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三日月のもの達

三日月美佐埜

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宮部さんが、帰った後。

私は、案内人と片付けをしていた。

「よっ、宝珠」

案内人と顔をあげると、糸埜の姉の美佐埜さんが立っていた。

「お久しぶりです。お元気でしたか?」

「めっちゃ、元気だよー」

「糸埜なら、先程帰宅しましたが…。」

「違う、違う。ビジョン見せて欲しくなったんだ。」

「あー。そちらですか。」

美佐埜さんの、三番目の夫に会いに来たのだ、

「こちらに、どうぞ」

私は、布を引き直した。

「オカルト記事のライターさんといるらしいねー」

「そうです。宮部さんと言います。」

「私も記事になるんじゃん。ねっ?骨を愛する女とかどうよ?宝珠」

「美佐埜さんの記事に救われる方もいると思いますよ」

美佐埜さんは、私の胸に手を当てる。

「今の宝珠から、ビジョン見たら駄目だよね」

「器の傷が、美佐埜さんにも見えていますか?」

「そりぁ。能力低くても、三日月のものだかんねーー。糸埜が、いる時にするかな」

「糸埜の前では、あんなには、泣けませんよね。二条さんが亡くなった今、私しか美佐埜さんのビジョンを持っていません。二人には、もう二度と会えませんよ。」

「でも、宝珠が見せてくれるのは彼が宝珠にくれただけで。もう、あんな風に魂が触れ合うのはないだろ?だったら、動画を再生して見てるのとかわんない。それを、私は、いつまで欲しがってんかなぁー。」

美佐埜さんは、そう言って笑った。

「見せる映像であれど、声が聞けます。美佐埜さんは定期的に声が聞きたいのではないですか?」

私は、美佐埜さんの手を握りしめた。

「声ね。そうかもね。宝珠、三日月のものとして産まれなければ、私は幸せを掴んでいたかな?前世で、殺しをしていなければ幸せになれたかな?」

「今は、不幸せですか?」

「幸せだよ。だけど、違うでしょ?これは、普通とは」

「私も同じですよ。真理亜を愛しています。それに……」

案内人を見つめる視線に、美佐埜さんが気づいた。

「あれ、オカルト記事のライターさんが好きなんじゃなかったの?そっち?宝珠も報われないねーー。」

そう言って、美佐埜さんが肩を叩いた。

「確かに、宮部さんに好意を持っているのは事実です。五木結斗のビジョンで何度もお会いし惹かれました。ただ、その感情よりももっと深いのが。真理亜と彼だと、私は知っています。」

案内人は、目を伏せる。

「叶わない恋は、三日月のものあるあるだねーー。」

「そうかも知れませんね。あの美佐埜さん」

「何?」

三日月亞珠みかづきあじゅを連れてきていますよね?」

「あー。運転手にね。でも、まだひよっこだよ。知ってるでしょ?見習いだから」

「しかし、私のビジョンを通せる力だけはあるはずです。」

「それは、無理じゃないの?糸埜しか」

「糸埜は、自分の体を通しビジョンを見せる事ができます。亞珠にやってもらいたいのは、私のビジョンを守る器です。それなら、出来るのではないですか?」

「もういいよ。宝珠」

美佐埜さんは、そう言って笑った。

「どうしてですか?」

「三日月のものは、苦行が深いからさ。」

「そうですね」

案内人が、頷いた。

「喜与恵君も、宝珠が好きだよね。ずっと」

「美佐埜さんは、知っていたのですか?」

「見てればわかるよ。この神社は、三日月のものが使う神社で。一年に数回、三日月のもの達が全員集う。喜与恵君は、いつも宝珠を見ていた。あー。叶わない恋をしてるんだなって思ってたよ。40年でしょ?」

そう言って、美佐埜さんは喜与恵に笑いかける。

「化け物とのハーフになったせいで、見た目こんなに若いから不思議だわ。それも、宝珠の為だから健気だねー」

「バレていましたか…」

喜与恵は、照れくさそうにしながら俯いた。


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