10 / 202
三笠千尋
会いに行く
しおりを挟む
「ああ、来たわ」
暗い表情から、パアッと明るい表情に変わった。
「桂木丈助さんです。声をかけて下さい。」
時刻は、夕方の4時だった。
「こんにちは」
「こんにちは」
私は、緊張しながら桂木丈助に声をかけた。
「あ、あの」
「何でしょうか?」
「三笠千尋さんを覚えていますか?」
桂木丈助さんは、私を見つめた。
「忘れた日など、一度もありません。」
「私は、三笠千尋さんから預かった手紙を持ってきました」
「えっ?手紙ですか」
「はい」
そう言って、さっき書いた手紙を鞄から取り出した。
「これを、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
「こんなオカルト話を信じてもらえるかわかりませんが、この手紙は、私が三笠千尋さんの幽霊に聞いた話を手紙にしたのです。」
馬鹿馬鹿しい事を言っているのは、わかっていた。
「何を言ってるのですか?何かの宗教の類いならお断りします。」
そう言って私は、桂木丈助さんに手紙を返された。
開いて、読んで
と三笠千尋さんが、言った。
私は、去ろうとする桂木丈助さんに手紙を広げて読む。
三日月さんが、千尋さんの手を取って私の肩に手を置いた。
【ジョーへ】
声が、変わったのを感じた。
「私は、ジョーを愛してる。どんな事があってもそれはけして変わらない」
桂木丈助さんは、足を止めて振り返った。
「ジョーからの愛を受け取れない私などいらないと思った。昨日、ジョーがラブホテルに行ったのを見たの。そしたら、何故か暗闇で…。もう、前など見えなかった」
私の目から涙がスッーと流れてきた。
「ジョーが、悪い訳じゃないの。私が、もう暗闇にいたってだけなの…。ジョー、私はジョーの未来にはいれない。けど、ジョーの未来を応援してる。」
桂木丈助さんが、近づいてきた。
「なぜ?千尋の声を出せるのだ」
「まだ、覚えていたのですか?」
三日月さんと、千尋さんは肩から手を離した。
「忘れるはずありません。」
「信じて、もらえましたか?」
私は、手紙を差し出した。
「ああぁ、ありがとう」
そう言って、桂木丈助さんは泣き出した。
「千尋を忘れて幸せになろうとしてるなんて、俺は、最低だ。」
千尋さんは、首を横にふってる。
「そんな事、千尋さんは思ってません。」
「千尋を幸せに出来なかったのに、誰かを幸せにしようとしてる。俺は、駄目なんだよ。」
三日月さんが、桂木丈助さんに近づいた。
「亡くなった人は、愛をずっと贈っているんです。何故?受け取ろうとしないのですか?受け取れば、謝罪や怒りなど無意味な事を知るのですよ。」
桂木丈助さんは、顔を上げて三日月さんを見つめている。
三日月さんは、右手の手袋を取ってポケットに入れた。
千尋さんが、三日月さんの左手を握りしめた。
「少しだけ、失礼します」
そう言って、後頭部に手をあてた。
その瞬間、桂木丈助さんの目から涙がポタポタと流れてくるのを見た。
一体、何が起こってるのだろうか?
三日月さんは、後頭部からゆっくり手を離した。
「桂木丈助さん、幸せになるべきですよ。行こうか、宮部さん」
「あっ、はい」
私は、桂木丈助さんに頭を下げた。
「あの、また千尋に会わせてもらえるのですか?」
三日月さんは、振り返った。
「いえ、これが最後です。ですが、桂木丈助さんをいつでも見守っています。それは、そうですね。寄り添うとは、違います。粒子のような感じです。桂木丈助さんの近くを漂っている感じです。これからは、桂木丈助さんが幸せになる事が三笠千尋さんの供養だと思って下さい」
三日月さんの言葉に、桂木丈助さんは、頭を下げた。
「ありがとうございました。」
そう言って、顔を上げる。
ずっと、涙が流れていた。
「あの、三日月さん」
「はい」
「何を見せたのですか?」
「内緒です」
気づくと千尋さんは、いなくなっていた。
「千尋さんは?」
「あちらに帰りましたよ」
「そこは、幸せですか?」
「どうでしょうか?こちらの世界と変わらないと聞きますが…」
「街並みが同じなのですか?」
「はい、同じですよ。前に、小さな女の子が私にビジョンを見せてくれましたから」
そう言って、三日月さんは笑って車に乗り込んだ。
暗い表情から、パアッと明るい表情に変わった。
「桂木丈助さんです。声をかけて下さい。」
時刻は、夕方の4時だった。
「こんにちは」
「こんにちは」
私は、緊張しながら桂木丈助に声をかけた。
「あ、あの」
「何でしょうか?」
「三笠千尋さんを覚えていますか?」
桂木丈助さんは、私を見つめた。
「忘れた日など、一度もありません。」
「私は、三笠千尋さんから預かった手紙を持ってきました」
「えっ?手紙ですか」
「はい」
そう言って、さっき書いた手紙を鞄から取り出した。
「これを、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
「こんなオカルト話を信じてもらえるかわかりませんが、この手紙は、私が三笠千尋さんの幽霊に聞いた話を手紙にしたのです。」
馬鹿馬鹿しい事を言っているのは、わかっていた。
「何を言ってるのですか?何かの宗教の類いならお断りします。」
そう言って私は、桂木丈助さんに手紙を返された。
開いて、読んで
と三笠千尋さんが、言った。
私は、去ろうとする桂木丈助さんに手紙を広げて読む。
三日月さんが、千尋さんの手を取って私の肩に手を置いた。
【ジョーへ】
声が、変わったのを感じた。
