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三日月さんの見せるビジョン
見えない刃と蓄積される痛み
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『それは、目には見えない刃で相手の心を貫く。蓄積された痛みは、気づいた時にはとっくに限界を向かえている。』
『それで、彼女は死を?』
『そうだ。気づかないうちに蓄積された痛みは、ある一言で簡単に終わってしまった。彼女の背中を押したのは、友人の「気にしないでいいじゃん、リアルじゃないんだし」だった。』
吉瀬さんは、涙を目にいっぱい溜めて三日月さんを見つめる。
『リアルじゃなくても傷ついている。私は、そんな人を沢山見てきたよ。』
三日月さんは、吉瀬さんの頬に手を当てる。
『こんなに掲示板やコメントが書けるようになっているのに、優しい言葉をかける人が少ない事に私は、いつも驚かされる。』
『三日月さん』
『叩いて、叩いて、その人を傷つける。構ってちゃんって嫌な言葉ですね。なら、私も構ってちゃんですね』
『えっ?何で?』
吉瀬さんは、三日月さんを見て笑った。
『だって私は、この能力が嫌で…。それに、私は図太い人間だから…。コメントなんか消さないし、相手に喧嘩を吹っ掛けますし、延々と怨み節のようにこの能力の事を書き続けますよ。』
『プッ、ハハハハハハ』
吉瀬さんは、お腹を抱えて転げ回った。
『何か?おかしな事を言いましたか?』
『俺も、戦えばよかったな。三日月さんみたいに、構ってちゃんですが何か?とか言えればよかったな。』
吉瀬さんは、そう言って泣いていた。
『構って欲しくて、何が悪いのですか?死にたいと言えば、はい、構ってちゃんと友人に言われて本当に死んだ幽体を私は知っています。』
吉瀬さんは、目を見開いて三日月さんを見た。
『あの時、私が探していればと泣いていた友人の心のビジョンを見て、私は絶句しました。』
『何を思っていましたか?』
吉瀬さんは、三日月さんの肩を掴んだ。
『何マジで死んでんの?色々聞かれてめんどくさいんだけど…でした。』
『それだけですか?』
『やった方は、何も覚えてませんよ。悪いとも思っていません。だって、自分が殺したわけではないからです。』
三日月さんは、怒りを含みながらも冷静に話した。
『そうだよね。所詮、そんなもんだよね。リアルもネットもさ。』
『そんなものですか?そんな言葉で、すまないではないですか?』
『死んだら負けなんだよ』
『吉瀬さん、私は、一言も吉瀬さんを負けたなんて言っていませんよ』
三日月さんは、吉瀬さんの肩に手を置いた。
『三日月さん、ネットだけで死ぬなんて負け犬ですよ』
『そんな事ありません。吉瀬さんにとって、そこはリアルだったのでしょう?それで、いいじゃないですか。確かに、死を選ぶ事は間違いです。大馬鹿です。私が、ネットでかわりに喧嘩をしまくってあげたかったくらいです。でもね、それよりも吉瀬さんが傷ついた傷を拭う方法がこれしかなかった事が悲しいんです。』
三日月さんの目から涙が流れていく。
『愛とか恋とか友情とか私は、そんなもので魂が癒され傷が塞がるなんて思っていません。その傷を治すのは、いつだって自分なのです。自分以外の存在に治療する事など出来ないのです。ただ、その治し方を吉瀬さんは知らなかっただけなのですよ』
三日月さんの言葉に吉瀬さんの目から、涙がボロボロと流れていく。
『怪我をしたら、消毒して絆創膏を貼るでしょ?それと同じで、心もこうやって治すんですよ』
三日月さんは、吉瀬さんの手を掴んで説明する。
『目を閉じて、両手で胸に手を当てて、ゆっくりと心を取り出すイメージをして。両手で優しく撫でながら、「頑張ったね、偉いね、大丈夫だよ、心配いらないよ」そう言って、優しく両手で包み込んで口に持っていく。はぁーと三回息を吹き掛けてゆっくりと胸に戻す。戻した胸を両手で擦りながら「頑張ったね、偉いよ、もう大丈夫、心配いらないよ」そう言ってあげて。右手で、絆創膏を貼るように撫でてあげる。』
