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新しい未来へ~互いを救ってくれた愛と共に…。~【凛と拓夢の話3】

結婚式に向かう【凛】

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12月1日を迎えていた。

「龍ちゃん、ネクタイ」

「ありがとう」

「カフスとネクタイピンちゃんとつけなきゃ駄目だよ」

「わかった」

私は、龍ちゃんにそう言って笑った。

「この年になったら、結婚式より、お葬式が増えただろ?何か、新鮮だな!こうやって、凛と結婚式の準備するの」

そう言いながら、龍ちゃんはカフスボタンをはめている。

「確かに、そうよね!嬉しいね」

私は、龍ちゃんに笑いかける。

「あの日から、凛が笑顔になって俺も嬉しいよ!」

「あの日?」

「ああ!二人の為に、協力したいって言って、全部終わった後から…」

龍ちゃんは、そう言いながらネクタイを締めていた。

「不思議ともう絶望しないの。もっと早く消せたら、拓夢とこうはならなかったよね」

ネクタイピンをつけて、龍ちゃんは私の肩を優しく叩いた。

「必要な出会いだったんだから…。気にしちゃ駄目だって。世間が何て言ったって、俺が許すから」

そう言って、私の真珠のネックレスをつけてくれる。

「龍ちゃん、ありがとう」

私は、龍ちゃんに笑いかける。

「いいんだよ」

そう言って、龍ちゃんは頭を優しく撫でてくれた。

「もうすぐ出なきゃ!」

私は、お揃いの腕時計で時間を見て言った。

「急がなきゃだな」

龍ちゃんは、そう言ってジャケットを羽織った。私は、イヤリングをつける。

コートを羽織って家を出ると龍ちゃんは、鍵を閉める。

「行こうか」

「うん」

龍ちゃんは、手を握りしめてくれる。

「電車でよかったのか?」

「その方が、龍ちゃんもお酒飲めるでしょ?」

「確かに、そうだよな!でも、帰りはタクシーにしようか」

「そうだね」

龍ちゃんとこんな風に歩いてるのが私は楽しい。

「星村さんと話しなよ」

「あっ、うん」

「せっかくだから、ゆっくり話した方がいいよ!めったに会えないんだから…」

「そうだね」

龍ちゃんにそう言われて私は頷いていた。

「あのね、龍ちゃん」

「何?」

「私、ずっと龍ちゃんの優しさに甘えてばかりだよね」

「急にどうした?申し訳なく思った?」

私は、龍ちゃんの言葉に首を縦に振った。

「いいんじゃないか?優しくされる間は、優しくされちゃって…」

「龍ちゃん」

「もしかしたら、気が変わって!俺、明日から凛に優しくなくなるかも知れないだろ?」

「そんな日ないでしょ?」

私は、龍ちゃんを見つめて笑った。

「そんなのわからないだろ?俺自身もわからないんだから。凛には、もっとわからないよ」

「そうだよね…。龍ちゃんがわからない事、私にはわからないよね」

「ごめん、ごめん。そんなに落ち込んだ顔しないって!」

そう言って、龍ちゃんはニコニコ笑ってくれる。

    
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