上 下
1 / 17
野蛮な君を愛してる

私の好きな人

しおりを挟む
私は、新田隆太にったりゅうたが大好きだった。

私の名前は、夢野琴子ゆめのことこ

「琴ちゃん、おはよう」

「おはよう」

私は、いわゆる傍観者だった。

恋愛も友達も、坂口君が小花さんに話しかけにいくのが凄いと思っていた。

彼女は、いじめられてるのは坂口君のせいだと私は感じていた。

赤池さんが、坂口君を好きな事にも気づいていた。

花村君が、小花さんを好きなのにも気づいていた。

私は、一年生の頃から人間観察をしていたから、誰が誰を好きなのかすぐにわかっていた。

私は、花村君に金魚の糞のようにピッタリと張り付いてる新田隆太(にったりゅうた)が好きだった。

原口芽唯沙はらぐちめいさが、佐伯勇二さえきゆうじを好きな事も知っていた。

新田にった君は、イケメンだけど頭がよくない。

だから、小野田先生を好きなのに好きじゃないフリをしているのを私は知ってる。

少しでも、花村君と新田君の話を聞きたくて、私は、原口芽唯沙と仲良くなった。

原口さんは、花村君の取り巻きの中の一人笹部国厚ささべくにあつと幼馴染みだった。

どちらかと言うと、熊に近いかな?

「なあー。新田。愛ちゃんとキスしたって?」

花村君が、新田君に話した。

「したした。愛ちゃんのファーストキスもらっちゃった。」

「新田と、花村っていつからダチなん?」

「小五からだっけ」

「新田の初めては、いつだった?」

「6年だよ。紫音は、小5だよな」

「今どき、そんなもんだろ」

「俺なんかまだ、キスもしてねーわ」

「愛ちゃん、飽きたら回すから」

私が、その話を聞いてると芽唯ちゃんは決まって私に話す。

「あんなゲス話聞いて楽しい?」

「うん、楽しいよ」

新田君の初めてになれなくたって構わない。

私は、新田君の話を聞いてるだけで幸せだから…。

「勇二、りさちゃんとどう?」

「次のデートで、やろうかな?って。」

「勇二の初めてっていつ?」

「中学あがる前、近所の姉ちゃんと」

「やべー。いいな」

「笹部もいつかできっから」

「りさちゃん、飽きたら回したる」

芽唯ちゃんは、立ち上がった。

私も仕方なくついていく。

「あいつら、やっぱり最低だよ」

「でも、襲ってるわけじゃないじゃない。ちゃんと女の子だって嫌なら拒否するよ。」

「ってかさ、琴ちゃんは嫌じゃないの?新田君、他の奴とやってるんだよ。」

「別に、嫌じゃないよ。」

「何で?」

「普通以下の私が、あんなイケメンと付き合えるなんてあり得ないからさー。話聞いてるだけで嬉しいよ。家に帰って、新田君で妄想してドラマ見るんだよ。それだけで、メシウマだから」

「メシウマって。琴ちゃん、おもしろすぎだから」

「芽唯ちゃんは?佐伯君の話、聞きたくなかった?」

「聞きたくなかったよ。でもさ、当たり前だよね。普通にやってるよね。キスだって、その先だって」

「当たり前だよ。思春期だよ。興味あるんだよ」

「非モテじゃないんだから、やってるよね」

「それは、そうだよ。」

芽唯ちゃんは、色つきリップを塗ってる。

「坂口君は、やってなさそうだよね。」

「確かに、やってなさそう。」

「あんなに、イケメンなのにね」

「前髪のせいで、イケメンが隠れてるけどね」

「私さ、そればっかりの猿みたいなんより、坂口君みたいに好きな人に寄り添って縫い物してる男子のがいいな」

「小花さんのもの縫ってるイメージしかないね」

「確かに、そう。坂口君は、小花さんが好きだよね。絶対。でもさ、小花さんって何でいじめられてるのかな?」

「絶対、話しかけるの禁止って紙回ってきたでしょ?」

「あれ、誰が回してきたのかな?」

「わかんないけど、関わりたくない。」

私達みたいなのも、いじめに加担してる人間だって事は自分でもわかってる。

でも、関わりたくなかった。

私の取り巻く世界を壊したくなかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3つの恋のお話。

三愛 紫月 (さんあい しづき)
恋愛
これは、3つの恋のお話。 こちらの主人公達は、菅野先生と関わっている生徒のお話と小野田先生と菅野先生のお話。 【そのキラキラがもどるまで…】君のキラキラが、もう一度見れるならどんな事をされたって、どんな事を言われたって、大丈夫だって私は信じていたんだ。 【君は君だよ。】 私の好きな君には、好きな人がいた。 自分を犠牲にする君を私はもう見たくない。 ねぇー。私を好きになってくれない? 小花蘭(おばならん)が、花村紫音(はなむらしおん)の病院に走り出した。 その裏で、動き出していたもう一つの恋の物語。 【同じ愛を抱くもの】 同じ境遇の人間は、付き合ってもうまくいかないと思っていた。 この人に出会うまでは…。 これは、小花蘭(おばならん)、花村紫音(はなむらしおん)、赤池里子(あかいけさとこ)、坂口斗真(さかぐちとうま)の恋の裏で、動きだしていた大人の恋のお話。 管野先生が、赤池里子(あかいけさとこ)と話した後のお話。 こちらから、先にお読みください。 6つの話を読むことで、あの時のみんなの気持ちがわかります。 ノベルアップ+、小説家なろうにも載せています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

大好きな人が義兄になりました♡

もか♡
恋愛
同級生の蓮也に2年間片想いをしている萌恋、勇気を振り絞って告白をしたが、結果は惨敗。 そんな日に不仲だった両親が離婚し、弟は母に、萌恋は父に引き取られた。 その後直ぐに父が再婚相手を連れてきて⎯⎯

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【完結】あなたに恋愛指南します

夏目若葉
恋愛
大手商社の受付で働く舞花(まいか)は、訪問客として週に一度必ず現れる和久井(わくい)という男性に恋心を寄せるようになった。 お近づきになりたいが、どうすればいいかわからない。 少しずつ距離が縮まっていくふたり。しかし和久井には忘れられない女性がいるような気配があって、それも気になり…… 純真女子の片想いストーリー 一途で素直な女 × 本気の恋を知らない男 ムズキュンです♪

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

処理中です...