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五木結斗
五木結斗にいつか
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三日月さんは、いつもの場所に私と上條さんを連れてきた。
「先程のキスの事ですが」
「はい」
「不快な思いをさせたなら、すみません。私には、彼のビジョンを早急に読み取る必要がありましたので」
「もう別に気にしてませんよ」
「俺もです。」
「すみません」
上條さんは、謝る三日月さんに言った。
「あんな深いキスを見せつけられたら気持ち悪いと思うと思ったんです。男同士だし。でも、違いました。三日月さんのキスは綺麗でしたよ」
「私もそう思いました。三日月さんのキスは、綺麗だった。何か難しいですけど、映画のワンシーンみたいな感じでした。」
「何か、ありがとうございます。」
三日月さんは、照れくさそうに頭を下げていた。
「で、ビジョンって何ですか?」
「私が、上條さんに初めて触触れた時に見せた映像を覚えてますか?」
「はい、14歳の結斗の家で。あれは、紛れもなく俺と結斗の二度目で。でも、結斗は知らないおっさんに抱かれてて」
「それです。それが、ビジョンです。私が、五木結斗から人生のビジョンを全て見せられています。ただ、どういうわけか人に見せれるビジョンは、少しだけなのです。沢山のビジョンを見せれば、人は壊れてしまうのでしょう。」
三日月さんの言葉に、上條さんは三日月さんの手を掴んだ。
「俺に、五木結斗のビジョンを見せて下さい」
「どんなビジョンですか?上條さんと幸せだった時のビジョンですか?」
上條さんは、首を横にふった。
「じゃあ、何でしょうか?」
「結斗が、死ぬ時のビジョンです。」
三日月さんは、驚いて目を開いた。
「死ぬ時とは、病院での最後ですか?」
「違います。犯人に襲われた後です。」
上條さんは、泣きながら三日月さんを見つめた。
「ですが、今はビジョンが乱れていて、うまくいきません。」
「うまくいってからで、構いませんから」
「どうして、そんなビジョンを見たいのですか?」
「結斗を最後に、綺麗にしてあげたくて…。」
「そうですか、結斗君も喜びます。では、きちんとビジョンを修正してからお見せいたします。」
「はい、お願いします。」
「お疲れでしょうから、送りますよ」
そう言って、三日月さんは笑った。
「三日月さん」
「はい」
「結斗は、三日月さんを好きなのではありませんか?」
「どういう意味でしょうか?」
「俺は、五木結斗と少ししかいなかった。でも、わかります。結斗は、三日月さんを好きなんじゃないかって」
「私は、結斗君に好きだと言われた事はありませんよ。結斗君は、いつも上條さんの心配をしていました。陸が、大変なんだ。陸を助けて欲しい。そう言っていましたよ」
三日月さんの言葉に、上條さんはポロポロと泣き出した。
「私に、ヤキモチを妬かなくていいのですよ。上條さんと結斗君の絆は永遠なのですから」
三日月さんは、上條さんを抱き締めた。
「ヤキモチじゃないんです。俺には、凌平が居るから…。結斗にも、三日月さんが居たならって」
「結斗君は、冴草さんといますよ。ずっと一緒に…。」
三日月さんは、そう言って上條さんから離れた。
「でも、もし五木結斗が私を好いてくれていたら、霊能者冥利に尽きますね。」
三日月さんは、ニコニコ笑っている。
「冴草さんに、会わせていただきありがとうございます。」
「いえ。先程の冴草さんの言葉と同じで、結斗君も上條さんが幸せでいる事を望んでいましたよ。」
「そうなんですね。」
上條さんは、もっと泣いていた。
「三日月さん、結斗が戻ってきたら会わせて下さい」
「はい、勿論です。送りますよ」
三日月さんは、笑って歩き出した。
私と上條さんは、後ろからついていく。
私も、上條さんと同じ意見だった。
五木結斗は、死ぬ瞬間まで三日月さんのキスを切望した。
穏やかな死を迎えたのを見た。
車に乗り込んで、三日月さんは上條さんを送った。