「私は、ジョーを愛してる。どんな事があってもそれはけして変わらない」
桂木丈助さんは、足を止めて振り返った。
「ジョーからの愛を受け取れない私などいらないと思った。昨日、ジョーがラブホテルに行ったのを見たの。そしたら、何故か暗闇で…。もう、前など見えなかった」
私の目から涙がスッーと流れてきた。
「ジョーが、悪い訳じゃないの。私が、もう暗闇にいたってだけなの…。ジョー、私はジョーの未来にはいれない。けど、ジョーの未来を応援してる。」
桂木丈助さんが、近づいてきた。
「なぜ?千尋の声を出せるのだ」
「まだ、覚えていたのですか?」
三日月さんと、千尋さんは肩から手を離した。
「忘れるはずありません。」
「信じて、もらえましたか?」
私は、手紙を差し出した。
「ああぁ、ありがとう」
そう言って、桂木丈助さんは泣き出した。
「千尋を忘れて幸せになろうとしてるなんて、俺は、最低だ。」
千尋さんは、首を横にふってる。
「そんな事、千尋さんは思ってません。」
「千尋を幸せに出来なかったのに、誰かを幸せにしようとしてる。俺は、駄目なんだよ。」
三日月さんが、桂木丈助さんに近づいた。
「亡くなった人は、愛をずっと贈っているんです。何故?受け取ろうとしないのですか?受け取れば、謝罪や怒りなど無意味な事を知るのですよ。」
桂木丈助さんは、顔を上げて三日月さんを見つめている。
三日月さんは、右手の手袋を取ってポケットに入れた。
千尋さんが、三日月さんの左手を握りしめた。
「少しだけ、失礼します」
そう言って、後頭部に手をあてた。
その瞬間、桂木丈助さんの目から涙がポタポタと流れてくるのを見た。
一体、何が起こってるのだろうか?
三日月さんは、後頭部からゆっくり手を離した。
「桂木丈助さん、幸せになるべきですよ。行こうか、宮部さん」
「あっ、はい」
私は、桂木丈助さんに頭を下げた。
「あの、また千尋に会わせてもらえるのですか?」
三日月さんは、振り返った。
「いえ、これが最後です。ですが、桂木丈助さんをいつでも見守っています。それは、そうですね。寄り添うとは、違います。粒子のような感じです。桂木丈助さんの近くを漂っている感じです。これからは、桂木丈助さんが幸せになる事が三笠千尋さんの供養だと思って下さい」
三日月さんの言葉に、桂木丈助さんは、頭を下げた。
「ありがとうございました。」
そう言って、顔を上げる。
ずっと、涙が流れていた。
「あの、三日月さん」
「はい」
「何を見せたのですか?」
「内緒です」
気づくと千尋さんは、いなくなっていた。
「千尋さんは?」
「あちらに帰りましたよ」
「そこは、幸せですか?」
「どうでしょうか?こちらの世界と変わらないと聞きますが…」
「街並みが同じなのですか?」
「はい、同じですよ。前に、小さな女の子が私にビジョンを見せてくれましたから」
そう言って、三日月さんは笑って車に乗り込んだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライムスレイヤー ~イシノチカラ~
亜形
ファンタジー
「あんた、スライム増やしてどうすんの?」
***
この世界のモンスターは全てスライムが擬態した姿である。
ギルドのクエストを受け、モンスター討伐を生業としている者を討伐者と呼ぶ。
討伐者はモンスターを浄化する石の力を伝達させた武器でモンスターを倒す。
そんなことも知らなかった主人公を見ていた少女が声をかけ、一緒にモンスターを討伐していくことになる。
そして明らかになるもう一つの不思議な力。
***

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道
コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。
主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。
こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。
そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。
修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。
それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。
不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。
記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
他サイトにも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい
凍星
キャラ文芸
幽霊が視えてしまうパティシエ、葉室尊。できるだけ周りに迷惑をかけずに静かに生きていきたい……そんな風に思っていたのに⁉ バーテンダーの霊能者、久我蒼真に出逢ったことで、どういう訳か、霊能力のある人達に色々絡まれる日常に突入⁉「オレは視えてるだけだって言ってるのに、なんでこうなるの??」霊感のある主人公と、彼の秘密を暴きたい男の駆け引きと絆を描きます。BL要素あり。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる