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宮瀬歩
DAY4 付き合えますように…
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シャワーから、上がった。
喜与恵が、畳んでくれた衣服を着る。
「遅かったな、宝珠」
「すまない」
「いや、問題ない」
私は、糸埜と歩きだす。
「ここで、待っていよう」
宮部さんとのいつもの場所についた。
「おはようございます。」
宮部さんが、やってきた。
「おはようございます。」
「あの、こちらは?」
「三日月糸埜と申します。宝珠の親戚です。」
「初めまして、宮部希海です。」
宮部さんは、お辞儀をする。
「本日から、私がビジョンを見せます。」
「そうなのですね」
「はい。これ以上していると宝珠の身体はもちません。それとビジョンが、書き換えられたのはご存じですよね?」
「はい、五木結斗で知っています。身体がもたないとは?」
「糸埜、その話しはいいだろう。宮部さんもお気になさらずに」
私は、糸埜をとめた。
「そういうわけなので、よろしくお願いします。」
「わかりました」
「ビジョンは、私が糸埜に送り込み。糸埜が、宮部さんに渡します。よろしいですか?」
「はい、わかりました。」
「では、いつもの場所へ」
「はい」
私は、宮部さんを座らせる。
糸埜は、私をギロリと見つめた。
私は、首を横にふった。
はぁー。
私にしか聞こえないため息を糸埜はついた。
「では、宮部様。始めます」
丸い布の中に、三人で座る。
「はい」
糸埜は、左手で私の手を掴んだ。
右手を宮部さんの後頭部に持っていく。
私は、巫女から預かったものを握りしめた。
糸埜は、私を見て頷いた。
私は、それを合図に話す。
「では、宮部さん。四日目を始めましょう。」
「はい」
「宮瀬歩の元に、いってらっしゃい」
カチ…カチ…カチ…カチ
私は、ゆっくりと糸埜の身体にビジョンを送り込んだ。
これ以上やると死ぬと真理亜が言った。
五木結斗も、傷つけるなと言っていた。
私も、本当は知っていたのだ。
自分の器に、傷がついているのを…。
随分と前から、知っていた。
魂を守る入れ物は、人それぞれ、千差万別だ。
厚い人もいれば、薄い人もいる。
だから、人によって傷つきやすさが違うのだ。
私は、元々魂の入れ物が薄いタイプの人間だった。
宮瀬歩も同じタイプだ。
しかし、二条さんに言われ私は鍛え上げた。
宮瀬歩も、また人を傷つける事で器を分厚くした。
だからだろうか?
驚く程、感度が落ちた。
傷つく事に、鈍くなったのだ。
宮瀬歩も、また…。
恋する気持ちに、中々気づかない男だった。
だから、私も器に傷がつきすぎている事に気づかなかった。
一旦、器に傷がついてしまえば、ヒビの入ったグラスのようにゆっくりとゆっくりと気づかないうちにヒビが広がっていく。
そして、外からのダメージを受ければ一瞬で粉々になる。
早乙女加奈枝のあの日の言葉に、宮瀬歩の心は、粉々になったのだ。
私は、この魂を取り出すといつも自分と重ねてしまうのだ。
傷つかないように、防御をし続ける自分を…。
彼の幸せは、不幸せといつも隣り合わせだった。
カチ…カチ…カチ…
.
.
.
.
.
.
