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新しい未来へ~互いを救ってくれた愛と共に…。~【凛と拓夢の話3】

変わっていく日々…【凛】

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車を降りて、理沙ちゃんと歩き出す。

「凛ちゃん、出口に出れたんだね」

理沙ちゃんに顔を見つめられてそう言われた。

「そうかも知れないね。暗闇から抜け出せた気がする。理沙ちゃんも…」

「うん、抜けたよ。私も…」

そう言って、理沙ちゃんは笑った。

「優太が、もう一度プロポーズしてくれるって!」

「凄いね」

「次は、指輪してるからね」

「うんうん」

私は、理沙ちゃんにニコニコ笑った。

「凛ちゃん」

「何?」

「理沙の友達になってくれる?」

「今まで、友達じゃなかった?」

「なかった!だから、なって」

「勿論」

私は、理沙ちゃんに笑っていた。この日は、ニコニコしながら帰宅した。

「ただいまー」

「おかえり、良い事あったんだな」

「うん、あったよ」

私は、龍ちゃんに全部話した。

「ごめんね。龍ちゃんが友達やめたらって言った時は、やめれなくて…」

「あの時は、結婚してすぐだったから…。まだ、いろんな希望に溢れていたわけだから。仕方ないよ」

そう言って、龍ちゃんは私を抱き締めてくれる。

「凛が出口の見えないトンネルから抜け出せた事が、俺は嬉しいよ。もう二度と、絶望を味わう事がないと思うだけでホッとしてるんだ」

そう言って、龍ちゃんは私の背中を擦ってくれた。短いけれど濃かった私と拓夢の不純異性行為は、今日友達になるという約束を交わして幕を閉じた。
そうなれたのは、他でもない。今、私を抱き締めてくれている皆月龍次郎(このひと)のお陰だ。

「お風呂入ろうかな!」

「沸かしてきてあげるよ」

「ありがとう、龍ちゃん」

私と龍ちゃんの日々がまた始まる。

そして、私はSNSや妊娠に振り回される事のない日々を送り始めた。

「今日は、理沙ちゃんの式の打ち合わせだから…。晩御飯…」

「何か買って食べるよ」

「ごめんね、龍ちゃん」

「いいって!じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい、気をつけてね」

あれから、日々は移り変わり七夕の日にプロポーズを再び受けた理沙ちゃん。結婚式の打ち合わせをまっつんさんが出来ない事を聞いた。相沢さんと私が交代で打ち合わせに参加していた。そして、とうとう結婚式の三日前になったのだ。

「あー、緊張する」

「大丈夫だよ」

私と理沙ちゃんは、式場に向かっていた。

「もうすぐだよ」

「そうだよね」

「ドキドキする」

何だか私まで、ドキドキが止まらなかった。

「本当に、凛ちゃんと相沢さんには感謝してます」

「そんなそんな…」

私は、理沙ちゃんにそう言って笑った。

あれから、私は、無名のバンドのPVに数回出演したりした。そして、理沙ちゃんから拓夢が元気でやってる事を聞いていた。
私は、最後に拓夢と話して以来、絶望する事がなくなった。きっと、全てを捨てた事がよかったのだと思う。
見ないでいいものを見ない勇気を拓夢が与えてくれた。絶望を拭ってくれたのが、拓夢でよかったと本当に思っている。

最後に拓夢と交わした約束の日まで、残り三日…。私は、拓夢に再会して何を話そうと今からドキドキしていた。

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