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三日月のもの達
私は……
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喜与恵は、顔をあげて私を覗き込んだ。
「私は、三日月宝珠の心を満たす一部になっていますか?」
「当たり前だ。」
私は、喜与恵を抱き締めた。
17歳で、真琴を失った衝撃から私は、喜与恵を罵倒した。
「あの日、宝珠がくれた剥き出しの感情を私は、忘れていませんよ。」
「そうだな。後にも先にも、あれ程、人に感情をぶつけた事はないだろう。三日月宝珠として、強く生きねばならなかった。でも、喜与恵に頼ってばかりだった。喜与恵の気持ちを知ってからは特に利用していたと思う。」
「それで、いいのですよ。宝珠は、何も変わる必要などないのです。私が、ただ宝珠を思っているだけです。ただ、私と宝珠は念珠さんより欲深いです。」
喜与恵が、笑ってくれるだけで安心する。
いつか、美条さんが言っていた。
【宝珠、幽体に恋をしてると聞いた。お前は、大馬鹿だな。でも、私も言えないな。念珠が笑ってくれるだけで、安心するのだ。妻だけじゃ満たされぬ浅ましい心を持っている。お前となんら代わりなどない。宝珠、満たされる人を見つけなさい。例え、叶わぬ恋だとしても。幽体を好いてる事を軽々しく口に出してはいけぬぞ!】
美条さんは、念珠さんを好きだったのではないだろうか?
ただ、それを恋とは認識しなかっただけに過ぎなかったのではないだろうか?
「では、そろそろ。晩御飯を作ってきますね。宝珠は、真理亜さんの所へ。」
立ち上がろうとする喜与恵を引き寄せて抱き締めた。
「宝珠?」
「私は、浅ましい人間だ。だから、喜与恵に毒を渡すのだ。」
私は、喜与恵にキスをしていた。
「どうして?」
「私は、喜与恵の心を一ミリとて、誰にも渡さぬ。そんな、卑しい心の持ち主なのだ。」
私は、もう一度、喜与恵にキスをした。
「気持ちを消さなくて」
「いい。必要ない。その変わり、どんな事があっても私以外で心を燃やすな。私が、例え別の誰かを愛してもだ。」
「はい。私は、一生宝珠だけを愛します。」
人には見えない赤い鎖が、二人の右手首に絡みつくのを二人は見つめていた。
「契約されたな」
宝珠の言葉に、喜与恵は笑った。
「昔、美条さんと念珠さんの手にも巻き付いていました。これは?」
「一生私だけを生きている間愛するという契約が成立した証だ。随分と前に、二条さんから聞いたのだ。真理亜とも、繋がってる。」
「そうなのですね。真理亜さんが、一生宝珠を愛するのですね」
「そうだ。では、真理亜の所に行くよ」
私は、喜与恵を立たせた。
「では、のちほど」
喜与恵は、頭を下げた。
私は、卑しい人間だった。
真琴を失い、真理亜を繋ぎ止めたかった。
【一生、宝珠だけを愛します。と相手に言わせる事が出来たら契約は成立する。】
二条さんに頼んで調べてもらったのだ。
私は、真理亜にそう言わせた。
そして、今日喜与恵にも言わしたのだ。
私は、なんという人間なのだ。
化け物は、他の誰でもなく私ではないか…。
扉の前につくと、やけに明るい真理亜の笑い声がしていた。
「真理亜、失礼するよ」
『はい、どうぞ』
「誰かいるのか?」
『はい』
そう言って、真理亜が笑った。
「あ、貴方でしたか。すみません。」
私の言葉に、真理亜が笑っている。
『お会いした事は、ありました?』
「いえ、ありません。」
『なんで、私にまで敬語なの。宝珠は、可愛いね』
「すみません。」
『お前は、やはり。美琴によく似ておるな』
「いえ、そんな事はありません。」
『似ておるよ。私は、あの世からしか見ていなかったが、三日月は立派に栄えたな。』
そう言って、私を見つめる。
『器を治す為に、おなごを好きになる必要はないぞ!待っていなさい』
「えっ、あの」
その人は、消えてしまった。
「私は、三日月宝珠の心を満たす一部になっていますか?」
「当たり前だ。」
私は、喜与恵を抱き締めた。
17歳で、真琴を失った衝撃から私は、喜与恵を罵倒した。
「あの日、宝珠がくれた剥き出しの感情を私は、忘れていませんよ。」
「そうだな。後にも先にも、あれ程、人に感情をぶつけた事はないだろう。三日月宝珠として、強く生きねばならなかった。でも、喜与恵に頼ってばかりだった。喜与恵の気持ちを知ってからは特に利用していたと思う。」
「それで、いいのですよ。宝珠は、何も変わる必要などないのです。私が、ただ宝珠を思っているだけです。ただ、私と宝珠は念珠さんより欲深いです。」
喜与恵が、笑ってくれるだけで安心する。
いつか、美条さんが言っていた。
【宝珠、幽体に恋をしてると聞いた。お前は、大馬鹿だな。でも、私も言えないな。念珠が笑ってくれるだけで、安心するのだ。妻だけじゃ満たされぬ浅ましい心を持っている。お前となんら代わりなどない。宝珠、満たされる人を見つけなさい。例え、叶わぬ恋だとしても。幽体を好いてる事を軽々しく口に出してはいけぬぞ!】
美条さんは、念珠さんを好きだったのではないだろうか?
ただ、それを恋とは認識しなかっただけに過ぎなかったのではないだろうか?
「では、そろそろ。晩御飯を作ってきますね。宝珠は、真理亜さんの所へ。」
立ち上がろうとする喜与恵を引き寄せて抱き締めた。
「宝珠?」
「私は、浅ましい人間だ。だから、喜与恵に毒を渡すのだ。」
私は、喜与恵にキスをしていた。
「どうして?」
「私は、喜与恵の心を一ミリとて、誰にも渡さぬ。そんな、卑しい心の持ち主なのだ。」
私は、もう一度、喜与恵にキスをした。
「気持ちを消さなくて」
「いい。必要ない。その変わり、どんな事があっても私以外で心を燃やすな。私が、例え別の誰かを愛してもだ。」
「はい。私は、一生宝珠だけを愛します。」
人には見えない赤い鎖が、二人の右手首に絡みつくのを二人は見つめていた。
「契約されたな」
宝珠の言葉に、喜与恵は笑った。
「昔、美条さんと念珠さんの手にも巻き付いていました。これは?」
「一生私だけを生きている間愛するという契約が成立した証だ。随分と前に、二条さんから聞いたのだ。真理亜とも、繋がってる。」
「そうなのですね。真理亜さんが、一生宝珠を愛するのですね」
「そうだ。では、真理亜の所に行くよ」
私は、喜与恵を立たせた。
「では、のちほど」
喜与恵は、頭を下げた。
私は、卑しい人間だった。
真琴を失い、真理亜を繋ぎ止めたかった。
【一生、宝珠だけを愛します。と相手に言わせる事が出来たら契約は成立する。】
二条さんに頼んで調べてもらったのだ。
私は、真理亜にそう言わせた。
そして、今日喜与恵にも言わしたのだ。
私は、なんという人間なのだ。
化け物は、他の誰でもなく私ではないか…。
扉の前につくと、やけに明るい真理亜の笑い声がしていた。
「真理亜、失礼するよ」
『はい、どうぞ』
「誰かいるのか?」
『はい』
そう言って、真理亜が笑った。
「あ、貴方でしたか。すみません。」
私の言葉に、真理亜が笑っている。
『お会いした事は、ありました?』
「いえ、ありません。」
『なんで、私にまで敬語なの。宝珠は、可愛いね』
「すみません。」
『お前は、やはり。美琴によく似ておるな』
「いえ、そんな事はありません。」
『似ておるよ。私は、あの世からしか見ていなかったが、三日月は立派に栄えたな。』
そう言って、私を見つめる。
『器を治す為に、おなごを好きになる必要はないぞ!待っていなさい』
「えっ、あの」
その人は、消えてしまった。
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