吉瀬さんは、ゆっくりと目を開けた。
『それで、彼女は死を?』
『そうだ。気づかないうちに蓄積された痛みは、ある一言で簡単に終わってしまった。彼女の背中を押したのは、友人の「気にしないでいいじゃん、リアルじゃないんだし」だった。』
吉瀬さんは、涙を目にいっぱい溜めて三日月さんを見つめる。
『リアルじゃなくても傷ついている。私は、そんな人を沢山見てきたよ。』
三日月さんは、吉瀬さんの頬に手を当てる。
『こんなに掲示板やコメントが書けるようになっているのに、優しい言葉をかける人が少ない事に私は、いつも驚かされる。』
『三日月さん』
『叩いて、叩いて、その人を傷つける。構ってちゃんって嫌な言葉ですね。なら、私も構ってちゃんですね』
『えっ?何で?』
吉瀬さんは、三日月さんを見て笑った。
『だって私は、この能力が嫌で…。それに、私は図太い人間だから…。コメントなんか消さないし、相手に喧嘩を吹っ掛けますし、延々と怨み節のようにこの能力の事を書き続けますよ。』
『プッ、ハハハハハハ』
吉瀬さんは、お腹を抱えて転げ回った。
『何か?おかしな事を言いましたか?』
『俺も、戦えばよかったな。三日月さんみたいに、構ってちゃんですが何か?とか言えればよかったな。』
吉瀬さんは、そう言って泣いていた。
『構って欲しくて、何が悪いのですか?死にたいと言えば、はい、構ってちゃんと友人に言われて本当に死んだ幽体を私は知っています。』
吉瀬さんは、目を見開いて三日月さんを見た。
『あの時、私が探していればと泣いていた友人の心のビジョンを見て、私は絶句しました。』
『何を思っていましたか?』
吉瀬さんは、三日月さんの肩を掴んだ。
『何マジで死んでんの?色々聞かれてめんどくさいんだけど…でした。』
『それだけですか?』
『やった方は、何も覚えてませんよ。悪いとも思っていません。だって、自分が殺したわけではないからです。』
三日月さんは、怒りを含みながらも冷静に話した。
『そうだよね。所詮、そんなもんだよね。リアルもネットもさ。』
『そんなものですか?そんな言葉で、すまないではないですか?』
『死んだら負けなんだよ』
『吉瀬さん、私は、一言も吉瀬さんを負けたなんて言っていませんよ』
三日月さんは、吉瀬さんの肩に手を置いた。
『三日月さん、ネットだけで死ぬなんて負け犬ですよ』
『そんな事ありません。吉瀬さんにとって、そこはリアルだったのでしょう?それで、いいじゃないですか。確かに、死を選ぶ事は間違いです。大馬鹿です。私が、ネットでかわりに喧嘩をしまくってあげたかったくらいです。でもね、それよりも吉瀬さんが傷ついた傷を拭う方法がこれしかなかった事が悲しいんです。』
三日月さんの目から涙が流れていく。
『愛とか恋とか友情とか私は、そんなもので魂が癒され傷が塞がるなんて思っていません。その傷を治すのは、いつだって自分なのです。自分以外の存在に治療する事など出来ないのです。ただ、その治し方を吉瀬さんは知らなかっただけなのですよ』
三日月さんの言葉に吉瀬さんの目から、涙がボロボロと流れていく。
『怪我をしたら、消毒して絆創膏を貼るでしょ?それと同じで、心もこうやって治すんですよ』
三日月さんは、吉瀬さんの手を掴んで説明する。
『目を閉じて、両手で胸に手を当てて、ゆっくりと心を取り出すイメージをして。両手で優しく撫でながら、「頑張ったね、偉いね、大丈夫だよ、心配いらないよ」そう言って、優しく両手で包み込んで口に持っていく。はぁーと三回息を吹き掛けてゆっくりと胸に戻す。戻した胸を両手で擦りながら「頑張ったね、偉いよ、もう大丈夫、心配いらないよ」そう言ってあげて。右手で、絆創膏を貼るように撫でてあげる。』
吉瀬さんは、ゆっくりと目を開けた。
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