68 / 202
三日月のもの達
三日月美佐埜
しおりを挟む
宮部さんが、帰った後。
私は、案内人と片付けをしていた。
「よっ、宝珠」
案内人と顔をあげると、糸埜の姉の美佐埜さんが立っていた。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「めっちゃ、元気だよー」
「糸埜なら、先程帰宅しましたが…。」
「違う、違う。ビジョン見せて欲しくなったんだ。」
「あー。そちらですか。」
美佐埜さんの、三番目の夫に会いに来たのだ、
「こちらに、どうぞ」
私は、布を引き直した。
「オカルト記事のライターさんといるらしいねー」
「そうです。宮部さんと言います。」
「私も記事になるんじゃん。ねっ?骨を愛する女とかどうよ?宝珠」
「美佐埜さんの記事に救われる方もいると思いますよ」
美佐埜さんは、私の胸に手を当てる。
「今の宝珠から、ビジョン見たら駄目だよね」
「器の傷が、美佐埜さんにも見えていますか?」
「そりぁ。能力低くても、三日月のものだかんねーー。糸埜が、いる時にするかな」
「糸埜の前では、あんなには、泣けませんよね。二条さんが亡くなった今、私しか美佐埜さんのビジョンを持っていません。二人には、もう二度と会えませんよ。」
「でも、宝珠が見せてくれるのは彼が宝珠にくれただけで。もう、あんな風に魂が触触れ合うのはないだろ?だったら、動画を再生して見てるのとかわんない。それを、私は、いつまで欲しがってんかなぁー。」
美佐埜さんは、そう言って笑った。
「見せる映像であれど、声が聞けます。美佐埜さんは定期的に声が聞きたいのではないですか?」
私は、美佐埜さんの手を握りしめた。
「声ね。そうかもね。宝珠、三日月のものとして産まれなければ、私は幸せを掴んでいたかな?前世で、殺しをしていなければ幸せになれたかな?」
「今は、不幸せですか?」
「幸せだよ。だけど、違うでしょ?これは、普通とは」
「私も同じですよ。真理亜を愛しています。それに……」
案内人を見つめる視線に、美佐埜さんが気づいた。
「あれ、オカルト記事のライターさんが好きなんじゃなかったの?そっち?宝珠も報われないねーー。」
そう言って、美佐埜さんが肩を叩いた。
「確かに、宮部さんに好意を持っているのは事実です。五木結斗のビジョンで何度もお会いし惹かれました。ただ、その感情よりももっと深いのが。真理亜と彼だと、私は知っています。」
案内人は、目を伏せる。
「叶わない恋は、三日月のものあるあるだねーー。」
「そうかも知れませんね。あの美佐埜さん」
「何?」
「三日月亞珠を連れてきていますよね?」
「あー。運転手にね。でも、まだひよっこだよ。知ってるでしょ?見習いだから」
「しかし、私のビジョンを通せる力だけはあるはずです。」
「それは、無理じゃないの?糸埜しか」
「糸埜は、自分の体を通しビジョンを見せる事ができます。亞珠にやってもらいたいのは、私のビジョンを守る器です。それなら、出来るのではないですか?」
「もういいよ。宝珠」
美佐埜さんは、そう言って笑った。
「どうしてですか?」
「三日月のものは、苦行が深いからさ。」
「そうですね」
案内人が、頷いた。
「喜与恵君も、宝珠が好きだよね。ずっと」
「美佐埜さんは、知っていたのですか?」
「見てればわかるよ。この神社は、三日月のものが使う神社で。一年に数回、三日月のもの達が全員集う。喜与恵君は、いつも宝珠を見ていた。あー。叶わない恋をしてるんだなって思ってたよ。40年でしょ?」
そう言って、美佐埜さんは喜与恵に笑いかける。
「化け物とのハーフになったせいで、見た目こんなに若いから不思議だわ。それも、宝珠の為だから健気だねー」
「バレていましたか…」
喜与恵は、照れくさそうにしながら俯いた。
私は、案内人と片付けをしていた。
「よっ、宝珠」
案内人と顔をあげると、糸埜の姉の美佐埜さんが立っていた。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「めっちゃ、元気だよー」
「糸埜なら、先程帰宅しましたが…。」
「違う、違う。ビジョン見せて欲しくなったんだ。」
「あー。そちらですか。」
美佐埜さんの、三番目の夫に会いに来たのだ、
「こちらに、どうぞ」
私は、布を引き直した。
「オカルト記事のライターさんといるらしいねー」
「そうです。宮部さんと言います。」
「私も記事になるんじゃん。ねっ?骨を愛する女とかどうよ?宝珠」
「美佐埜さんの記事に救われる方もいると思いますよ」
美佐埜さんは、私の胸に手を当てる。
「今の宝珠から、ビジョン見たら駄目だよね」
「器の傷が、美佐埜さんにも見えていますか?」
「そりぁ。能力低くても、三日月のものだかんねーー。糸埜が、いる時にするかな」
「糸埜の前では、あんなには、泣けませんよね。二条さんが亡くなった今、私しか美佐埜さんのビジョンを持っていません。二人には、もう二度と会えませんよ。」
「でも、宝珠が見せてくれるのは彼が宝珠にくれただけで。もう、あんな風に魂が触触れ合うのはないだろ?だったら、動画を再生して見てるのとかわんない。それを、私は、いつまで欲しがってんかなぁー。」
美佐埜さんは、そう言って笑った。
「見せる映像であれど、声が聞けます。美佐埜さんは定期的に声が聞きたいのではないですか?」
私は、美佐埜さんの手を握りしめた。
「声ね。そうかもね。宝珠、三日月のものとして産まれなければ、私は幸せを掴んでいたかな?前世で、殺しをしていなければ幸せになれたかな?」
「今は、不幸せですか?」
「幸せだよ。だけど、違うでしょ?これは、普通とは」
「私も同じですよ。真理亜を愛しています。それに……」
案内人を見つめる視線に、美佐埜さんが気づいた。
「あれ、オカルト記事のライターさんが好きなんじゃなかったの?そっち?宝珠も報われないねーー。」
そう言って、美佐埜さんが肩を叩いた。
「確かに、宮部さんに好意を持っているのは事実です。五木結斗のビジョンで何度もお会いし惹かれました。ただ、その感情よりももっと深いのが。真理亜と彼だと、私は知っています。」
案内人は、目を伏せる。
「叶わない恋は、三日月のものあるあるだねーー。」
「そうかも知れませんね。あの美佐埜さん」
「何?」
「三日月亞珠を連れてきていますよね?」
「あー。運転手にね。でも、まだひよっこだよ。知ってるでしょ?見習いだから」
「しかし、私のビジョンを通せる力だけはあるはずです。」
「それは、無理じゃないの?糸埜しか」
「糸埜は、自分の体を通しビジョンを見せる事ができます。亞珠にやってもらいたいのは、私のビジョンを守る器です。それなら、出来るのではないですか?」
「もういいよ。宝珠」
美佐埜さんは、そう言って笑った。
「どうしてですか?」
「三日月のものは、苦行が深いからさ。」
「そうですね」
案内人が、頷いた。
「喜与恵君も、宝珠が好きだよね。ずっと」
「美佐埜さんは、知っていたのですか?」
「見てればわかるよ。この神社は、三日月のものが使う神社で。一年に数回、三日月のもの達が全員集う。喜与恵君は、いつも宝珠を見ていた。あー。叶わない恋をしてるんだなって思ってたよ。40年でしょ?」
そう言って、美佐埜さんは喜与恵に笑いかける。
「化け物とのハーフになったせいで、見た目こんなに若いから不思議だわ。それも、宝珠の為だから健気だねー」
「バレていましたか…」
喜与恵は、照れくさそうにしながら俯いた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる