歪な気持ち~3つの恋~

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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蜜蜂とクマさん

クマさんに告げる

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卒業式の前日、私はクマさんに告白をしたくて待っていた。

「小野田先生、涙目だったよな」

「感じてたよな」

「その話し、何?」

10人の中に、笹部もいた。

「最低だね。」

「はあ?」

「気持ち悪くたって、声がでるんだよ。ビクッてするんだよ。体の防衛本能なんだよ。」

「はあ?愛梨に関係ないだろ?」

「関係ないよ。」

「あるよ。全員最低だよ」

「なんだよ。それ」

「笹部、ちょっと話したい」

「笹部だっていたんだぞ」

「笹部は、いいの」

私は、笹部を空き教室に連れてきた。

「紺野さん」

「笹部が、最近痩せてきたからなんか興味がわいた。私じゃ駄目かな?」

涙が、とまらなかった。

「ううん。付き合うよ。俺、紺野さんと…」

「嬉しい。明日は、一緒に帰ろうね」

「キスは、まだいいよ」

「ごめん。」

「じゃあ、俺、みんなと帰るから」

「うん」

凄く嬉しくて、ニヤケながら帰った。

「愛梨、なんか嬉しそうだな」

「やめて」

叔父さんに、腕を引っ張られた。

「愛梨、明日で卒業だな。どうだ、高校は女子高にしたか?」

「えっ?あっ、うん」

「叔父さんといるのに、他の男を考えるな」

「んんっ、んんっ、ハァハァ」

「どんどんエロくなってきたな」

「んんっ、っっ、ゃっゃっ」

「嫌じゃないだろ?」

叔父さんが、出ていった。

クマさんの番号を聞くのを忘れた。

笹部の声が、聞きたかった。

小野田先生の話しは、最低だった。

「先生、気持ち悪かっただろうな」

先生は、好きな人に綺麗にしてもらえたかな?

気持ち悪いのは、私もわかるよ。

6歳から、叔父さんの人形だった。

父親が、奈子姉ちゃんに悪戯した年齢。

私は、それだけでされているのだろうか?

クマさんに抱き締められたい。

綺麗にして欲しい。

「笹部、私を愛して」

ぬいぐるみを抱き締めた。

鈴音りおん君が、死んだ理由を私は知らない。

私が、殺した事しか聞いていない。

鈴音君は、どうして死んだの?

私が、あの日泣きながら話さなかったら今でも生きていたよね。

「愛梨、俺が何とかしてあげるから」

「鈴音君、いいの?」

「いいんだよ。気にするな。俺が、ちゃんと終わらしてやるから」

三日後、死んだ。

「愛梨、お前のせいで。鈴音が死んだんだ。わかるか?」

「わからない」

「わからせてやるよ、少しずつ」

「やっ、やっ、やめてー」

「叫んだって、誰もこないのは知ってるだろ?鈴音が、見つけたのはたまたまだ。もう、愛梨の救世主はいないよ。悠里だって、奈子の救世主をやめたんだよ。知ってるか?なぜか?だって、そんな事をしたら、自分が」

ガバッ…

「はぁ、はぁ、はぁ」

眠っていたみたいだった。

ガタガタと震えが止まらなかった。

頭の片隅に、まださっきの夢の破片が残っていた。

駄目、駄目、駄目。

もう、誰も死なせない。

「笹部を巻き込んじゃ駄目」

私は、明日クマさんと永遠のさよならをしようと決めた。

私の人生は、叔父さんが死ぬまで人形で生きてくの。

それが、この容姿に産まれた運命さだめなのだから…。


次の日、卒業式が無事に終わり、私は空き教室に、笹部を呼び出していた。

「紺野さん、卒業おめでとう」

「おめでとう、笹部」

「帰ろうか?」

手を掴もうとした、笹部の手をかわした。

「どうしたの?」

「笹部、やっぱり昨日のなかった事にして」

「なんで?」

「私、笹部を好きじゃないから」

「別にいいよ。好きじゃなくても」

笹部は、私に近づいてきた。

「駄目なの」

私の叫び声に、笹部はビックリしていた。

「何で、駄目なの?」

「ぁぁあああ。あーぁぁぁ」

「どうしたの?紺野さん。」

笹部が、抱き締めてくれる。

「わた、私、わたし、叔父さんにね」

全てを話してしまった。

鈴音君に言ったみたいに、全部話してしまった。

「今から行こう」

「えっ?どこに?」

「俺と暮らそう」

「馬鹿な事、言わないで。未成年なんだから」

「高校に行かない人だっているよ。だから、行こう」

笹部は、私の家にやってきた。

私の卒業式に参加していた私の家族は、いなかった。

叔父さんだけが居た。

「おかえり、愛梨」

叔父さんは、笹部を見た。

「何の用だ?」

「愛梨さんを解放してください」

「ふざけるな」

笹部君は、叔父さんに殴られ蹴られ続けた。

「やめてよ」

「うるさい、黙れ」

ちょうど帰宅した私の家族が、笹部を殴っている叔父さんに驚いていた。

「お願いします。愛梨さんを解放してください。ゴホッ、ゴホッ」

「うるさい、黙れ」

ドカッ、ドスッ

「お願いします。愛梨さんを解放してください」

「もう、やめてよ。やめて。笹部、もういいから」

「お願いします。愛梨さんを解放してください」

笹部は、そればかりを繰り返す。

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