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連鎖を止めるには…

それは、聞けない

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私は、結斗君の手をのけた。

『三日月先生』

悲しそうに私を見つめる。

「そのお願いは、聞けないよ」

そう言った私を見つめながら泣いていた。

「じゃあ、調べるよ」

『三日月先生、生きた人間にはいったの?』

五木結斗は、はだけたシャツから見えた傷を指差した。

「宮部さんが、犯人にはいりたがったから」

私が、シャツを戻そうとした手を掴まれた。

『三日月先生、これはよくないよ。』

そう言って、五木結斗は獣に引っ掛かれたような傷痕を指で撫でる。

「何だ、それは?」

アメーバのようなネチッとした黒いものを手に取っていた。

『三日月先生、犯人には、はいるべきじゃないよ。』

「明日もはいるつもりだよ。結斗君の犯人の中に」

五木結斗は、その黒いものを握り潰した。

『三日月先生、黒に染まるよ。繰り返してたら…。だから、やめなよ。三日月先生。犯人の気持ちを知ったって、今さらどうにもならないだろ?』

「それでも、宮部さんは知りたがる筈だよ。それに、私も宮部さんのお陰で犯人の気持ちがよくわかった。」

『三日月先生、やめなよ。自分をこれ以上傷つけるの』

五木結斗には、バレているようだった。

私の心が傷だらけなのが…。

気持ちを切り替えよう。

私は、師匠である叔父が残した本を見つめる。

「結斗君、手を握ってみてくれるかな?」

結斗君は、泣きながら手を握ってくれた。

ドクン…

心臓の鼓動を感じた。

あー。やっぱりこうなるんだな。

『三日月先生、ごめんね』

結斗君が、倒れてる。

【一人じゃないよ。私がいる】

宮部さんが、結斗君の手を握りしめていた。

『三日月先生、200回は越えたよね』

「そうだね」

私は、この場所にもう200回以上は来ている。

それでも五木結斗の傷は、癒されなかった。

「もどろう」

『はい』

ドクン…

「どうしたものかな?」

私は、50回目に飛んだ日に、宮部さんに恋をしたのだった。

見る角度を変えてビジョンを見続けた。

50回目のあの日、彼女を初めて真正面から見た。

驚く程、純粋に泣いているのを見て、惹かれたのだった。

『三日月先生、浜井さんには入れないのかな?』

結斗君の言葉に、我に返った。

「そうだな。」

私は、師匠の残したものを見ていた。

恐ろしいやり方が、目に入った。

『見つけたの?』

「ああ」

私は、キッチンから包丁を持ってきた。

『三日月先生?』

「待ってくれ」

私は、覚悟を決めて手首に刃物を滑らせる。

「イッ」

血が流れてくれた。

「結斗君、舐めて」

『えっ?』

「お願いだ」

『わかったよ、三日月先生』 

私は、五木結斗に手首から流れる血を舐めさせる。

フワッとして、グラッとした。

「三日月先生」

『成功だな』

「浜井さんの血も舐めるの?」

『嫌、私のだけで構わない。』

結斗君は、本を見ている。

「入れ替わりをする場合、能力のある人間の血を霊体に舐めさせる事。一時期的に、霊体も同じ能力を得る。一定期間続く。離脱した魂は、能力者が縛りつけておくこと。でなければ、入れ替わった人間は死ぬ。三日月先生」

そこまで、読むと五木結斗は驚いた目で私を見つめた。

『やりたいなら、仕方ない事だ。』

「ただし、入れ替われる魂は傷を癒されたものに限る。でなければ、器に傷がつく。三日月先生、早く戻らなきゃ」

『大丈夫。私は、ヤワじゃない。気にするな』

「三日月先生」

五木結斗は、私の体で泣いていた。

例え、傷つこうが私は、大丈夫だ。

慣れている。

赤子の時から、ずっとそうだったから…。

「三日月先生、戻るよ」

五木結斗は、私の手を掴んだ。

ドクン…

『ありがとう、陸といれる。』

「ただ、傷を癒せるだろうか?」

『三日月先生の体を貸してくれる?』

「構わない」

『もしかしたら、陸とキスでもすれば癒されるかもしれないから。じゃあ、また明日ね。宮部さんが、僕にはいるんでしょ?』

「そうだね」

『三日月先生、さっきのも少しは考えてね。じゃあ』

五木結斗は、消えた。

私は、手首の出血を押さえながらソファーに横になった。
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