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野蛮な君を愛してる

羨ましい

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中学二年生にあがっても、私は同じ事を繰り返して過ごした。

それは、夏休みに入る二日前の出来事だった。

私は、二年生になってから小野田先生をストーカーするようになっていた。

何故なら、小野田先生を#新田_にった__#君がずっと好きなのを知っていたから…。

少しでも、近づきたかった。

放課後の教室で、小野田先生と新田にった君と佐伯君を見つけた。

「花村君を利用するのは、やめなさい。」

「何で、そこまで言われなきゃいけないんだよ」

「お金をだしてもらったりしてるのも、他の生徒から聞いてるの。だから、そう言うのはやめなさい。」

「小野田先生、そんな言い方するなんて酷すぎない?」

佐伯君が、小野田先生を後ろから押さえつけた。

「やめなさい。離しなさい」

新田君は、先生の肩のあたりを噛んだ。

「いたー」

その声に、羽尾はお先生がやってきた。

佐伯君と新田君は、とっさに離れた。

「小野田先生、どうされましたか?」

「いえ、足をぶつけただけです。」

「それで、そんな大きな声を出したんですか」 

「すみません」

「保健室で、手当てしてもらって下さい。君達も帰りなさい」

「はい」

羽尾先生は、教室を出ていった。

「新田君、どういうつもりか知らないけれど、今度同じ事をしたら私は生徒でも新田君を許さないから」

「小野田先生にとって、俺は生徒?」

「当たり前です。花村君の事、利用するのは、本当にやめて。」

「あっそ」

新田君と佐伯君が出てきた。

「隆太、帰ろうぜ」

「先、帰って」

私は、教室に隠れた。

小野田先生が、出てきた。

肩を押さえていた。

白いハンカチに血がついていた。

「羨ましい」

ついボソッと口に出してしまった。

私は、新田君の世界にいれるなら、どんな役割でも構わない。

殴られる女でも、セフレでも、ブンブンと飛び回るハエでも…。

何でも構わなかった。

私は、教室を出た。

小野田先生に気を取られて、肝心の新田君を見失ってしまった。

教室を覗きながら歩くと、三つ目の教室で新田君を見つけた。

ガラガラ…

私は、新田君に近づいた。

「小野田先生に拒否されたぐらいで、新田君はそんな事をするんだね?」

私の言葉に、新田君は振り返った。

あの新田君が、泣いていた。

「誰だっけ?」

夢野琴子ゆめのことこ

「あー。同じクラスのやつだな」

「そうだよ」

「そんな嬉しいのかよ」

「嬉しいよ」

嬉しいに決まってる新田君の世界に入れたなんて。

「小野田先生って、お前見てたのかよ」

「見てたよ」

「全部か?」

「うん、全部」

「何で、見てんだよ」

「たまたま、近くの教室に居たからだよ。」

「俺を脅すのか?」

「脅すわけないじゃん。好きな人に噛みつきたくなる野蛮さは、誰もがもっている事だよ」

そう笑った私の顔を、新田君は、ジッーと見つめてきた。

「お前、化粧したらちょっとは、綺麗なんじゃねーの?」

「化粧かー。高校生になったら、やってみようかな」

「その方が、いいと思うよ」

新田君は、ようやく机の上から降りた。


私と新田君の距離が縮まった。

「内緒にしてくれるか?」

「何を?」

「今の」

「あー。新田君の世界が終わって、ここから飛び降りようとした事?」

「それ」

「小野田先生が、受け入れてくれると本気で思ってたの?」

「悪いかよ」

「大人は、肩を噛まれたぐらいでコントロールできないよ」

「そうみたいだな」

「彼女は?」

「今は、フリー」

新田君は、窓から外を見ている。

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