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エピローグ【凛と拓夢の話】

芸能人【拓夢】

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「確かにそうだよな」

「その誰かに、俺達がなってあげるわけよ」

まっつんは、そう言って俺の肩を叩いた。気づけば涙は止まっていた。駅に着くとまっつんは、小走りで切符を買いに行った。

「向こうに帰れるのいつまでかな?」

俺は、まっつんに切符を渡された。

「さあな?」

「出来る事なら、あっち住みでもいいぐらいだけどなー」

まっつんは、そう言って笑った。俺達は、改札を抜けてホームに降りる。

「やっぱそうだよ。聞きなよ」

「うん、だよね」

女の子二人組が、俺とまっつんを見ている。

「あの、SNOWROSE のタクムとまっつんですよね?あっ、えっと違いますか?」

「いや、あってるよ」

まっつんは、そう言って笑った。

「キャー、かっこいい」

「あの、写真とか駄目ですか?」

相沢さんに聞いてないからなって俺達は、二人で顔を見合わせる。

「握手だけでもいい?」

まっつんの言葉に女の子は、うんうんと頷いていた。まっつんは、握手をした。俺も握手をした。

「ありがとうございます。一生、手洗いません」

「いや、それは汚いから」

まっつんは、そう言って笑った。

「ずっと応援してます」

「ありがとう」

手を振って、二人はいなくなった。

「俺達、芸能人なんだな」まっつんは、寂しそうにポツリと言った。

「嫌だった?」

「嫌!嬉しいよ。ただ、理沙との事が悲しいなって」

ガタンゴトンー

電車がやってきた。

俺達は、電車に乗り込む。車両内の数人の人がチラチラと俺達を見ている。

「いつ有名になった?」

まっつんは、小声で俺に聞いた。

「わかんない」

俺は、そうまっつんに答えた。みんなスマホを見ている。

「なあ、何かスマホでうつってるのかな?」

「そんな気がするよな」

まっつんは、スマホを取り出した。

「有名人だから見ない方がいいんじゃないか?」

俺の言葉にまっつんは、「一瞬だけ」と言った。SNOWROSEをまっつんは、俺に見せるように検索した。

ジュンさんのSNSの記事が現れる。
【SNOWROSEを全力で応援する!天使なら、俺の言うことは絶対な!】

俺様キャラのジュンさんは、その文章の後に俺達のCDな写真を載せていた。まっつんは、スマホを切ってポケットにしまって「これだな」と俺に小さく言った。

「そうだろうな」

智天使(ケルビム)のインフルエンサーだとジュンさんは言われている。ジュンさんが発信した物とか人は、すぐに流行ると言われている。だから、ジュンさんは個人でCMもいくつか出演していた。

「もう、後戻りは出来ないな」

まっつんは、そう言って俺にだけ聞こえる声でポツリと言った。
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