5 / 19
先輩とのこれから…
しおりを挟む
「睫毛、長いんですね」
「ありがとう」
「先輩、また抱かせてくれるんですか?」
俺は、水を取って先輩に渡しながら言った。
「由紀斗でいいよ。」
「由紀斗さん、また、抱かせてくれますか?」
俺は、先輩を見つめる。
「構わない」
「奥さんと別れるからですか?」
俺も、水を飲む。
「そうだな。寂しいのかもな…。会社で、俺達夫婦が何て言われてるか知ってるだろ?市木」
「千尋でいいですよ。知りません。俺は、何も…」
わかっていたくせに、嘘をついた。
先輩は、起き上がってベッドに腰かけた。
「ポンコツだよ。部長が、進めてきた部長の親戚との縁談話を断って、俺は梨寿(りじゅ)と結婚したんだ。」
「いいじゃないですか、別に」
「ざまーみろだろ?部長の親戚は、今や4人の子供のお母さんだよ。」
そう言って、水を飲む。
先輩と奥さんは、計り知れない程の苦労を乗り越えてきたのが、その姿でわかるよ。
「俺は、そんな風に思いません」
先輩が、涙を拭う仕草をしたのがわかった。
「梨寿(りじゅ)も、まだ40だ。新しい人となら、子供を授かれるかもしれない。そう思うと別れてあげたいと思った。もう、苦しんで欲しくない。これからは、自分の幸せだけを考えて欲しい。」
そう言いながら、服を着ていく。
「由紀斗さんは、本当に奥さんを愛しているんですね」
「そうだな。梨寿(りじゅ)と過ごす時間は、とても幸せだよ。でも、子供に縛りつけられた日々を長い間おくった。申し訳なかったよ。すごく…。」
先輩は、そう言いながら涙を拭った。
「また、居酒屋行きますか?」
「ああ」
さっきまで俺に抱かれていたのが嘘みたいだ。
俺も、服を着る。
「シャワーはいります?」
「大丈夫だ。」
こんな風に思う程、追い詰められてる先輩を助ける事すら俺は、出来ない。
「行きましょうか」
「市木を何て呼べばいいだろうか?」
「千尋でいいです。」
「じゃあ、千尋で。」
俺は、出て行こうとする先輩の腕を引き寄せた。
「千尋?」
「由紀斗さん、今まで大変でしたね。」
「もっと大変な人もいるよ」
「そうかも知れません。でも、俺は由紀斗さんの苦しみを今知りました。二人で乗り越えた日々があったからこそ、奥さんの幸せを願っている気持ちが伝わってきました。」
抱き締めてあげる事しか出来なかった。
「千尋、ありがとう」
先輩の奥さんも、抱き締めてあげたいよ。
何で、こんな想いをしなくちゃいけないんだ。
先輩を離す。
「行こうか、千尋」
俺と先輩は、歩きだした。
先輩は、いい父親になれたと思う。
フロントに鍵を預けて、昨日の居酒屋に先輩と行く。
「千尋が、適当に頼んでくれ」
先輩は、そう言って笑った。
何故か、俺は、先輩と奥さんを守ってあげたいと思った。
「お疲れ様です。」
俺は、先輩と乾杯をする。
「由紀斗さんの奥さんは、何故パートを始めたんですか?」
俺は、枝豆を食べながら言う。
「子供を完全に諦めたんだと思う。だから、パートを始めたんだ。梨寿(りじゅ)は、小さな時の事故でね。足首の骨が駄目になってしまってね。右足を引きずっている。だから、働きに行かないと思い込んでいた。梨寿(りじゅ)が自分の元を去るわけがないと思い込んでいたんだ。自惚れていたんだな。」
「自信があっただけですよ。それだけ、愛されてる自信が…」
「どうだろうね。足が悪いから離れないって思っていただけだよ。」
「でも、好きな人が出来たと言われて驚いた。離婚を考えたと言うことは、その人と梨寿(りじゅ)はもうとっくにそういう中だ。俺も、千尋に抱かれたから梨寿(りじゅ)を責められない」
「わざとですよね?」
俺は、焼き鳥を食べながら先輩を見た。
「どういう意味だ?」
「奥さんだけが、悪くならないように俺に抱かれたんですよね?」
「そんな事はない」
「俺は、わかってます。だって、先輩はちゃんと奥さんを愛してる。」
俺は、先輩の指輪を見つめた。
10年間愛してる人を裏切るなんて、奥さんの為だって、わかってる。
「ありがとう」
「先輩、また抱かせてくれるんですか?」
俺は、水を取って先輩に渡しながら言った。
「由紀斗でいいよ。」
「由紀斗さん、また、抱かせてくれますか?」
俺は、先輩を見つめる。
「構わない」
「奥さんと別れるからですか?」
俺も、水を飲む。
「そうだな。寂しいのかもな…。会社で、俺達夫婦が何て言われてるか知ってるだろ?市木」
「千尋でいいですよ。知りません。俺は、何も…」
わかっていたくせに、嘘をついた。
先輩は、起き上がってベッドに腰かけた。
「ポンコツだよ。部長が、進めてきた部長の親戚との縁談話を断って、俺は梨寿(りじゅ)と結婚したんだ。」
「いいじゃないですか、別に」
「ざまーみろだろ?部長の親戚は、今や4人の子供のお母さんだよ。」
そう言って、水を飲む。
先輩と奥さんは、計り知れない程の苦労を乗り越えてきたのが、その姿でわかるよ。
「俺は、そんな風に思いません」
