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同じ愛を抱くもの

大嫌いな人

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道留みちる、ただいま」 

一希かずき、おかえり」

同じ境遇をもつもの同士は、うまく行かないって私は、貴方に会うまで、そう信じていたの。

私の名前は、小野田道留おのだみちる。この学校の音楽の教師をしている。

放課後、生徒相手に時間を使っている保健の先生の菅野一希かんのかずき先生に私は、話しかけた。

「管野先生、また、生徒のお世話ですか?」

「あっ、赤池が泣いていたので」

「そうですか」

私の学年の赤池里子あかいけさとこが泣いていたのだと言った。

管野先生は、坂口斗真さかぐちとうま君にとてもよく似ていた。

私は、二年生で初めて坂口君の担任を受け持ったのだ。

「小花さんは、またいじめられてますね」

管野先生は、歩きだした。

「そうですね」

「小野田先生は、この学校のルールに縛られすぎですよ。正義感が強いのに」

管野先生の笑顔に俯いた。

この学校には、特殊なルールがあった。
自分の受け持つクラス以外の生徒に関わらない事
例え、隣のクラスでいじめがあっても無視しろという話だった。

「私は、小花さんを助けてあげたかった。中学一年の頃からずっと…。」

「小野田先生のその正義感を羽尾先生は、嫌いですよ。だから、小花を小野田先生のクラスにしなかった。わかってます?俺は、聞いたから知ってますよ。」

「やはり、そうでしたか…」

「小野田先生、花村の取り巻きを止めるのをやめるべきでは?」

「何故ですか?」

「正義感が強いのは、いい事ですが…。貴女は、女性です。この鎖骨の傷。噛まれたんですよね?次は、貴女は確実に襲われますよ。誰もそれをとめてくれる人も助けてくれる人もいませんよ。」

「それでも、花村紫音はなむらしおん君の取り巻きの二人は、私のクラスの子です。私が、何をしたって文句は言われないはずです。」

管野先生は、私の言葉に呆れた顔をした。

「だったら、ちゃんとピルを飲んで、アフターピルを渡してくれる病院でも見つけておくべきですよ。」

「なっ、何を馬鹿な事を言ってるんですか。管野先生は、最低な思考の持ち主ですね」

「最低の思考ですか?貴女は、彼等の恐ろしさを知らないからそんな事が言えるんだ。」

睨み付けられた目に、恐怖を覚えた。

「もう、いいです。私は、きちんとお付き合いしてる人もいますし、結婚も視野に考えています。中学二年生の男子に興味をもつ性癖などありません。」

「貴女がなくても、向こうはどうでしょうかね?」

「管野先生は、本当は小花さんが好きなのではないですか?」

「どうして、そうなりますか?」

「彼女に必要以上に執着しているのは、先生ではありませんか?」

「そう言う小野田先生も、坂口に執着していますよね?坂口の事が好きなのではありませんか?」

「何を馬鹿げた事を言ってるんですか、もう結構です。」

「こちらも、話になりません」

私は、管野先生にイライラして帰宅した。

「おかえり」

「ただいま」

家に帰ると荒巻秀悟あらまきしゅうごが、来ていた。

「そろそろ、身を固めないとね」

「そうかもね」

「いつも以上に、今日は乗り気だね」

「そんな事はないよ。ご飯作るね」

「うん」

私は、キッチンでご飯を作る。

私は、もう37歳だ。

子供を産めない歳になるのをひたすら待っている。

同い年の彼と、付き合って7年になる。

そろそろ、子供は作らずにいたい事を告げるべきなのかも知れない。

私は、幼い頃から親の愛情を一身に受けて生きてきた。

それが、誰かの代用品である事に気づいたのは物心がついた時だった。

私には、10歳離れた姉が居たらしい。

産まれた頃には、姉の存在はなかった。

わずか、10歳ながらにして絶対音感を持っていた。

彼女が弾くピアノは、とても素晴らしかった。

ピアニストを目指していた母親は、彼女に心酔しきっていた。

彼女をピアニストにする事だけを目標に生きていた。

そして、彼女は不慮の事故で死んだ。

ピアノコンクールに向かう途中、対向車線をはみ出してきたトラックとぶつかり、祖父母と共に死んだ。

母は、お腹に私を宿していて、悪阻が激しくピアノコンクールに連れて行けなかった事をひどく嘆いた。

そして、「この子はいらない」と父親に泣き叫んだと叔母から聞いた。

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