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エピローグ~月と星の交わる場所へ~【凛と拓夢の話2】
さよならはしないよ【凛】
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「この時間を一生忘れないから」
「私もだよ」
「凛、もう苦しまないで…。もしも、苦しむなら俺と…」
私は、拓夢から離れてキスをした。それ以上の言葉は言われたくなかった。
「凛」
「最初から決めてたのに、最終日に揺らいだら駄目だよ」
私の言葉に拓夢は笑った。
「だよな!よくないな!」
そう言いながら拓夢は泣いていた。私は、拓夢の頬の涙を拭った。
「最後に一緒に晩御飯食べよう」
「うん」
「手伝うよ」
「今日はね、ロールキャベツだよ」
「うまそうだな」
そう言って、手を繋ぎながらキッチンに一緒に行く。
手を洗って、キャベツを拓夢に捲ってもらう。龍ちゃんと違って拓夢はやっぱり器用だった。
「結構、難しいな」
「初めて?」
「キャベツ捲るのは、初めてだよ」
「凄く上手いよ」
「本当か?」
拓夢は、そう言いながら喜んでいた。
「6枚捲れたら、綺麗に洗ってからお鍋で煮込んでくれる?」
「わかった」
拓夢は、キャベツの葉を捲り終わって一枚一枚丁寧に洗ってからお鍋の中に入れて火にかけてくれた。
「ロールキャベツ、一人でも作りたいけど。この残ったキャベツ見たらちょっと考えちゃうな」
拓夢は、一玉のキャベツの残りを見つめながら言っていた。
「キャベツって色々食べ方あるよ!ペロッと食べれちゃうよ」
「そうなの?」
「うん」
私は、玉ねぎをみじん切りにする。
「ハンバーグ用に買った肉のあまり?」
「そうだよ」
ボールに玉ねぎをいれてひき肉と混ぜる。
「キャベツのレシピ教えてよ!俺、これ食べなきゃだろ?」
そう言って拓夢は、笑った。
「後で、紙に書いてあげようか?」
「いや、メッセージで充分だよ」
「わかった」
話しながら、ロールキャベツを作った。出来上がって、向かい合わせで『いただきます』をして食べた。時間って何でこんなに早く過ぎちゃうのかな。
時刻は、九時を回っていた。
「お皿、最後に一緒に洗う」
「うん」
拓夢は、後ろから抱き締めてくれてお皿を洗う。
「時々、俺にこうされたの思い出してよ」
「うん」
「俺も思い出すから」
「うん」
拓夢ともっと一緒に過ごしたかった。だけど、もっとを私は望めなかった。
カチャ…。考えてるうちに最後のお皿を流し終わった。
「終わっちゃったな」
「うん」
私達のさよならは、近づいている。
「凛」
そう言って、拓夢は私をクルリと自分の方へ向けた。
「拓夢」
泣かないって決めたのに、私は泣いていた。
「泣かないで」
拓夢は、私の涙を拭ってくれる。
「さよならって言わないから…」
私の言葉に拓夢は、うんって頷いてくれた。
「お別れじゃないからね」
「わかってるよ、凛」
拓夢も泣いてる。ゆっくりと優しいキスがやってくる。重なる唇。互いを欲しい気持ちを我慢しながら、何度も何度もキスを交わした。
「身体中に拓夢を刻み付けたかった、あの日みたいに…」
「俺もだよ、凛」
私は、拓夢にそう言って笑った。
「でも、このまま離れる方が拓夢は私の中で一生残ると思う」
「そうだな」
「あの時、最後に抱かれたかったって思いたい」
「俺も最後に抱きたかったって思い続けたい」
私達は、最後まで泣きながらキスをし続けていた。
「私もだよ」
「凛、もう苦しまないで…。もしも、苦しむなら俺と…」
私は、拓夢から離れてキスをした。それ以上の言葉は言われたくなかった。
「凛」
「最初から決めてたのに、最終日に揺らいだら駄目だよ」
私の言葉に拓夢は笑った。
「だよな!よくないな!」
そう言いながら拓夢は泣いていた。私は、拓夢の頬の涙を拭った。
「最後に一緒に晩御飯食べよう」
「うん」
「手伝うよ」
「今日はね、ロールキャベツだよ」
「うまそうだな」
そう言って、手を繋ぎながらキッチンに一緒に行く。
手を洗って、キャベツを拓夢に捲ってもらう。龍ちゃんと違って拓夢はやっぱり器用だった。
「結構、難しいな」
「初めて?」
「キャベツ捲るのは、初めてだよ」
「凄く上手いよ」
「本当か?」
拓夢は、そう言いながら喜んでいた。
「6枚捲れたら、綺麗に洗ってからお鍋で煮込んでくれる?」
「わかった」
拓夢は、キャベツの葉を捲り終わって一枚一枚丁寧に洗ってからお鍋の中に入れて火にかけてくれた。
「ロールキャベツ、一人でも作りたいけど。この残ったキャベツ見たらちょっと考えちゃうな」
拓夢は、一玉のキャベツの残りを見つめながら言っていた。
「キャベツって色々食べ方あるよ!ペロッと食べれちゃうよ」
「そうなの?」
「うん」
私は、玉ねぎをみじん切りにする。
「ハンバーグ用に買った肉のあまり?」
「そうだよ」
ボールに玉ねぎをいれてひき肉と混ぜる。
「キャベツのレシピ教えてよ!俺、これ食べなきゃだろ?」
そう言って拓夢は、笑った。
「後で、紙に書いてあげようか?」
「いや、メッセージで充分だよ」
「わかった」
話しながら、ロールキャベツを作った。出来上がって、向かい合わせで『いただきます』をして食べた。時間って何でこんなに早く過ぎちゃうのかな。
時刻は、九時を回っていた。
「お皿、最後に一緒に洗う」
「うん」
拓夢は、後ろから抱き締めてくれてお皿を洗う。
「時々、俺にこうされたの思い出してよ」
「うん」
「俺も思い出すから」
「うん」
拓夢ともっと一緒に過ごしたかった。だけど、もっとを私は望めなかった。
カチャ…。考えてるうちに最後のお皿を流し終わった。
「終わっちゃったな」
「うん」
私達のさよならは、近づいている。
「凛」
そう言って、拓夢は私をクルリと自分の方へ向けた。
「拓夢」
泣かないって決めたのに、私は泣いていた。
「泣かないで」
拓夢は、私の涙を拭ってくれる。
「さよならって言わないから…」
私の言葉に拓夢は、うんって頷いてくれた。
「お別れじゃないからね」
「わかってるよ、凛」
拓夢も泣いてる。ゆっくりと優しいキスがやってくる。重なる唇。互いを欲しい気持ちを我慢しながら、何度も何度もキスを交わした。
「身体中に拓夢を刻み付けたかった、あの日みたいに…」
「俺もだよ、凛」
私は、拓夢にそう言って笑った。
「でも、このまま離れる方が拓夢は私の中で一生残ると思う」
「そうだな」
「あの時、最後に抱かれたかったって思いたい」
「俺も最後に抱きたかったって思い続けたい」
私達は、最後まで泣きながらキスをし続けていた。
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