上 下
574 / 646
エピローグ~月と星の交わる場所へ~【凛と拓夢の話2】

そんなに簡単に消えない【凛】

しおりを挟む
「凛」

「んんっ」

拓夢は、私にキスをしてきた。

「ごめん。ヤバイわ!風呂入る」

そう言って、拓夢は私から離れた。

「いいよ!続けて」

「駄目だって!先に風呂入るな」

拓夢は、私の頭を優しく撫でていなくなった。したってよかったのに…。私は、そう思いながらお皿の残りを洗った。

洗い終わると、【お風呂が沸きました】とアナウンスが流れてきた。拓夢が、湯船をいれていたのがわかった。私は、絞ったキッチンペーパーを持ってダイニングテーブルに行って机を拭いた。

ブー、ブー

スマホが鳴った音がして鞄から取り出した。

「通知消すの忘れてた」

雪乃が何かを投稿したらしい通知がやってきていた。開かなくていいのに、気になって開いてしまう。
もしかして、早いけど赤ちゃん産まれたとか?開かなければよかったと後悔した。そこには、雪乃が和紗の投稿を載せましたとなっている。

【満月の効果ですね!予定日より遅れてたけど、無事に出産しました】その言葉と共に、赤ちゃんと映る和紗の写真。

【おめでとう。和紗ちゃんも、同級生だね!私も、もうすぐママだよ!】

【雪乃ちゃん、おめでとう。病院で会った時は、びっくりしたけど…。やっと願いが叶ったね。お先に、ママになったよ】

【産まれたら、会おうね!】

和紗と雪乃が、やり取りをしていた。私の入れない話題で…。

ゴトン…。足元にスマホが落ちる。

あの日、芽生えた気持ちを簡単に消す事は出来なくて…。消えていなかった事に気づいてしまった。
ここで、何かを起こせば拓夢に迷惑がかかる。

私は、ペタペタと泣きながら歩いていた。洗面所の扉を開ける。

私には、これしか思い付かない。絶望を拭える方法がわからない。

「ごめんね、龍ちゃん。許して、拓夢」

スルスルと服を脱ぎ捨てた。私は、裸になってお風呂場の扉を開けた。

カタン…。って音がして、拓夢は驚いた顔で私を見つめる。

「凛、どうした?」

「抱いて!拓夢」

私は、栓を捻ってシャワーを出すと軽く体を流してから湯船にいる拓夢の元に行った。

「駄目だよ。凛」

「どうして?私じゃもうそうならないの?」

私は、そう言って拓夢に近づいた。

「なるから、駄目なんだよ」

拓夢は、そう言って私から離れようとする。

「それなら、いいじゃない。だったら、この絶望を拭ってよ」

私の言葉に、拓夢は私を見つめる。

「何かあったの?凛」

「和紗が生きてた」

そう言って、ボロボロ泣いているのが自分でもわかる。

「嬉しい事じゃないんだな」

拓夢は、そう言って私の頬の涙を拭ってくれる。

「嬉しいの。よかった。和紗が生きてて」

うまく笑えない。大好きだった友人の出産におめでとうも言えない醜い心。

「拓夢の家で死んだら迷惑かかるでしょ?だから、こうして」

私は、頬にある拓夢の手を胸にもっていく。

「死にたいぐらいに嫌な事があったのか?」

私は、首を横に振った。死にたくなったのは、自分の醜さを知ったから…。今までとは違うんだよ。この身体に嫌気がさしたのと違うの。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

【書籍化・3/7取り下げ予定】あなたたちのことなんて知らない

gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。書籍化予定です。取り下げになります。詳しい情報は決まり次第お知らせいたします。

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...