【加奈枝、好きだよ】
【加奈枝、愛してる】
【加奈枝、俺と…。】
「おはよう、よく寝てたね」
目を覚ました。
俺を加奈枝が、覗き込んでいた。
よかった。
いたんだ。
俺は、加奈枝を引き寄せて抱き締める。
「なに?どうしたの?怖い夢でも、見た?」
「そうかもしれない」
幸せになるのが、これ程怖いものだと知らなかった。
「ご飯作るから、離して」
「あっ、ごめん。」
うまくいった時より、正直しんどかった。
いつか、なくなるのではないか…。
いつか、終わってしまうのではないか…。
そう考えてしまって、辛いのだ。
幸せは、俺にとって苦痛だ。
「歩、焼きそばでいいよね?」
「あっ、うん」
加奈枝にもっと、優しくしてあげたいのに…。
生活と言う名の日々に、押し流されてしまう。
大学生の加奈枝と社会人の自分じゃ、やらなければならない事も違っていて。
うまく出来ない。
優しくも、出来ない。
いつも、不安が付きまとっている。
喜与恵が、畳んでくれた衣服を着る。
「遅かったな、宝珠」
「すまない」
「いや、問題ない」
私は、糸埜と歩きだす。
「ここで、待っていよう」
宮部さんとのいつもの場所についた。
「おはようございます。」
宮部さんが、やってきた。
「おはようございます。」
「あの、こちらは?」
「三日月糸埜と申します。宝珠の親戚です。」
「初めまして、宮部希海です。」
宮部さんは、お辞儀をする。
「本日から、私がビジョンを見せます。」
「そうなのですね」
「はい。これ以上していると宝珠の身体はもちません。それとビジョンが、書き換えられたのはご存じですよね?」
「はい、五木結斗で知っています。身体がもたないとは?」
「糸埜、その話しはいいだろう。宮部さんもお気になさらずに」
私は、糸埜をとめた。
「そういうわけなので、よろしくお願いします。」
「わかりました」
「ビジョンは、私が糸埜に送り込み。糸埜が、宮部さんに渡します。よろしいですか?」
「はい、わかりました。」
「では、いつもの場所へ」
「はい」
私は、宮部さんを座らせる。
糸埜は、私をギロリと見つめた。
私は、首を横にふった。
はぁー。
私にしか聞こえないため息を糸埜はついた。
「では、宮部様。始めます」
丸い布の中に、三人で座る。
「はい」
糸埜は、左手で私の手を掴んだ。
右手を宮部さんの後頭部に持っていく。
私は、巫女から預かったものを握りしめた。
糸埜は、私を見て頷いた。
私は、それを合図に話す。
「では、宮部さん。四日目を始めましょう。」
「はい」
「宮瀬歩の元に、いってらっしゃい」
カチ…カチ…カチ…カチ
私は、ゆっくりと糸埜の身体にビジョンを送り込んだ。
これ以上やると死ぬと真理亜が言った。
五木結斗も、傷つけるなと言っていた。
私も、本当は知っていたのだ。
自分の器に、傷がついているのを…。
随分と前から、知っていた。
魂を守る入れ物は、人それぞれ、千差万別だ。
厚い人もいれば、薄い人もいる。
だから、人によって傷つきやすさが違うのだ。
私は、元々魂の入れ物が薄いタイプの人間だった。
宮瀬歩も同じタイプだ。
しかし、二条さんに言われ私は鍛え上げた。
宮瀬歩も、また人を傷つける事で器を分厚くした。
だからだろうか?
驚く程、感度が落ちた。
傷つく事に、鈍くなったのだ。
宮瀬歩も、また…。
恋する気持ちに、中々気づかない男だった。
だから、私も器に傷がつきすぎている事に気づかなかった。
一旦、器に傷がついてしまえば、ヒビの入ったグラスのようにゆっくりとゆっくりと気づかないうちにヒビが広がっていく。
そして、外からのダメージを受ければ一瞬で粉々になる。
早乙女加奈枝のあの日の言葉に、宮瀬歩の心は、粉々になったのだ。
私は、この魂を取り出すといつも自分と重ねてしまうのだ。
傷つかないように、防御をし続ける自分を…。
彼の幸せは、不幸せといつも隣り合わせだった。
カチ…カチ…カチ…
.
.
.
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【加奈枝、好きだよ】
【加奈枝、愛してる】
【加奈枝、俺と…。】
「おはよう、よく寝てたね」
目を覚ました。
俺を加奈枝が、覗き込んでいた。
よかった。
いたんだ。
俺は、加奈枝を引き寄せて抱き締める。
「なに?どうしたの?怖い夢でも、見た?」
「そうかもしれない」
幸せになるのが、これ程怖いものだと知らなかった。
「ご飯作るから、離して」
「あっ、ごめん。」
うまくいった時より、正直しんどかった。
いつか、なくなるのではないか…。
いつか、終わってしまうのではないか…。
そう考えてしまって、辛いのだ。
幸せは、俺にとって苦痛だ。
「歩、焼きそばでいいよね?」
「あっ、うん」
加奈枝にもっと、優しくしてあげたいのに…。
生活と言う名の日々に、押し流されてしまう。
大学生の加奈枝と社会人の自分じゃ、やらなければならない事も違っていて。
うまく出来ない。
優しくも、出来ない。
いつも、不安が付きまとっている。
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