591 / 646
エピローグ~月と星の交わる場所へ~【凛と拓夢の話2】
嫌いにならなくて…【凛】
しおりを挟む
「お風呂沸かしたよ」
「ありがとう」
「お皿洗うよ!」
「龍ちゃん、もう休んで!明日、仕事でしょ?」
「もうこんな時間か…」
私の言葉に龍ちゃんは、時計を見つめる。時刻は、一時半を回っていた。
「カップ洗ったら、休むよ!ゆっくりお風呂浸かりな」
「うん、ありがとう」
龍ちゃんは、マグカップを取ってキッチンに持って行く。ずっと、視界がボヤボヤしていた。拓夢との日々を過ごすまで、私の視界は膜がはったみたいだった。カチャカチャと音を立てながら、龍ちゃんがお皿を洗っていた。この日常(せかい)は望んでいないとこの日常(せかい)は、嫌だと私はどれだけ思っていたのかな…。
【もうすぐ、お風呂が沸きます】
そのアナウンスが聞こえて、私はキッチンに行った。
「龍ちゃん、お水飲んだら入るね」
「うん」
私は、コップにお水を入れて飲んだ。
「おやすみ」
「ああ、歯磨いたら寝るよ」
「うん、じゃあお風呂に行くね」
私は、コップを置いて、お風呂に向かった。洗面所を開けて、服を脱いだ。
「入浴剤入れよう」
お気に入りのローズの香りの入浴剤を取り出した。お風呂場に行って、入浴剤を湯船にいれる。
「相変わらずおばさんだね」
鏡に映る姿を見つめながら呟いた。シャワーを捻ってお湯が出るまで待ってから体をさっと流した。
ピンク色に染まった湯船にチャプンと浸かった。
「はぁー。気持ちいい」
この五日間で、心の奥まで燃え尽きたのを感じた。
「炭を通り越して灰になっちゃったのかもね」
私は、湯船のお湯を掬い上げながら言った。
もう、この心にメラメラと滾るような火がつかないのがわかってしまった。
「もしも、拓夢に抱かれていたら…。嫌いになってたかも知れないね」
両手でパシャンとわざとお湯を飛ばす。
「嫌いにならなくてよかった」
私は、そう言ってまたお湯を掬い上げる。
もしも、あの瞬間(とき)拓夢に抱かれて…。
絶望を拭えなかった時、私はきっと拓夢を嫌いになっていた。ううん。失望したかも知れない。そうならなくて良かったと心の底から思っていた。
私は、唇をゆっくりなぞる。
「一瞬で灰になる程、燃えちゃった」
涙がポトリと湯船に落ちて波紋を作った。
龍ちゃんは、キャンドルみたいな炎を与えていた。いっきに体を暖めはしなくて、じんわりゆっくり染みてくようなものだった。だから、気づかなかったんだよね。
「あんなに愛されていたのに、気づかなかった。私、龍ちゃんの悪い所ばっかりに目がいってたんだよね」
私は、そう言ってまたパシャンと両手でわざとお湯を飛ばした。
拓夢に出会い、拓夢に触れて、拓夢に抱かれた。だからこそ、気づけた。龍ちゃんの愛…
「このまま、一緒にいるだけだったら、私、何も気づかなかった」
私は、ピンク色のお湯を両手で掬い上げる。
「気づかないまま、この日常(せかい)は望んでない。私は、二人で生きたくないって思い続けていたんだよね」
指の隙間から、少しずつお湯が落ちていく。
こんなに、龍ちゃんを求める事もきっとなかったんだよね。
「ありがとう」
「お皿洗うよ!」
「龍ちゃん、もう休んで!明日、仕事でしょ?」
「もうこんな時間か…」
私の言葉に龍ちゃんは、時計を見つめる。時刻は、一時半を回っていた。
「カップ洗ったら、休むよ!ゆっくりお風呂浸かりな」
「うん、ありがとう」
龍ちゃんは、マグカップを取ってキッチンに持って行く。ずっと、視界がボヤボヤしていた。拓夢との日々を過ごすまで、私の視界は膜がはったみたいだった。カチャカチャと音を立てながら、龍ちゃんがお皿を洗っていた。この日常(せかい)は望んでいないとこの日常(せかい)は、嫌だと私はどれだけ思っていたのかな…。
【もうすぐ、お風呂が沸きます】
そのアナウンスが聞こえて、私はキッチンに行った。
「龍ちゃん、お水飲んだら入るね」
「うん」
私は、コップにお水を入れて飲んだ。
「おやすみ」
「ああ、歯磨いたら寝るよ」
「うん、じゃあお風呂に行くね」
私は、コップを置いて、お風呂に向かった。洗面所を開けて、服を脱いだ。
「入浴剤入れよう」
お気に入りのローズの香りの入浴剤を取り出した。お風呂場に行って、入浴剤を湯船にいれる。
「相変わらずおばさんだね」
鏡に映る姿を見つめながら呟いた。シャワーを捻ってお湯が出るまで待ってから体をさっと流した。
ピンク色に染まった湯船にチャプンと浸かった。
「はぁー。気持ちいい」
この五日間で、心の奥まで燃え尽きたのを感じた。
「炭を通り越して灰になっちゃったのかもね」
私は、湯船のお湯を掬い上げながら言った。
もう、この心にメラメラと滾るような火がつかないのがわかってしまった。
「もしも、拓夢に抱かれていたら…。嫌いになってたかも知れないね」
両手でパシャンとわざとお湯を飛ばす。
「嫌いにならなくてよかった」
私は、そう言ってまたお湯を掬い上げる。
もしも、あの瞬間(とき)拓夢に抱かれて…。
絶望を拭えなかった時、私はきっと拓夢を嫌いになっていた。ううん。失望したかも知れない。そうならなくて良かったと心の底から思っていた。
私は、唇をゆっくりなぞる。
「一瞬で灰になる程、燃えちゃった」
涙がポトリと湯船に落ちて波紋を作った。
龍ちゃんは、キャンドルみたいな炎を与えていた。いっきに体を暖めはしなくて、じんわりゆっくり染みてくようなものだった。だから、気づかなかったんだよね。
「あんなに愛されていたのに、気づかなかった。私、龍ちゃんの悪い所ばっかりに目がいってたんだよね」
私は、そう言ってまたパシャンと両手でわざとお湯を飛ばした。
拓夢に出会い、拓夢に触れて、拓夢に抱かれた。だからこそ、気づけた。龍ちゃんの愛…
「このまま、一緒にいるだけだったら、私、何も気づかなかった」
私は、ピンク色のお湯を両手で掬い上げる。
「気づかないまま、この日常(せかい)は望んでない。私は、二人で生きたくないって思い続けていたんだよね」
指の隙間から、少しずつお湯が落ちていく。
こんなに、龍ちゃんを求める事もきっとなかったんだよね。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

[完]出来損ない王妃が死体置き場に捨てられるなんて、あまりにも雑で乱暴です
小葉石
恋愛
国の周囲を他国に囲まれたガーナードには、かつて聖女が降臨したという伝承が残る。それを裏付ける様に聖女の血を引くと言われている貴族には時折不思議な癒しの力を持った子供達が生まれている。
ガーナードは他国へこの子供達を嫁がせることによって聖女の国としての威厳を保ち周辺国からの侵略を許してこなかった。
各国が虎視眈々とガーナードの侵略を図ろうとする中、かつて無いほどの聖女の力を秘めた娘が侯爵家に生まれる。ガーナード王家はこの娘、フィスティアを皇太子ルワンの皇太子妃として城に迎え王妃とする。ガーナード国王家の安泰を恐れる周辺国から執拗に揺さぶりをかけられ戦果が激化。国王となったルワンの側近であり親友であるラートが戦場から重傷を負って王城へ帰還。フィスティアの聖女としての力をルワンは期待するが、フィスティアはラートを癒すことができず、ラートは死亡…親友を亡くした事と聖女の力を謀った事に激怒し、フィスティアを王妃の座から下ろして、多くの戦士たちが運ばれて来る死体置き場へと放り込む。
死体の中で絶望に喘ぐフィスティアだが、そこでこその聖女たる力をフィスティアは発揮し始める。
王の逆鱗に触れない様に、身を隠しつつ死体置き場で働くフィスティアの前に、ある日何とかつての夫であり、ガーナード国国王ルワン・ガーナードの死体が投げ込まれる事になった……………!
*グロテスクな描写はありませんので安心してください。しかし、死体と言う表現が多々あるかと思いますので苦手な方はご遠慮くださいます様によろしくお願いします。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる