上 下
20 / 202
旭川愛梨

神社

しおりを挟む
倫の家で過ごした帰り道。

私は、友人に教えられた神社を探していた。

見つからないか…

ビューーと、突風が吹いて目を閉じた。

えっ?なかったよね?

目の前に、鳥居が現れた。

不思議な顔をしながら、鳥居をくぐり抜ける。

「こんにちは」

「こんにちは」

薄汚れた袴を着た人が、立っていた。

「あの、絵馬って?」

「ああ、こちらです。」

そう言われて、案内された。

絵馬に書く。

【倫に、プロポーズされますように…。】

そして、絵馬を飾りながら、隣を覗いた。

何の名前だろうか?

たくさんの、名前が彫ってあった。

私は、気にしないでお参りをする

賽銭を投げて、【倫に、プロポーズされますように…】

パン、パン

桜の木の下を三周回った。

これで、OKかな

「あの、お守りを買いませんか?」

「あっ、はい」

私は、その人に案内されてお守りを買いに行く。

「恋愛ですか?」

「はい」

「では、こちらですね」

【恋喰愛喰死巫女】と書かれたお守りを差し出された。

「あの、これは?」

「肌身離さず持っていて下さいね」

「えっ、はい」

私は、3000円を払った。

「あの、どうしてこんなお守りの文字なのでしょうか?」

「文字が、気になりますか?」

「はい」

「気になさらないで下さい。これは、うちの神社の神様の名前です。」

「えっ、そうだったんですか!勉強不足ですみません」

「いいえ。では、お幸せに」

そう言って、その人は頭を下げた。

私は、神社から帰る。

友人から聞いていたとおりの、不思議な神社だった。

掌に握りしめていた、さっきのお守りを鞄にしまった。

これで、倫にプロポーズされるなんて嬉しすぎるわ。

私は、倫と居れるだけでいい…。

多くの事は、望まない。

倫を支えて生きていきたいだけ…

友人達には、お医者さんなんて羨ましいと言われたけれど、私は倫がお医者さんだから好きになったわけじゃない。

例え、フリーターでも無職でも、倫を愛していた。

初めて、倫と出会った日からそう感じていたの。

倫は、忙しい人だから突然デートがキャンセルになったり、急患が来てしまって遅れたり、急変があって、来れなくなったりする。

でも、私はそんな事を気にしない。

だって、一秒でも倫の顔を見られるだけで充分なのよ。

倫は、疲れているとすぐに眠ってしまう。

待っていてと言われても帰宅が深夜になる事もある。

それでも、倫の温もりにれるだけで全て忘れてしまう。

会えない時間の寂しさも、誕生日に間に合わなくて一人でレストランで過ごした悲しさも、全部、全部、なかった事になるの。

一ノ瀬倫と、一秒でも長く傍にいたい。

私は、一ノ瀬倫を支えてあげたい。

一緒に暮らして、倫が家の事を心配しなくていい時間を作ってあげたい。

料理や洗濯や掃除をして、倫がただ眠るだけの家を作ってあげたい。

あー。

これ、素敵。

ショーウィンドウにあるウェディングドレスの前で止まった。

これ、絶対着たい。

ウェディングフェアが、やっていたようで、たまたま飾られていたみたいだった。

倫と結婚式あげるなら、これを着たい。

綺麗だねって、倫に言って欲しい。

パラパラと雑誌を捲るように、また日々が過ぎていく。

それは、スライドショーを見せられているようで…。

でも、気持ちだけは雪のように降り積もっていく。

愛してる

愛してる

愛してる

一ノ瀬倫への愛で、身体中が満たされていく。

そして、一ノ瀬倫からもらってる愛もまた降り積もっていく。

ずっと、一緒にいたい

他には、なにもいらない

倫がいれば、それだけでいい

それ以外、何もいらない


カチ…カチ…カチ…

【宮部さん、少しだけ離します】

そう言われた瞬間、画面が切り替わった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...