上 下
587 / 646
エピローグ~月と星の交わる場所へ~【凛と拓夢の話2】

相沢さんと話をする【拓夢】

しおりを挟む
俺は、立ち上がって引きずるようにリビングに向かった。

「疲れた」

さっきまで、キスをしていたソファーに寝転がった。

「凛……」

愛してるよりもっと強い気持ち。だけど、俺の愛は皆月龍次郎(あのひと)を越えはしない。わかってる、わかってるけど…。
それが、歯痒くて堪らない。

「くそ、くそ、くそー」

俺は、ソファーの背もたれを殴り続けた。
涙がぼとぼとと流れてくる。俺は、子供(がき)だって思い知った。

皆月龍次郎(あのひと)が凛に連絡をしなかったのは、きっと凛を信頼してたからだよな。
それ以外に…。

ピンポーン

インターホンの音がして俺は起き上がった。

「はい」

『相沢です』

「待って下さい」

俺は、そう言って鍵を開けに行く。

「コート着たままだった?」

「ああ。はい」

「お邪魔するね」

「どうぞ」

相沢さんは、俺の家に上がる。

「凛さん、ちゃんと送ってきたから」

「ありがとうございます」

「最後までしなかったんだね」

「あっ、凛に聞きましたか…」

「本当は、したかったんじゃない?」

相沢さんは、玄関の鍵をかけてからコートを脱いだ。

「あっ、いや」

「もう、凛さんの絶望を拭えなかったんだね」

相沢さんは、そう言って俺の後ろをついて歩いてくる。

「コーヒーいれますね」

「ありがとう」

俺は、相沢さんを無視するようにそう言った。

「座って下さい」

「ありがとう」

相沢さんは、ダイニングテーブルに腰をかける。俺は、キッチンでお湯を沸かした。

「荷物、纏めたんだね」

相沢さんは、周囲にある段ボールを見てそう言った。

「はい!明日、業者が来ます」

「もう、ここは手放すの?」

そう言いながら、相沢さんは鞄から何かを出していた。

「そうですね」

俺は、そう言ってから2つのマグカップにドリップコーヒーを引っ掻けてから、沸いたお湯を注いだ。

「ブラックでよかったですか?」

「大丈夫」

「わかりました」

ドリップが終わるのを確認してから、俺は相沢さんにコーヒーを渡した。

「ありがとう」

相沢さんは、そう言ってコーヒーを飲んだ。

「あの、話って?」

「あ、ああ!さっきの週刊誌の事なんだ」

相沢さんは、そう言ってタブレットを差し出してきた。

「まっつんから聞いたんですが、まっつんのお母さんがって…」

「どうもそうらしいね。それだけじゃないんだけどね」

「どういう事ですか?」

「SNOWROSEを潰したい人達がいるって事だよ」

そう言って、相沢さんは眉間に皺を寄せながらコーヒーを飲んでいた。

「さっきの話だけど、凛さんの絶望を拭えなくなったんだろ?」

俺は、何も言わずに目を伏せた。

「前に話したよね!俺も不倫してたって」

そう言って、相沢さんはタブレットを鞄に直していた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...