9 / 202
三笠千尋
伝える
しおりを挟む
「お疲れ様でした。」
「あの、今のは現実ですか?」
「はい、勿論です。」
「あの、千尋さんは一人で死ななかったんですよね」
「最後は、宮部さんが見ていましたよ」
「それって」
三日月さんは、ニコッと笑った。
「気づいていないなら、教えてあげます。」
「はい」
「宮部さんは、少なからず私と同じ能力を持っています。だから、私は宮部さんをあの日に連れて行けるのです。」
三日月さんの腕の傷が消え始める。
「どういう意味か、よくわからないのです。」
「あの日、宮部さんは知らないうちに彼女に会いに行ってるのです。」
「えっ?」
「宮部さんのそれが能力なのですよ。貴女は、生き霊を飛ばす事が出来る。知らないうちに、だから、色んな人の最後を貴女は見ているのです。宮部さんは、気づいていないと思いますが…。私は、何度も貴女を目撃してる。彼らが見せる映像の最後に、宮部さんがいるのです。」
私は、驚いて三日月さんを見つめていた。
「では、桂木丈助さんに彼女の想いを伝えに行きましょうか?」
「あっ、はい」
三日月さんは、私が驚いているのも気にしないで、手紙を差し出してきた。
「今から、書きます」
「はい」
三日月さんが、片付けをしている間に私は、千尋さんの言葉を手紙に書いた。
「終わりました」
「では、行きましょう」
そう言われて、三日月さんと一緒に歩き出す。
神社を出て、三日月さんは近くの駐車場で車に乗り込んだ。
「どうぞ」
「はい」
私も、助手席に乗り込んだ。
「あの、毎回こんな事をしてるのですか?」
「はい、そうです」
「そうなんですね」
「はい、私の役目だと思っています。」
「あの…」
「はい」
「私が、いつも居たとはどういう事でしょうか?」
「私がビジョンをお見せする8人の前には、ハッキリと宮部さんが存在していた。あの神社に呼ばれたのは、そう言うことですよ」
「時期がやってきたって事ですか?」
「察しがいいですね。」
三日月さんは、赤信号で停まると私を見つめる。
「先ほどの、桂木丈助さんが愛する人を見つけたのでしょう」
そう言って、笑った。
「ご家族なら、前を向き始めた時期だ。そして、宮部さんだけじゃないんですよ。あの場所には、少なくとも二人はいた。」
「もう一人の方の役目は?」
「もうとっくに終わっていますよ。5年以上前に…。ご家族に会いに行きましたから」
「前を向いた時期だったのですね。ご家族が…。」
「はい」
三日月さんは、そう言って柔らかい笑顔を浮かべる。
「桂木丈助さんは、前に進めるのですね?」
「絶対に、進めますよ」
三日月さんは、緑が豊かな街で車を停める。
「ここですか?」
「はい、そのはずです。」
パンパンと軽く三日月さんが、手を叩くと、三笠千尋が現れた。
「あっていますか?」
「はい」
「千尋さん、何故?」
「ああ、お呼びしました。彼女は、時々。桂木丈助さんを見守っていましたので。」
千尋さんは、私の手を握った。
「宮部さん、ありがとう。最後の瞬間に、一緒にいてくれて。一人じゃなくて、嬉しかった」
「後悔は、していないのですか?」
「不思議と後悔はしていないの。何故かは、三日月さんに聞いたわ。どうして、こうなったのかもね。それでも、私は誰も憎んでいないのよ」
「そうなのですね」
「そうなのよ。今は、信じられないぐらい。幸せなの…。」
千尋さんは、そう言って微笑んでいる。
「三日月さん、宮部さんにまだあの話はしていないの?」
「はい、最後にしようと思っています。」
「そうね、それがいいわね。偏見をもって欲しくないものね」
「はい」
そう言って、二人は話している。
「千尋さん、桂木さんが幸せになる事を見届けていたのですか?」
「そうよ。私は、ジョーを今でも愛している。前のような愛されたいとかじゃないの。ただ、穏やかな愛なのよ。私は、生きてる時に、手に入れられなかった。あの時は、自分も愛されたくて必死だったから…」
そう言って、千尋さんは寂しそうに目を伏せた。
「あの、今のは現実ですか?」
「はい、勿論です。」
「あの、千尋さんは一人で死ななかったんですよね」
「最後は、宮部さんが見ていましたよ」
「それって」
三日月さんは、ニコッと笑った。
「気づいていないなら、教えてあげます。」
「はい」
「宮部さんは、少なからず私と同じ能力を持っています。だから、私は宮部さんをあの日に連れて行けるのです。」
三日月さんの腕の傷が消え始める。
「どういう意味か、よくわからないのです。」
「あの日、宮部さんは知らないうちに彼女に会いに行ってるのです。」
「えっ?」
「宮部さんのそれが能力なのですよ。貴女は、生き霊を飛ばす事が出来る。知らないうちに、だから、色んな人の最後を貴女は見ているのです。宮部さんは、気づいていないと思いますが…。私は、何度も貴女を目撃してる。彼らが見せる映像の最後に、宮部さんがいるのです。」
私は、驚いて三日月さんを見つめていた。
「では、桂木丈助さんに彼女の想いを伝えに行きましょうか?」
「あっ、はい」
三日月さんは、私が驚いているのも気にしないで、手紙を差し出してきた。
「今から、書きます」
「はい」
三日月さんが、片付けをしている間に私は、千尋さんの言葉を手紙に書いた。
「終わりました」
「では、行きましょう」
そう言われて、三日月さんと一緒に歩き出す。
神社を出て、三日月さんは近くの駐車場で車に乗り込んだ。
「どうぞ」
「はい」
私も、助手席に乗り込んだ。
「あの、毎回こんな事をしてるのですか?」
「はい、そうです」
「そうなんですね」
「はい、私の役目だと思っています。」
「あの…」
「はい」
「私が、いつも居たとはどういう事でしょうか?」
「私がビジョンをお見せする8人の前には、ハッキリと宮部さんが存在していた。あの神社に呼ばれたのは、そう言うことですよ」
「時期がやってきたって事ですか?」
「察しがいいですね。」
三日月さんは、赤信号で停まると私を見つめる。
「先ほどの、桂木丈助さんが愛する人を見つけたのでしょう」
そう言って、笑った。
「ご家族なら、前を向き始めた時期だ。そして、宮部さんだけじゃないんですよ。あの場所には、少なくとも二人はいた。」
「もう一人の方の役目は?」
「もうとっくに終わっていますよ。5年以上前に…。ご家族に会いに行きましたから」
「前を向いた時期だったのですね。ご家族が…。」
「はい」
三日月さんは、そう言って柔らかい笑顔を浮かべる。
「桂木丈助さんは、前に進めるのですね?」
「絶対に、進めますよ」
三日月さんは、緑が豊かな街で車を停める。
「ここですか?」
「はい、そのはずです。」
パンパンと軽く三日月さんが、手を叩くと、三笠千尋が現れた。
「あっていますか?」
「はい」
「千尋さん、何故?」
「ああ、お呼びしました。彼女は、時々。桂木丈助さんを見守っていましたので。」
千尋さんは、私の手を握った。
「宮部さん、ありがとう。最後の瞬間に、一緒にいてくれて。一人じゃなくて、嬉しかった」
「後悔は、していないのですか?」
「不思議と後悔はしていないの。何故かは、三日月さんに聞いたわ。どうして、こうなったのかもね。それでも、私は誰も憎んでいないのよ」
「そうなのですね」
「そうなのよ。今は、信じられないぐらい。幸せなの…。」
千尋さんは、そう言って微笑んでいる。
「三日月さん、宮部さんにまだあの話はしていないの?」
「はい、最後にしようと思っています。」
「そうね、それがいいわね。偏見をもって欲しくないものね」
「はい」
そう言って、二人は話している。
「千尋さん、桂木さんが幸せになる事を見届けていたのですか?」
「そうよ。私は、ジョーを今でも愛している。前のような愛されたいとかじゃないの。ただ、穏やかな愛なのよ。私は、生きてる時に、手に入れられなかった。あの時は、自分も愛されたくて必死だったから…」
そう言って、千尋さんは寂しそうに目を伏せた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
神送りの夜
千石杏香
ホラー
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。
父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。
町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌
力水
ファンタジー
楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。
妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。
倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。
こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。
ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。
恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。
主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。
不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!
書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。
一人でも読んでいただければ嬉しいです。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
異世界でドラゴニュートになってのんびり異世界満喫する!
ファウスト
ファンタジー
ある日、コモドドラゴンから『メダル』を受け取った主人公「龍河 由香」は
突然剣と魔法の世界へと転移してしまった。
メダルは数多の生物が持つことを許される異世界への切符で・・・!
伝説のドラゴン達の加護と武具を受けて異世界大冒険!だけど良く見たら体が?!
『末永く可愛がる為って・・・先生、愛が重いです』
ドラゴニュートに大変身!無敵のボディを駆使して異世界を駆け巡る!
寿命が尽きたら元の世界に戻れるって一体何年?ええっ!千年以上?!
ドラゴニュートに変身した少女が異世界を巡ってドラゴン達を開放したり
圧倒的な能力で無双しつつ尊敬を集めたりと異世界で自由にするお話。
※タイトルを一部変更しました。ですがこれからの内容は変えるつもりありません。 ※現在ぱパソコンの破損により更新が止まっています
クーヤちゃん ~Legend of Shota~ このかわいい召喚士は、地球からアイテムを召喚してしまったみたいです
ほむらさん
ファンタジー
どうやら、人は死ぬと【転生ルーレット】で来世を決めるらしい。
知ったのはもちろん自分が死んで最後の大勝負を挑むことになったからだ。
虫や動物で埋め尽くされた非常に危険なルーレット。
その一発勝負で、幸運にも『ショタ召喚士』を的中させることに成功する。
―――しかし問題はその後だった。
あの野郎、5歳児を原っぱにポイ捨てしやがった!
召喚士うんぬんの前に、まずは一人で異世界を生き抜かねばならなくなったのです。
異世界言語翻訳?そんなもん無い!!
召喚魔法?誰も使い方を教えてくれないからさっぱりわからん!
でも絶体絶命な状況の中、召喚魔法を使うことに成功する。
・・・うん。この召喚魔法の使い方って、たぶん普通と違うよね?
※この物語は基本的にほのぼのしていますが、いきなり激しい戦闘が始まったりもします。
※主人公は自分のことを『慎重な男』と思ってるみたいですが、かなり無茶するタイプです。
※なぜか異世界で家庭用ゲーム機『ファミファミ』で遊んだりもします。
※誤字・脱字、あとルビをミスっていたら、報告してもらえるとすごく助かります。
※登場人物紹介は別ページにあります。『ほむらさん』をクリック!
※毎日が明るくて楽しくてほっこりしたい方向けです。是非読んでみてください!
クーヤ「かわいい召喚獣をいっぱい集めるよ!」
@カクヨム・なろう・ノベルアップ+にも投稿してます。
☆祝・100万文字(400話)達成! 皆様に心よりの感謝を!
生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち
はるかず
児童書・童話
生まれることもできない卵の雛たち。
5匹の殻にこもる雛は、卵の中でそれぞれ悩みを抱えていた。
一歩生まれる勇気さえもてない悩み、美しくないかもしれない不安、現実の残酷さに打ちのめされた辛さ、頑張れば頑張るほど生まれることができない空回り、醜いことで傷つけ傷つけられる恐怖。
それぞれがそれぞれの悩みを卵の中で抱えながら、出会っていく。
彼らは世界の美しさを知ることができるのだろうか。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる