上 下
578 / 646
エピローグ~月と星の交わる場所へ~【凛と拓夢の話2】

恋人同士みたいな時間【拓夢】

しおりを挟む
「はい、珈琲」

「ありがとう」

俺が、珈琲を渡すと凛はトレーに食器をのせる手を止めて受け取った。

「今日は、何しようかな?下着買いに行って!スーパーに行こうか!食材買いに…」

「うん、味噌汁の具がないもんね」

「そうだな」

「でも、拓夢。大丈夫?」

「大丈夫だよ」

心配する凛に、俺は笑った。

「それなら、いいんだけど…」

「うん」

俺達は、珈琲を飲んだ。

「凛の服ないから、俺のでいい?」

「うん」

「後、引っ越しの手伝い一緒にしてくれない?」

「いいよ」

凛が笑うだけで、俺はもう充分だった。凛は、トレーに食器をのせてキッチンに下げにいく。

「待って、お皿一緒に洗う」

決まり事みたいにお皿を洗ってから、俺と凛は服を着替えて部屋を出た。

「帽子を深く被らなくちゃいれなくなっちゃったな」

俺は、そう言って苦笑いを浮かべた。

「手は繋げないよ!もう、駄目だよ」

凛の言葉に、俺はうんと頷いた。タクシーは、使いたくなかったけど…。駅前で、タクシーに乗って五駅先の服屋さんに行った。

「VIPみたい」

「そうだな」

二人でニコニコ笑いながら、凛が下着を買ったり、ここにいる為の服やパジャマを選んでいた。

「お金は、俺が出すから…」

そう言ってお会計をして、そのまま近くのスーパーに行く。

「豆腐とうすあげとしいたけとレタスも買って…」

かごを持った俺にそう言いながら凛はかごにいれてく。まるで、新婚みたいで楽しい。

「たまごも追加しとこう」

「だな」

俺は、凛に笑った。
スーパーで、レジを済ませて袋に入れる。また、駅前でタクシーに乗って帰宅した。

「何か疲れたなー」

玄関を開けて、家に入った瞬間に俺はそう言った。

「仕方ないよ!顔が指すんだから…」

「だよな」

俺と凛は、そう話しながら靴を脱いで上がる。

リビングにつくと凛は、スーパーの袋を俺から取ってキッチンの冷蔵庫に食材をしまっていく。

ピンポーンー

「誰?」

「多分、引っ越し業者」

俺は、服の袋を置いて玄関に行く。

「はい」

「星村さんですね。段ボール持ってきました」

「ありがとうございます」

俺が、段ボールを受け取った時だった。

「あ、ああー。ああー」

「何ですか?」

「SNOWROSEのタクムですよね」

ヤバい、バレた。

「あ、まあ…」

「俺、めちゃくちゃファンなんです。サインとか無理ですよね?」

「引っ越しの日でいいなら、用意しときます」

「本当ですか?ありがとうございます」

そう言って、深々と頭を下げられた。

「内緒にしますから!ここにタクムがいるって」

そう言って、引っ越し業者のお兄さんはいなくなった。俺は、段ボールをいれて玄関の鍵を閉めた。

「すごいね」

凛がやってきて、段ボールを持ってくれる。

「たまたまだよ」

「でも、すごいよ」

そう言って、凛がニコニコ笑ってくれるから俺も嬉しくて笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

処理中です...