先輩が、涙を拭う仕草をしたのがわかった。
「梨寿(りじゅ)も、まだ40だ。新しい人となら、子供を授かれるかもしれない。そう思うと別れてあげたいと思った。もう、苦しんで欲しくない。これからは、自分の幸せだけを考えて欲しい。」
そう言いながら、服を着ていく。
「由紀斗さんは、本当に奥さんを愛しているんですね」
「そうだな。梨寿(りじゅ)と過ごす時間は、とても幸せだよ。でも、子供に縛りつけられた日々を長い間おくった。申し訳なかったよ。すごく…。」
先輩は、そう言いながら涙を拭った。
「また、居酒屋行きますか?」
「ああ」
さっきまで俺に抱かれていたのが嘘みたいだ。
俺も、服を着る。
「シャワーはいります?」
「大丈夫だ。」
こんな風に思う程、追い詰められてる先輩を助ける事すら俺は、出来ない。
「行きましょうか」
「市木を何て呼べばいいだろうか?」
「千尋でいいです。」
「じゃあ、千尋で。」
俺は、出て行こうとする先輩の腕を引き寄せた。
「千尋?」
「由紀斗さん、今まで大変でしたね。」
「もっと大変な人もいるよ」
「そうかも知れません。でも、俺は由紀斗さんの苦しみを今知りました。二人で乗り越えた日々があったからこそ、奥さんの幸せを願っている気持ちが伝わってきました。」
抱き締めてあげる事しか出来なかった。
「千尋、ありがとう」
先輩の奥さんも、抱き締めてあげたいよ。
何で、こんな想いをしなくちゃいけないんだ。
先輩を離す。
「行こうか、千尋」
俺と先輩は、歩きだした。
先輩は、いい父親になれたと思う。
フロントに鍵を預けて、昨日の居酒屋に先輩と行く。
「千尋が、適当に頼んでくれ」
先輩は、そう言って笑った。
何故か、俺は、先輩と奥さんを守ってあげたいと思った。
「お疲れ様です。」
俺は、先輩と乾杯をする。
「由紀斗さんの奥さんは、何故パートを始めたんですか?」
俺は、枝豆を食べながら言う。
「子供を完全に諦めたんだと思う。だから、パートを始めたんだ。梨寿(りじゅ)は、小さな時の事故でね。足首の骨が駄目になってしまってね。右足を引きずっている。だから、働きに行かないと思い込んでいた。梨寿(りじゅ)が自分の元を去るわけがないと思い込んでいたんだ。自惚れていたんだな。」
「自信があっただけですよ。それだけ、愛されてる自信が…」
「どうだろうね。足が悪いから離れないって思っていただけだよ。」
「でも、好きな人が出来たと言われて驚いた。離婚を考えたと言うことは、その人と梨寿(りじゅ)はもうとっくにそういう中だ。俺も、千尋に抱かれたから梨寿(りじゅ)を責められない」
「わざとですよね?」
俺は、焼き鳥を食べながら先輩を見た。
「どういう意味だ?」
「奥さんだけが、悪くならないように俺に抱かれたんですよね?」
「そんな事はない」
「俺は、わかってます。だって、先輩はちゃんと奥さんを愛してる。」
俺は、先輩の指輪を見つめた。
10年間愛してる人を裏切るなんて、奥さんの為だって、わかってる。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
愛してる。梨寿&真白
三愛 紫月 (さんあい しづき)
ライト文芸
こちらも、これから先も、愛してる。で、描けなかったお話を描いています。
三万文字以内の短編小説になります。
こちらは、真白と梨寿(りじゅ)のお話です。
始めに、これから先も愛してるをお読みいただいてからでお願いします。
これから先も、愛してる
↓
愛してる。真白&梨寿(りじゅ)
↓
愛してる。由紀斗&千尋
↓
鼓動の速さでわかる事
の順番になります。
小説家になろうでも、載せています。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
抱きたい・・・急に意欲的になる旦那をベッドの上で指導していたのは親友だった!?裏切りには裏切りを
白崎アイド
大衆娯楽
旦那の抱き方がいまいち下手で困っていると、親友に打ち明けた。
「そのうちうまくなるよ」と、親友が親身に悩みを聞いてくれたことで、私の気持ちは軽くなった。
しかし、その後の裏切り行為に怒りがこみ上げてきた私は、裏切りで仕返しをすることに。
ターゲットは旦那様
ガイア
ライト文芸
プロの殺し屋の千草は、ターゲットの男を殺しに岐阜に向かった。
岐阜に住んでいる母親には、ちゃんとした会社で働いていると嘘をついていたが、その母親が最近病院で仲良くなった人の息子とお見合いをしてほしいという。
そのお見合い相手がまさかのターゲット。千草はターゲットの懐に入り込むためにお見合いを承諾するが、ターゲットの男はどうやらかなりの変わり者っぽくて……?
「母ちゃんを安心させるために結婚するフリしくれ」
なんでターゲットと同棲しないといけないのよ……。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる