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エピローグ【凛と拓夢の話】

私は、行かないよ【凛】

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私は、龍ちゃんの背中に回してる腕に力を少しだけ入れた。

「私は、行かないよ」

その言葉に龍ちゃんは「いいんだよ」って優しく言った。

「必要ない。私には、龍ちゃんがいるから」

「凛、俺はね。凛が生きてさえいればいいんだよ!それ以外は、何もいらないんだ。だから…」

私は、龍ちゃんからゆっくり離れて、龍ちゃんの唇に人差し指をつけた。

「凛?」

「しっー」

「本当…」

龍ちゃんは、まだ口を開いてくるから私は唇をゆっくり重ねた。もう、何も言って欲しくなかった。
私の決心が揺らいで、龍ちゃんを裏切る事になるぐらいなら…。
そんなの必要なかった。

私は、唇をゆっくり離した。

「無理してない?無理に俺の傍にいないでいいんだよ」

私は、その言葉に首を横に振った。

「凛がいいなら、もう言わないよ!星村さんのところに行きなよ。なんて言わないから」

「言わないで!私は、龍ちゃんといたいの」

そう言って、龍ちゃんの左手を握りしめて、私の頬に持っていく。

「それなら、もう言わないよ」

「約束して」

「約束」

龍ちゃんは、そう言って右手の小指を差し出してきた。

「そんなのいらない」

私は、龍ちゃんの手を下げた。

「じゃあ、何が欲しいの?」

そう言って、龍ちゃんは私を見つめてくる。

「それを言わすの?」

「それって、何?」

そう言って、龍ちゃんはニコニコ笑ってくる。

「言った方がいいの?」

「言いたいなら、言いなよ」

そう言いながら、龍ちゃんが笑ってくれる。

「言わなーい」

「何だよ、それ」

龍ちゃんは、そう言って私の事をくすぐってくる。

「ハハハ、やめてよー。くすぐらないでよ」

「ハハハ、凛やっと笑った」

そう言って、龍ちゃんは私の頬を優しく撫でる。

「約束は?」

私は、龍ちゃんを見つめる。

「指切りしようか?」

「それはいらない」

「じゃあ、キスしようか?」

「キスだけ?」

私の言葉に、龍ちゃんは私を膝の上に座らせてくる。

「キスだけ。何でかわかる?」

私は、首を横に振った。

「こんな風に絶望した日を塗り替えるように肌を重ねて。また、駄目だったらどうする?その時の絶望は、二倍だろ?そうやって、重ねる度に絶望が増えていって…。気づいたら、今、見たいに消えたくなるだろ?」

龍ちゃんは、そう言って私の唇を指で優しくなぞる。

「龍ちゃん。ちゃんと私を知っていたんだね」

私の言葉に龍ちゃんは、柔らかく笑って頷いた。

「俺を誰だと思ってるの?」

『凛の夫だよ』

私と龍ちゃんは、同時にそう言って笑い合った。

穏やかで、暖かで、幸せな日々が続いてく。だから、大丈夫。そう思える。そう、信じられる。

私と龍ちゃんは、何度も何度も優しいキスを繰り返した。

私は、もう龍ちゃんの傍にいるから…。

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