連絡先の書いた名刺を、三日月さんは渡していた。
そして、私を送ってくれる。
「先程のキスの事ですが」
「はい」
「不快な思いをさせたなら、すみません。私には、彼のビジョンを早急に読み取る必要がありましたので」
「もう別に気にしてませんよ」
「俺もです。」
「すみません」
上條さんは、謝る三日月さんに言った。
「あんな深いキスを見せつけられたら気持ち悪いと思うと思ったんです。男同士だし。でも、違いました。三日月さんのキスは綺麗でしたよ」
「私もそう思いました。三日月さんのキスは、綺麗だった。何か難しいですけど、映画のワンシーンみたいな感じでした。」
「何か、ありがとうございます。」
三日月さんは、照れくさそうに頭を下げていた。
「で、ビジョンって何ですか?」
「私が、上條さんに初めて触触れた時に見せた映像を覚えてますか?」
「はい、14歳の結斗の家で。あれは、紛れもなく俺と結斗の二度目で。でも、結斗は知らないおっさんに抱かれてて」
「それです。それが、ビジョンです。私が、五木結斗から人生のビジョンを全て見せられています。ただ、どういうわけか人に見せれるビジョンは、少しだけなのです。沢山のビジョンを見せれば、人は壊れてしまうのでしょう。」
三日月さんの言葉に、上條さんは三日月さんの手を掴んだ。
「俺に、五木結斗のビジョンを見せて下さい」
「どんなビジョンですか?上條さんと幸せだった時のビジョンですか?」
上條さんは、首を横にふった。
「じゃあ、何でしょうか?」
「結斗が、死ぬ時のビジョンです。」
三日月さんは、驚いて目を開いた。
「死ぬ時とは、病院での最後ですか?」
「違います。犯人に襲われた後です。」
上條さんは、泣きながら三日月さんを見つめた。
「ですが、今はビジョンが乱れていて、うまくいきません。」
「うまくいってからで、構いませんから」
「どうして、そんなビジョンを見たいのですか?」
「結斗を最後に、綺麗にしてあげたくて…。」
「そうですか、結斗君も喜びます。では、きちんとビジョンを修正してからお見せいたします。」
「はい、お願いします。」
「お疲れでしょうから、送りますよ」
そう言って、三日月さんは笑った。
「三日月さん」
「はい」
「結斗は、三日月さんを好きなのではありませんか?」
「どういう意味でしょうか?」
「俺は、五木結斗と少ししかいなかった。でも、わかります。結斗は、三日月さんを好きなんじゃないかって」
「私は、結斗君に好きだと言われた事はありませんよ。結斗君は、いつも上條さんの心配をしていました。陸が、大変なんだ。陸を助けて欲しい。そう言っていましたよ」
三日月さんの言葉に、上條さんはポロポロと泣き出した。
「私に、ヤキモチを妬かなくていいのですよ。上條さんと結斗君の絆は永遠なのですから」
三日月さんは、上條さんを抱き締めた。
「ヤキモチじゃないんです。俺には、凌平が居るから…。結斗にも、三日月さんが居たならって」
「結斗君は、冴草さんといますよ。ずっと一緒に…。」
三日月さんは、そう言って上條さんから離れた。
「でも、もし五木結斗が私を好いてくれていたら、霊能者冥利に尽きますね。」
三日月さんは、ニコニコ笑っている。
「冴草さんに、会わせていただきありがとうございます。」
「いえ。先程の冴草さんの言葉と同じで、結斗君も上條さんが幸せでいる事を望んでいましたよ。」
「そうなんですね。」
上條さんは、もっと泣いていた。
「三日月さん、結斗が戻ってきたら会わせて下さい」
「はい、勿論です。送りますよ」
三日月さんは、笑って歩き出した。
私と上條さんは、後ろからついていく。
私も、上條さんと同じ意見だった。
五木結斗は、死ぬ瞬間まで三日月さんのキスを切望した。
穏やかな死を迎えたのを見た。
車に乗り込んで、三日月さんは上條さんを送った。
連絡先の書いた名刺を、三日月さんは渡していた。
そして、私を送ってくれる。
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