642 / 646
新しい未来へ~互いを救ってくれた愛と共に…。~【凛と拓夢の話3】
さよなら……【凛と拓夢】
しおりを挟む
触れ合った指先が離れていく。これでもう本当に最後なのはわかってる。終わりに近づけば近づくほど、この手を手繰り寄せたくなる。凛は、精一杯笑ってくれていた。
「じゃあ、元気で」
「拓夢も……」
振り返れば二度と戻る事は出来ない。
「せーので進もうか?じゃなきゃ、俺。歩けないよ」
「私もだよ」
俺と凛は、お互いに見つめ合う。
『せーの』
一緒に言ってから、回れ右をした。
背中合わせに、まだ凛がいるのを感じる。
「じゃあ、また、いつか」
「うん。また、いつか」
歩き出したのが同時なのが、わかった。凛のヒールのカツカツという音だけが規則正しく聞こえている。振り返る事はしない。
振り返れば、二度と凛を手放せなくなる。
「凛、ありがとう」
「拓夢、ありがとう」
俺達の声が響いて重なり合う。音だけが、抱き合ってくれていた……。
俺は、泣きながら歩いて行く。
「帰ろうか!星村君」
「はい」
出た所で、相沢さんが待っていてくれた。
「凛は?」
「見てないよ。会場に戻った……」
相沢さんの言葉に膝の力が抜けて崩れ落ちそうになる。
「大丈夫か?星村君」
「すみません」
「絶望だろ?これ以上にないくらいの……」
「はい……」
今までの【さよなら】とは違う。重くて痛い【さよなら】だった。
「素敵な歌詞がかけるね。急いで、帰ろう」
「はい」
相沢さんは、俺を支えてくれて歩き出す。
身体中に力が入らない。
味わった事のない絶望。
俺、こっから本当に復活出来るのかな?
♡♡♡♡♡♡♡♡
拓夢に絡み付いていたいぐらいだった。今すぐに、拓夢と愛し合いたいぐらい。未来なんかなくたっていいと思えたなら、この結末はなかったのかな?
【せーの】で、背中合わせになった。
まだ、拓夢の温もりがあるのを感じる。
歩き出したのは、同時だった。
拓夢の歩く足音がかすかに聞こえてくる。
「凛、ありがとう」
拓夢の声が聞こえ、私も叫んだ。
声が、重なり合う。まるで、愛し合っていたあの頃のように……。
振り返ってはいけない事はわかっている。もう、戻る事は出来ないのだから……。
会場の入り口についた時、私は拓夢にバレないように見てしまった。
拓夢は、こっちを振り返る事なく出て行った。
胸が痛くて、息が出来ない。苦しくて、悲しくて堪らなかった。
私は、会場の扉を開ける。
「もうすぐ、終わりだって……」
龍ちゃんが扉の前で待っていてくれた。
「龍ちゃん……」
足の力が抜けて、私はふらついた。
「凛、選ばなかったんだね……」
私は、龍ちゃんの言葉に頷く。
「頑張ったね、凛」
龍ちゃんは、優しく私の頭を撫でてくれる。
未来なんかいらないと思えたら違ったかも知れない。
でも、今の私はまだそんな風には思えなかった。
「龍ちゃん……私、ズルいよね。ズルい人間だよね」
「人間なんて、みんなズルいんじゃないか?俺は、ズルい凛も好きだよ」
「龍ちゃん……」
まっつんさんと理沙ちゃんの二次会が終わった。最後に二人から、ささやかなお礼として、天使の羽根がついたスプーンが渡される。
「おめでとう、理沙ちゃん、まっつんさん」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
私と龍ちゃんは、二人に会釈をしてから離れた。
「じゃあ、元気で」
「拓夢も……」
振り返れば二度と戻る事は出来ない。
「せーので進もうか?じゃなきゃ、俺。歩けないよ」
「私もだよ」
俺と凛は、お互いに見つめ合う。
『せーの』
一緒に言ってから、回れ右をした。
背中合わせに、まだ凛がいるのを感じる。
「じゃあ、また、いつか」
「うん。また、いつか」
歩き出したのが同時なのが、わかった。凛のヒールのカツカツという音だけが規則正しく聞こえている。振り返る事はしない。
振り返れば、二度と凛を手放せなくなる。
「凛、ありがとう」
「拓夢、ありがとう」
俺達の声が響いて重なり合う。音だけが、抱き合ってくれていた……。
俺は、泣きながら歩いて行く。
「帰ろうか!星村君」
「はい」
出た所で、相沢さんが待っていてくれた。
「凛は?」
「見てないよ。会場に戻った……」
相沢さんの言葉に膝の力が抜けて崩れ落ちそうになる。
「大丈夫か?星村君」
「すみません」
「絶望だろ?これ以上にないくらいの……」
「はい……」
今までの【さよなら】とは違う。重くて痛い【さよなら】だった。
「素敵な歌詞がかけるね。急いで、帰ろう」
「はい」
相沢さんは、俺を支えてくれて歩き出す。
身体中に力が入らない。
味わった事のない絶望。
俺、こっから本当に復活出来るのかな?
♡♡♡♡♡♡♡♡
拓夢に絡み付いていたいぐらいだった。今すぐに、拓夢と愛し合いたいぐらい。未来なんかなくたっていいと思えたなら、この結末はなかったのかな?
【せーの】で、背中合わせになった。
まだ、拓夢の温もりがあるのを感じる。
歩き出したのは、同時だった。
拓夢の歩く足音がかすかに聞こえてくる。
「凛、ありがとう」
拓夢の声が聞こえ、私も叫んだ。
声が、重なり合う。まるで、愛し合っていたあの頃のように……。
振り返ってはいけない事はわかっている。もう、戻る事は出来ないのだから……。
会場の入り口についた時、私は拓夢にバレないように見てしまった。
拓夢は、こっちを振り返る事なく出て行った。
胸が痛くて、息が出来ない。苦しくて、悲しくて堪らなかった。
私は、会場の扉を開ける。
「もうすぐ、終わりだって……」
龍ちゃんが扉の前で待っていてくれた。
「龍ちゃん……」
足の力が抜けて、私はふらついた。
「凛、選ばなかったんだね……」
私は、龍ちゃんの言葉に頷く。
「頑張ったね、凛」
龍ちゃんは、優しく私の頭を撫でてくれる。
未来なんかいらないと思えたら違ったかも知れない。
でも、今の私はまだそんな風には思えなかった。
「龍ちゃん……私、ズルいよね。ズルい人間だよね」
「人間なんて、みんなズルいんじゃないか?俺は、ズルい凛も好きだよ」
「龍ちゃん……」
まっつんさんと理沙ちゃんの二次会が終わった。最後に二人から、ささやかなお礼として、天使の羽根がついたスプーンが渡される。
「おめでとう、理沙ちゃん、まっつんさん」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
私と龍ちゃんは、二人に会釈をしてから離れた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」


家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。


父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる