上 下
547 / 646
エピローグ【凛と拓夢の話】

楽になるか?【凛】

しおりを挟む
龍ちゃんは、新しいバスタオルを巻き付けて私をお姫様抱っこしてリビングのソファーに座らせた。

「ちょっと待ってて」

そう言って、龍ちゃんは暖房の温度をあげたり、ピッピッと床暖房のスイッチを押したり、キッチンに行ったり、寝室に行ったり、慌ただしく動いていた。

「はい、これ」

私は、龍ちゃんに毛布をかけられる。

「私が死んだら悲しい?」

その言葉に龍ちゃんは驚いた顔をしていた。

「何でそんな当たり前の事を聞くんだよ!」

珍しく龍ちゃんは、怒っていた。

「龍ちゃん!何で死なせてくれないのよ」

龍ちゃんに怒りをぶつけるなんて間違ってるのをわかっていながら言ってしまった。

「凛、何でそんな事言うんだよ」

龍ちゃんは、ボロボロ泣き出した。

「私がどれだけ赤ちゃんを望んでるかわかる?出来ないなら、死んだ方がまし」

龍ちゃんは、握り拳を作っていた。その手が震えてるのがわかる。龍ちゃんが怒ってるのを感じていた。

「龍ちゃんには、わかんないよ。女だったら、赤ちゃんが産みたいの!欲しいの!当たり前に染み付いた気持ちなの。わかる?わからないでしょ?だから、死なせてよ」

龍ちゃんは、私の言葉に何も言わずに立ち上がった。

キッチンに向かっていく。無言で何かを持ってきた。

「凛、殺してあげたら楽になるか?」

龍ちゃんは、泣きながら包丁を握りしめていた。

「龍ちゃん。殺して」

私は、毛布とバスタオルを床に落として立ち上がった。

「先に行ってて!俺も後から行くから」

「うん。いいよ」

この苦しみから、逃げれるなら…。

この痛みが、終わるなら…。

私は、もう消えてしまいたい。

それが、龍ちゃんに殺されて終わるなら構わなかった。

龍ちゃんは、私の近くに来た。

「見られてると刺せないよ」

「あっ、うん。ごめんね」

「本当にいいの?」

「いいよ!だけど、ちゃんと、殺ってね。目覚めた時に、絶望したくないから」

「わかってるよ!凛」

龍ちゃんは、優しい。

いつだって、私の事を考えてくれていた。

「最後に聞いていい?」

「何?」

「龍ちゃんは、不倫した私の事、本当はどう思ってた?」

龍ちゃんは、私の言葉にボロボロと泣いていた。

「こういう結末にならないなら、不倫でも何でもしていてくれてよかったよ。俺は、凛が生きていてさえくれれば何もいらなかった」

龍ちゃんは、そう言いながら、「うっ、うっ」と声を出して泣いていた。

「優しいね、龍ちゃん」

私は、ゆっくり目を閉じた。

「いいよ。龍ちゃん」

「わかった」

龍ちゃんが、やってくるのがわかる。

ドサッ…。

ソファーに倒れた。

やっとこれで、楽になれる。

やっと、これで、解放される。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花
ファンタジー
「背筋を伸ばして凛とありたい」 トワイス国にアンナリーゼというお転婆な侯爵令嬢がいる。 アンナリーゼは、小さい頃に自分に関わる『予知夢』を見れるようになり、将来起こるであろう出来事を知っていくことになる。 幼馴染との結婚や家族や友人に囲まれ幸せな生活の予知夢見ていた。 いつの頃か、トワイス国の友好国であるローズディア公国とエルドア国を含めた三国が、インゼロ帝国から攻められ戦争になり、なすすべもなく家族や友人、そして大切な人を亡くすという夢を繰り返しみるようになる。 家族や友人、大切な人を守れる未来が欲しい。 アンナリーゼの必死の想いが、次代の女王『ハニーローズ』誕生という選択肢を増やす。 1つ1つの選択を積み重ね、みんなが幸せになれるようアンナリーゼは『予知夢』で見た未来を変革していく。 トワイス国の貴族として、強くたくましく、そして美しく成長していくアンナリーゼ。 その遊び場は、社交界へ学園へ隣国へと活躍の場所は変わっていく…… 家族に支えられ、友人に慕われ、仲間を集め、愛する者たちが幸せな未来を生きられるよう、死の間際まで凛とした薔薇のように懸命に生きていく。 予知の先の未来に幸せを『ハニーローズ』に託し繋げることができるのか…… 『予知夢』に翻弄されながら、懸命に生きていく母娘の物語。 ※この作品は、「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルアップ+」「ノベリズム」にも掲載しています。  表紙は、菜見あぉ様にココナラにて依頼させていただきました。アンナリーゼとアンジェラです。  タイトルロゴは、草食動物様の企画にてお願いさせていただいたものです!

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

えんとっぷ
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...