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新しい未来へ~互いを救ってくれた愛と共に…。~【凛と拓夢の話3】

帰宅【拓夢】

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俺は、部屋に入ると家具に触れていた。

「いっきに生活感だな」

貴重品と服しかなかったこの家にベットや洗濯機や冷蔵庫や棚やソファーやダイニングなどがやってきたのだ。

「前の家よりリビング広いからダイニングとソファーあっても圧迫感少ないな」

俺は、あの日凛とキスをしたソファーにコートのまま横になった。

「凛……」

別れたくはなかったけど…。
それは、仕方のない事で…。
運命だったと思うだけで、心(ここ)が救われる気がした。

「はあー」

大きな溜め息をついてから、スマホを取り出した。

「連絡なんかあるわけないよな」

俺は、動画を開いて再生する。

「楽しかったなー」

最後の数日を動画にいくつか撮ったのを見ていた。

【凛、ほら、笑って】

【えー。スッピン】

【関係ないって】

【はい】

俺は、動画を見ながら笑っていた。

「俺やっぱり凛としたかったのかもなー」

キスをした二人の動画を見つめながら呟いていた。

「でも、出来なかったんだよな」

俺は、そう言って動画を止めた。

「絶望を拭えなかった時が怖くて出来なかったんだよな」

俺は、ソファーから起き上がってコートを脱いだ。

もしも、拭えなかった時……。

俺達は、もう二度と会う事がないとハッキリわかってしまったから俺は出来なかった。

俺は、洗面所に行く。

「洗濯機着てて助かるな」

お風呂を洗って沸かしてからキッチンに戻った。

「ズルいよなー。俺」

俺は、そう言って冷蔵庫を開ける。

相沢さんが、飲み物と調味料をいれてくれていた。調味料は、管理人さんがクーラーボックスに入れてくれたんだな。食材は、前の日に使いきれていてよかったよ。

「この味噌なんかあん時からあるやつだな」

凛がスーパーで味噌を落としそうになった日を俺は思い出していた。俺、やっぱり凛を愛してるよ。

相沢さんは、誰かを見つけられるって話をしていたけど…。

俺は、いらないよ。そんな誰か…。

【もうすぐ、お風呂が沸きます】

俺は、その音に水を飲んでお風呂に向かった。この音だけは、どこも同じだな。

服を脱ぎ終わるとお風呂は沸いた。俺は、洗濯機に洗濯物を入れてから風呂に入る。

体を流して湯船に浸かる。

「もう、恋愛はこりごりだな」

俺は、風呂のお湯を掬いながら呟いた。

指先からお湯がすり抜けて湯船に落ちる。

一人じゃすぐに溢(こぼ)れてしまうけど、二人だったらこの手に残せていた。

「あっ!歌詞になりそう」

ふと思い付いた言葉が歌詞になりそうだと思った。

「書くかなー」

書いて、書いて、書いて、兎に角、書き続けて俺は前に進んで行くしかないと思った。
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