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三日月のもの達
三日月念珠《一部修正しました。》
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涙が止まらない喜与恵に肩を貸した。
「すまなかったよ。喜与恵。酷いことを言ってしまった。」
「宝珠は、三日月念珠の事に囚われすぎではありませんか?」
「そうかもしれないね。」
私は、喜与恵の頭を撫でる。
「念珠さんは、師匠のお父様のお兄様でしたね。」
「そうだね」
「片想いだけをして、80歳で亡くなりましたね」
「あぁ、そうだった。念珠さんの80年は片想いだった。」
喜与恵は、私の手を握った。
「念珠さんは、幽体以外とした事もなかったです。しかしながら、念珠さんは一度も人生を悔いてませんでしたよ」
「三日月のものは、報われない恋をするのが得意なのかもしれないね。」
「念珠さんは、そのトップですね。普通なら、こんな風に抱き締められたくもなるはずです。でも、念珠さんはならなかった。」
「ああ、そうだね。彼は私の憧れだった。幽体に恋をしていた私にとって彼は私の未来を見せてくれていた。」
「でも、宝珠は念珠さんと違い欲をもっていますものね。だから、真理亜さんもあんなに…。」
「見ていたのか?」
「はい、すみません」
「嫌、その通りだ。彼は、欲のベールを肉体を持ちながらにして脱ぎ捨てていた。あの精神を私も見習いたかった。でも、出来なかった。」
「煩悩ですね。」
喜与恵は、クスクスと笑いながら頬に手を当てる。
「そうだね。煩悩だ。」
「私は、念珠さんと何度もお話した事があります。そのビジョンは、見れますか?」
「喜与恵の中にあるのなら、探してみよう」
私は、右手を喜与恵の後頭部に当てる。
ドクン……見つけた。
.
.
.
.
.
「念珠さん、お話よろしいですか?」
「あぁ、喜与恵。構わんよ」
「おいくつになられましたか?」
「今年で、七十五だ。ハハハ」
「今は、誰に恋を?」
「あのカフェの店員だ。23歳」
「凄いですね」
「喜与恵も宝珠を好いとるんだなー。わしには、負けるな。叶わない恋は、わしの方が長いぞ。」
念珠さんの懐かしい少しだけしゃがれた優しい声が響く。
これは、30年前だ。
大好きな声だ。
「不幸せではないですか?」
「何故だろうか?」
「一度も誰ともお付き合いなさってなくて…。」
「そんな事考えた事ないな。まだ、10年足らずでそんな事を言うのは寂しいぞ。わしは、千川美条に60年以上片想いしていた。」
「ろ、60年以上ですか?」
「産まれた時から、一緒に生きてきた。5歳で美条を好きになった。彼は、恋をするとわしに相談し、付き合うとまた悩みを相談し、結婚をし子供も授かった。まあ、五年前に亡くなったから。今は、カフェ店員だな。」
「辛くなかったですか?悩み相談なんかされて…」
「辛い?一度も思った事はないぞ。」
そう言って、念珠さんは喜与恵の頭をポンポンと叩く。
「恋をすれば、恋をしていない念珠に私の気持ちは分からぬと言い、彼女が出来れば、付き合った事もない念珠に私の気持ちは分からぬといい、結婚して子を授かれば、結婚も子供もいない念珠に私の気持ちなど分からぬと言った。」
「酷いですね?」
「酷いか?わしは、酷いなど思った事はないぞ。だって、わしは、美条に一度も愛してるなんて言った事はなかったからの」
ハハハと顔をくしゃくしゃにして笑う。
「普通の人間なら、酷い私はこんなに好きなのにってなるであろう?わしは、ならなかった。むしろ、嬉しかった。そんな気持ちをわしにだけくれる美条が嬉しかったんだ。」
「変わってますね。」
「そうかも知れぬな。変わっているから、60年以上も美条だけを想い続けたのだ。わしの前で、美条が喜怒哀楽をぶつける。それが、何より幸せだった。分からぬだろうと泣きながら怒る。その目を見れるだけで幸せだったよ。喜与恵は、成就する事が幸せだと思っとるか?」
「はい、当たり前です」
「それは、間違いだよ」
念珠さんは、そう言うと喜与恵の手を両手で優しく包み込んだ。
「すまなかったよ。喜与恵。酷いことを言ってしまった。」
「宝珠は、三日月念珠の事に囚われすぎではありませんか?」
「そうかもしれないね。」
私は、喜与恵の頭を撫でる。
「念珠さんは、師匠のお父様のお兄様でしたね。」
「そうだね」
「片想いだけをして、80歳で亡くなりましたね」
「あぁ、そうだった。念珠さんの80年は片想いだった。」
喜与恵は、私の手を握った。
「念珠さんは、幽体以外とした事もなかったです。しかしながら、念珠さんは一度も人生を悔いてませんでしたよ」
「三日月のものは、報われない恋をするのが得意なのかもしれないね。」
「念珠さんは、そのトップですね。普通なら、こんな風に抱き締められたくもなるはずです。でも、念珠さんはならなかった。」
「ああ、そうだね。彼は私の憧れだった。幽体に恋をしていた私にとって彼は私の未来を見せてくれていた。」
「でも、宝珠は念珠さんと違い欲をもっていますものね。だから、真理亜さんもあんなに…。」
「見ていたのか?」
「はい、すみません」
「嫌、その通りだ。彼は、欲のベールを肉体を持ちながらにして脱ぎ捨てていた。あの精神を私も見習いたかった。でも、出来なかった。」
「煩悩ですね。」
喜与恵は、クスクスと笑いながら頬に手を当てる。
「そうだね。煩悩だ。」
「私は、念珠さんと何度もお話した事があります。そのビジョンは、見れますか?」
「喜与恵の中にあるのなら、探してみよう」
私は、右手を喜与恵の後頭部に当てる。
ドクン……見つけた。
.
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「念珠さん、お話よろしいですか?」
「あぁ、喜与恵。構わんよ」
「おいくつになられましたか?」
「今年で、七十五だ。ハハハ」
「今は、誰に恋を?」
「あのカフェの店員だ。23歳」
「凄いですね」
「喜与恵も宝珠を好いとるんだなー。わしには、負けるな。叶わない恋は、わしの方が長いぞ。」
念珠さんの懐かしい少しだけしゃがれた優しい声が響く。
これは、30年前だ。
大好きな声だ。
「不幸せではないですか?」
「何故だろうか?」
「一度も誰ともお付き合いなさってなくて…。」
「そんな事考えた事ないな。まだ、10年足らずでそんな事を言うのは寂しいぞ。わしは、千川美条に60年以上片想いしていた。」
「ろ、60年以上ですか?」
「産まれた時から、一緒に生きてきた。5歳で美条を好きになった。彼は、恋をするとわしに相談し、付き合うとまた悩みを相談し、結婚をし子供も授かった。まあ、五年前に亡くなったから。今は、カフェ店員だな。」
「辛くなかったですか?悩み相談なんかされて…」
「辛い?一度も思った事はないぞ。」
そう言って、念珠さんは喜与恵の頭をポンポンと叩く。
「恋をすれば、恋をしていない念珠に私の気持ちは分からぬと言い、彼女が出来れば、付き合った事もない念珠に私の気持ちは分からぬといい、結婚して子を授かれば、結婚も子供もいない念珠に私の気持ちなど分からぬと言った。」
「酷いですね?」
「酷いか?わしは、酷いなど思った事はないぞ。だって、わしは、美条に一度も愛してるなんて言った事はなかったからの」
ハハハと顔をくしゃくしゃにして笑う。
「普通の人間なら、酷い私はこんなに好きなのにってなるであろう?わしは、ならなかった。むしろ、嬉しかった。そんな気持ちをわしにだけくれる美条が嬉しかったんだ。」
「変わってますね。」
「そうかも知れぬな。変わっているから、60年以上も美条だけを想い続けたのだ。わしの前で、美条が喜怒哀楽をぶつける。それが、何より幸せだった。分からぬだろうと泣きながら怒る。その目を見れるだけで幸せだったよ。喜与恵は、成就する事が幸せだと思っとるか?」
「はい、当たり前です」
「それは、間違いだよ」
念珠さんは、そう言うと喜与恵の手を両手で優しく包み込んだ。
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