4 / 202
桜の季節にだけ現れる神社
見せるビジョン
しおりを挟む
「そちらに、座って下さい」
真っ白な丸い布の上を指した。
「はい」
「これから、見せるのは、三笠千尋さんです。調べていますよね?」
「自殺された方ですね。調べました。」
「はい、桂木丈助さんとお付き合いされていました。」
そう言って、三日月さんは黒い手袋を脱いで置いた。
「きちんと、宮部さんが見たままを書いてもらえますか?」
「はい」
「では、これを…」
「これは?」
「私の力が強すぎるので、こちらを持っていて下さい。」
私は、数珠を握らされる。
「これは、私が特別に作ったものです。」
黒、白、黄、赤、青、緑、オレンジ、透明…。
8色の入った数珠だ。
「あの、どんな風に見るのですか?さっきは、五木さんを外で見てる感じでした。」
「次は、宮部さんがその人の中に入ります。だから、心の中も全部見る事が出来ます。」
「男の人の中も入るのは、何か嫌ですね。」
私は、苦笑いを浮かべた。
「それでも、真実を見てきて下さい。そして、痛みを感じて下さい。もし、駄目な場合はこちらを」
そう言って、手に鈴を握らされた。
「宮部さんが、嫌だと思えば、こちらを身体が勝手に鳴らします。だから、嫌だと強く思って下さい。」
「どんな気持ちを感じるのでしょうか?」
「そうですね。私が、見せるものはその人が、一番幸せな時間から始まります。そこから、パラパラと雑誌を捲るように時間は進んでいきます。次に現れるのは、この神社か、寄贈された桜の木だと思います。今から、お見せする皆さんは、こちらか寄贈された桜の木に行っておられます。それは、過去に行ってるかもしれません。それから、ペラペラと雑誌を捲るようにまた進んでいきます。そして、最後に事件が起こる三日前に行きます。そこから、事件に向かって進んでいきます。」
「それって、殺されたり痛みを感じたりって事ですか?」
「そうですね。本人が感じていた気持ちは、全て宮部さんに流れ込みます。」
「怖いです」
「そう思ったら、強く帰りたいと念じてください。今から、行く世界では、宮部さんがその人になる世界です。痛みも苦しみも喜びも悲しみも、全ての感情が宮部さんに流れ込む。だから、無理だと思ったら強く念じて下さい。最初は、二つの人格を持っている感覚がしますが、すぐに一つになります。」
そう言うと三日月さんは、袖を捲る。
「それは…」
さっきは、気づかなかったけれど三日月さんの手の爪は真っ黒で、手の甲は痣のような赤色が広がってる。
三日月さんは、左の手袋を外した。
「どういうわけか、最初は一本だった黒い爪が広がっていきました。」
「左は、普通なんですね」
「はい。右手だけが、こんな状態で…。先ほど、お見せしたようにこの手だけは、あちらに連れていけるんです。」
「三日月さん、私きちんとこの目で見てきます。」
「はい、お願いします。」
「そして、ちゃんとオカルト記事ですが…。記事にします。」
「よろしくお願いします。それでは、一日目を始めましょう。準備は、よろしいですか?」
「はい、頑張って見てきます。」
「では、三笠千尋の人生を見てきてあげて下さい。」
「はい、わかりました。」
私は、ゆっくりと目を閉じる。
「では、いきます。」
そう言って、三日月さんは私の後頭部にゆっくりと手を当てる。
三日月さんから、漂う線香の香り
がフワッと舞う。
【ジョー】
【愛してる】
【ずっと、一緒にいたい】
【私なんかで、いいんですか?】
頭の中を可愛らしい女の人の声が、駆け抜けていく。
「では、いってらっしゃい」
三日月さんの声が、遥か遠くで聞こえた。
ドクン…ドクン…
ドクン…ドクン…
心臓の鼓動だけが、頭に響き渡った。
真っ白な丸い布の上を指した。
「はい」
「これから、見せるのは、三笠千尋さんです。調べていますよね?」
「自殺された方ですね。調べました。」
「はい、桂木丈助さんとお付き合いされていました。」
そう言って、三日月さんは黒い手袋を脱いで置いた。
「きちんと、宮部さんが見たままを書いてもらえますか?」
「はい」
「では、これを…」
「これは?」
「私の力が強すぎるので、こちらを持っていて下さい。」
私は、数珠を握らされる。
「これは、私が特別に作ったものです。」
黒、白、黄、赤、青、緑、オレンジ、透明…。
8色の入った数珠だ。
「あの、どんな風に見るのですか?さっきは、五木さんを外で見てる感じでした。」
「次は、宮部さんがその人の中に入ります。だから、心の中も全部見る事が出来ます。」
「男の人の中も入るのは、何か嫌ですね。」
私は、苦笑いを浮かべた。
「それでも、真実を見てきて下さい。そして、痛みを感じて下さい。もし、駄目な場合はこちらを」
そう言って、手に鈴を握らされた。
「宮部さんが、嫌だと思えば、こちらを身体が勝手に鳴らします。だから、嫌だと強く思って下さい。」
「どんな気持ちを感じるのでしょうか?」
「そうですね。私が、見せるものはその人が、一番幸せな時間から始まります。そこから、パラパラと雑誌を捲るように時間は進んでいきます。次に現れるのは、この神社か、寄贈された桜の木だと思います。今から、お見せする皆さんは、こちらか寄贈された桜の木に行っておられます。それは、過去に行ってるかもしれません。それから、ペラペラと雑誌を捲るようにまた進んでいきます。そして、最後に事件が起こる三日前に行きます。そこから、事件に向かって進んでいきます。」
「それって、殺されたり痛みを感じたりって事ですか?」
「そうですね。本人が感じていた気持ちは、全て宮部さんに流れ込みます。」
「怖いです」
「そう思ったら、強く帰りたいと念じてください。今から、行く世界では、宮部さんがその人になる世界です。痛みも苦しみも喜びも悲しみも、全ての感情が宮部さんに流れ込む。だから、無理だと思ったら強く念じて下さい。最初は、二つの人格を持っている感覚がしますが、すぐに一つになります。」
そう言うと三日月さんは、袖を捲る。
「それは…」
さっきは、気づかなかったけれど三日月さんの手の爪は真っ黒で、手の甲は痣のような赤色が広がってる。
三日月さんは、左の手袋を外した。
「どういうわけか、最初は一本だった黒い爪が広がっていきました。」
「左は、普通なんですね」
「はい。右手だけが、こんな状態で…。先ほど、お見せしたようにこの手だけは、あちらに連れていけるんです。」
「三日月さん、私きちんとこの目で見てきます。」
「はい、お願いします。」
「そして、ちゃんとオカルト記事ですが…。記事にします。」
「よろしくお願いします。それでは、一日目を始めましょう。準備は、よろしいですか?」
「はい、頑張って見てきます。」
「では、三笠千尋の人生を見てきてあげて下さい。」
「はい、わかりました。」
私は、ゆっくりと目を閉じる。
「では、いきます。」
そう言って、三日月さんは私の後頭部にゆっくりと手を当てる。
三日月さんから、漂う線香の香り
がフワッと舞う。
【ジョー】
【愛してる】
【ずっと、一緒にいたい】
【私なんかで、いいんですか?】
頭の中を可愛らしい女の人の声が、駆け抜けていく。
「では、いってらっしゃい」
三日月さんの声が、遥か遠くで聞こえた。
ドクン…ドクン…
ドクン…ドクン…
心臓の鼓動だけが、頭に響き渡った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる