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新しい未来へ~互いを救ってくれた愛と共に…。~【凛と拓夢の話3】

電車の中【凛】

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駅に着くと龍ちゃんは、手を離して切符を買っている。
その姿を見つめていると、私の世界の日常が戻ってきたのを感じていた。

「はい、切符」

「ありがとう」

私は、龍ちゃんから切符を受け取った。改札を抜けて、ホームに降りると電車が止まっていた。

「祝福してるね」

私の言葉に龍ちゃんは、「そうだな」って笑って手を握ってくれた。

電車に乗り込むと暫くして扉が閉まった。

「ついたら、理沙ちゃんに会いに行ってくるね」

「うん」

「龍ちゃんは、待ってる?」

「待ってるよ!その辺で…」

「わかった」

私は、龍ちゃんを見つめながらニコニコしていた。

「何?」

「結婚式に行くと龍ちゃんの事、思い出しちゃって!」

「あー、それって結婚式の恥ずかしい思い出だよな?」

「恥ずかしいって、そんな事ないでしょ?」

私は、そう言いながら龍ちゃんを見つめる。

「結構、ガチガチだったからなー。手なんかこんな震えて」

龍ちゃんは、そう言いながら手を震わせる。

「指輪の交換で、指輪がねー」

私がそうやって言って笑うと龍ちゃんは、「神父さんの足元に転がってんだよな。あれは、恥ずかしかったな」って笑ってる。

「よかったよ!龍ちゃんらしくて…」

私がそう言って笑ったら、龍ちゃんは私を見つめながら…。

「俺らしいって!凛、それって駄目な奴って意味だったりする?」

龍ちゃんは、そう言って私を覗き込んだ。

「駄目なんかじゃないよ。龍ちゃんらしい。素敵な結婚式だったんだよ!みんなを笑顔にしてたじゃない」

私は、そう言って、龍ちゃんの手を握りしめる。

「そんな龍ちゃんだから、私。許されてるんだね…」

小さな声で、ポツリと言った私の言葉を龍ちゃんは聞き逃さなかった。

「何言ってんだよ。俺が、凛といたいんだよ!結婚式あげてから、ずっと俺に付き合ってもらってるだけだよ」

そう言って、龍ちゃんはくしゃくしゃって笑った。

「龍ちゃんって、やっぱり神様かな?」

私は、そう言って龍ちゃんを見つめた。

「神様って!人間だから…」

そう言って、龍ちゃんは笑ってる。

「龍ちゃん、お義母さんに何か言われたんだよね?私の事…」

「うん?言われてないよ」

「本当かなー?」

「凛には、両親の話してたもんな…」

「うん」

私は、龍ちゃんを見つめる。

「もっと、怒りの感情とかあったら違ったかな?」

龍ちゃんは、私を見つめてそう言った。

「龍ちゃんは、もっと喜怒哀楽出すべきじゃない?出したっていいんじゃない?」

私の言葉に龍ちゃんは、私を覗き込む。

「難しいよな。喜怒哀楽を表現するのってさ…。自分じゃわからないんだよ。人とポイントがずれてるのかな?俺は、あの日の凛の事怒りたいって思わなかったから…」

龍ちゃんは、どこまでいっても龍ちゃんだ。結婚式で、指輪を落としちゃった龍ちゃんから何一つ変わってない。

「私だけ変わっちゃったんだね……」

私は、流れる景色を見つめながら小さな声でそう言っていた。


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