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エピローグ~月と星の交わる場所へ~【凛と拓夢の話2】
今は、無理かも…【拓夢】
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「今は、無理かも知れないけど…。いつか必ず現れるよ」
相沢さんは、そう言ってコーヒーを飲み干した。
「じゃあ、帰るよ!長いしたら悪いから」
「相沢さん」
立ち上がろうとする相沢さんに俺は声をかけた。
「何?」
「もしも、デビューしなかったら俺は凛との関係を断ち切らなかったと思います」
「そう」
相沢さんは、気にしていない様子だった。
「駄目な事は、わかってます」
俺は、そう言って目を伏せた。
「最初から既婚者だってわかっていながら惹かれたんだよね?それは、お互いの絶望を拭う為に…。でもさ、それって一生一緒にいれる保証はないだろ?今、断ち切ってなくても…。いずれは、同じ事になったわけだよ!一年も経っていない今だから無理矢理でも断ち切れたわけだよね。一年後だったら、断ち切れていなかったじゃないかな?もう一年、もう一回、そうやって先伸ばしにし続けたんじゃない」
相沢さんは、そう言って立ち上がった。
「何が言いたいかわからないよね。俺は、星村君が凛さんと別れる事になったのが今でよかったんじゃないかって思ってる」
相沢さんの言葉に俺は顔を上げた。
「たくさん泣けばいい。その苦しみや悲しさを歌詞に書きなぐればいいんだ。星村君には、それが出来るんだから…」
そう言って、相沢さんは俺に近づいて肩をポンポンと叩いた。
「相沢さん…俺…」
迷惑をかけているのがわかっていた。相沢さんは、その気持ちに気づいたように話す。
「星村君は、そのままいな!他の事は、俺が何とかする。だから、周りの雑音なんか気にしなくていい。どんな事を言われても、星村君の気持ちが正しいものだったなら…。説明する必要も言い訳する必要も嘘をつく必要もないよ!」
「相沢さん、迷惑ばかりかけてすみません」
俺は、相沢さんに頭を下げた。
「迷惑だと思っていたら、とっくに解雇してるよ!心配しなくて大丈夫。俺が、何とかする。だから、安心して欲しい」
相沢さんの言葉に俺は「はい」と小さな声で言っていた。
「今日は、お酒でも飲みながらたくさん泣いたらいいよ。じゃあ、俺は仕事が残ってるから帰るよ」
「はい」
相沢さんは、そう言って玄関に向かった。俺も立ち上がって後ろをついていく。
「じゃあね!また、明日」
「はい」
「中途半端でもいいから、今の気持ちを忘れないようにメモしておきなよ」
そう言って、相沢さんは笑った。
「わかりました」
「じゃあね!おやすみ」
「はい、気をつけて」
俺は、相沢さんに深々と頭を下げる。
相沢さんは、コートをさっと羽織って出て行った。
そうだよ!俺は、歌手なんだ。玄関の鍵を閉めてバタバタとキッチンに戻る。鞄の中から作詞用のノートを取り出した。今しかないこの気持ちを忘れないように書き記していく。
相沢さんは、そう言ってコーヒーを飲み干した。
「じゃあ、帰るよ!長いしたら悪いから」
「相沢さん」
立ち上がろうとする相沢さんに俺は声をかけた。
「何?」
「もしも、デビューしなかったら俺は凛との関係を断ち切らなかったと思います」
「そう」
相沢さんは、気にしていない様子だった。
「駄目な事は、わかってます」
俺は、そう言って目を伏せた。
「最初から既婚者だってわかっていながら惹かれたんだよね?それは、お互いの絶望を拭う為に…。でもさ、それって一生一緒にいれる保証はないだろ?今、断ち切ってなくても…。いずれは、同じ事になったわけだよ!一年も経っていない今だから無理矢理でも断ち切れたわけだよね。一年後だったら、断ち切れていなかったじゃないかな?もう一年、もう一回、そうやって先伸ばしにし続けたんじゃない」
相沢さんは、そう言って立ち上がった。
「何が言いたいかわからないよね。俺は、星村君が凛さんと別れる事になったのが今でよかったんじゃないかって思ってる」
相沢さんの言葉に俺は顔を上げた。
「たくさん泣けばいい。その苦しみや悲しさを歌詞に書きなぐればいいんだ。星村君には、それが出来るんだから…」
そう言って、相沢さんは俺に近づいて肩をポンポンと叩いた。
「相沢さん…俺…」
迷惑をかけているのがわかっていた。相沢さんは、その気持ちに気づいたように話す。
「星村君は、そのままいな!他の事は、俺が何とかする。だから、周りの雑音なんか気にしなくていい。どんな事を言われても、星村君の気持ちが正しいものだったなら…。説明する必要も言い訳する必要も嘘をつく必要もないよ!」
「相沢さん、迷惑ばかりかけてすみません」
俺は、相沢さんに頭を下げた。
「迷惑だと思っていたら、とっくに解雇してるよ!心配しなくて大丈夫。俺が、何とかする。だから、安心して欲しい」
相沢さんの言葉に俺は「はい」と小さな声で言っていた。
「今日は、お酒でも飲みながらたくさん泣いたらいいよ。じゃあ、俺は仕事が残ってるから帰るよ」
「はい」
相沢さんは、そう言って玄関に向かった。俺も立ち上がって後ろをついていく。
「じゃあね!また、明日」
「はい」
「中途半端でもいいから、今の気持ちを忘れないようにメモしておきなよ」
そう言って、相沢さんは笑った。
「わかりました」
「じゃあね!おやすみ」
「はい、気をつけて」
俺は、相沢さんに深々と頭を下げる。
相沢さんは、コートをさっと羽織って出て行った。
そうだよ!俺は、歌手なんだ。玄関の鍵を閉めてバタバタとキッチンに戻る。鞄の中から作詞用のノートを取り出した。今しかないこの気持ちを忘れないように書き記していく。
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