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三笠千尋

願い事

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「三笠さん、そろそろ、プロポーズされた?」

「そんなの、まだなんです」

「どうして、もうすぐ38歳でしょ?子供も考えると絶対早い方がいいわよ」

「そうですかね?」

「ほら、ここ行ってみなよ。恋愛成就で有名な場所だがら」

「行ってみようかなー」

職場の方に教えられた神社に向かっていた。

どこだっけ、完全に迷った。

ビューっと風が吹いて、突然鳥居が現れた。

「何で見つけられなかったんだろう?変なの」

私は、不思議に思いながら鳥居を見つめる。

【恋喰愛喰死巫女】

「何て、読むのかな?」

よくわからなかった。

まあ、行こう

神社の名前は、よく見えなかった。

「こんにちは」

「こんにちは」

宮司さんにしては、薄汚れた袴を着ている。

私は、絵馬を買いに行く。

【まずは、絵馬を買うのよ】

願い事をスラスラ書く。

【ジョー君と結婚できますように…。】

それしかなかった。

で、お賽銭を投げる。

パチパチ

【ジョーと結婚できますように】

桜の木の下に行って、三回周りながら願いをかける。

おしまい

ビューって、風が吹いて桜の花びらはヒラヒラと散った。

「お守りは、いりますか?」

「はい」

さっきの薄汚れた袴を着た人が、声を掛けてきた。

「こちらに、どうぞ」

「はい」

「恋愛成就は、ないのね」

「では、これですね」

「えっ?」

そのお守りは、さっきの鳥居に彫られた文字がはいってる。

【恋喰愛喰死巫女】

「これ、何て読むのでしょうか?」

「読み方は、関係ありません。こちらを肌見放さず必ず持ち歩いて下さい。忘れてはいけませんよ。」

「あっ、はい。って、高いですね」

「そうですね。でも、本当に願いを叶えるものですから…」

お守りに、3000円も払った事など初めてだった。

「わかりました」

私は、そのお守りを受け取った。

「では、失礼致します。」

新しい参拝客が現れて、去っていった。

変な人

私は、横にある木彫りの名前を見る。

赤黒い文字で、名前が彫られている。

【五木結斗】

どっかで、聞いた事がある名だ。

【志村梢】

うーん、この人も聞いた事がある。

【名取龍之介】

この人も聞いた事がある。

誰だっけ、誰だっけ…。

私は、思い出せなかった。

腕時計を見ると、2時を回っていた。

「あー、帰らなきゃ」

今日は、ジョーと夕方からデートだった。

私は、急いで神社をあとにした。

家に帰って、鞄を交換した。

「願いが叶うお守りね」

私は、小さなバックにそれをいれた。

服を着替える。

今日、プロポーズされるかもしれない。

そう思うと、嬉しくて堪らなかった。

あー。そうだった。

会社の安野さんに、ブライダルチェックをしておきなさいと言われたんだった。

安野さんは、この検査で妊娠しにくい事がわかったのよね。

結局、婚約破棄になったって言ってたっけ

愛があれば、そんなの関係ないんじゃないの

もし、そうなったらジョーも私を捨ててしまうのかしら

あー。

ジョーに会う前に、暗いキモチになるのはダメよ。

よく願いが叶う神社に行ったんだもん。

だから、大丈夫

私は、明るいメークを施した。

あー。

そろそろ、行かなきゃ

私は、ジョーの元に急いだ。

「ごめんね。千尋」

「ううん」

ジョーは、汗をタオルで拭いながら笑っていた。

さっと、私の手をとるのは、相変わらずで

私は、ジョーの優しさが大好きだ。

「ここなんだ。」

「珍しいね。こんなところ」

珍しく、カッターシャツを着ていると思ったら、お洒落なレストランだった。

メニューが、どんどん運ばれて、デザートになった。

「ジョー」

ケーキのプレートに、結婚してくださいと書かれていた。

「勿論です。喜んで」

ジョーが、こんなお洒落な演出ができると思わなくて泣いてしまった。

「千尋」

そう言って、四角い箱を開けてくれた。

「綺麗ね」

「誕生石がいいって聞いたから…。お誕生日の日に言いたかった。」

4月2日、私はジョーからプロポーズをされた。

パラパラと雑誌が捲られるように映像が、切り替わっていく。
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