、ちゃんと自分で買うからご利益があるのよ」
嘘だった。
貴方の為の願いじゃないからなのよ。なんて言えなかった。
「そういうものなのか?」
友作さんは、笑いながら自分のお守りを買った。
「肌身離さず持っていて下さいね」
「はい」
私は、友作さんの手を繋いで神社から出た。
きちんとお別れを言おう。
明日には、ちゃんと言うから…。
そう決めて、どれだけ日が経ったのかな?
勇気をもらいたかった。
私は、宮瀬歩と共に人生を歩いていく。
そんな覚悟を決めたかった。
「加奈枝、お腹すかない?」
「すいたわ」
「何か、食べてかえろうか?」
「うん」
決心が鈍る。
友作さんの笑顔を見ると…。
「どうした?」
「目にゴミが入ったみたいで」
「車まで、我慢できる?」
「大丈夫よ。出来るわ」
私は、ハンカチで目頭を押さえる。
言えない。
覚悟を決めたのに、言えなくなる。
友作さんを好きだった時を思い出す。
歩が現れなかったら、今頃友作さんの妻にでもなっていたはずだった。
車に乗ったら、すぐに友作さんは私の目を気遣った。
「見せて」
「はい」
ただ、泣いているだけなのよ。
貴方を愛せない事が、悲しいだけなのよ。
私の目の中に、友作さんが映る事が悲しい。
「大丈夫みたいだよ。まだ、痛いなら目薬を買ってこようか?」
「大丈夫よ。そのうちおさまるわ」
おさまりなんてしない
この、罪悪感は消えなどしない。
この、痛みだってなくなりやしない。
「なら、いいけど…。じゃあ、何か買って家で食べようか?加奈枝の目、辛そうだから。」
「そうね!そうしてくれたら、助かるわ」
何が、助かるというの?
パラパラと時間が、進んでいく。
罪悪感だけが、ゆっくりと降り積もる。
言いたくても、言えないもどかしさだけを抱えていく。
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