上 下
540 / 646
エピローグ【凛と拓夢の話】

芸能人【拓夢】

しおりを挟む
「確かにそうだよな」

「その誰かに、俺達がなってあげるわけよ」

まっつんは、そう言って俺の肩を叩いた。気づけば涙は止まっていた。駅に着くとまっつんは、小走りで切符を買いに行った。

「向こうに帰れるのいつまでかな?」

俺は、まっつんに切符を渡された。

「さあな?」

「出来る事なら、あっち住みでもいいぐらいだけどなー」

まっつんは、そう言って笑った。俺達は、改札を抜けてホームに降りる。

「やっぱそうだよ。聞きなよ」

「うん、だよね」

女の子二人組が、俺とまっつんを見ている。

「あの、SNOWROSE のタクムとまっつんですよね?あっ、えっと違いますか?」

「いや、あってるよ」

まっつんは、そう言って笑った。

「キャー、かっこいい」

「あの、写真とか駄目ですか?」

相沢さんに聞いてないからなって俺達は、二人で顔を見合わせる。

「握手だけでもいい?」

まっつんの言葉に女の子は、うんうんと頷いていた。まっつんは、握手をした。俺も握手をした。

「ありがとうございます。一生、手洗いません」

「いや、それは汚いから」

まっつんは、そう言って笑った。

「ずっと応援してます」

「ありがとう」

手を振って、二人はいなくなった。

「俺達、芸能人なんだな」まっつんは、寂しそうにポツリと言った。

「嫌だった?」

「嫌!嬉しいよ。ただ、理沙との事が悲しいなって」

ガタンゴトンー

電車がやってきた。

俺達は、電車に乗り込む。車両内の数人の人がチラチラと俺達を見ている。

「いつ有名になった?」

まっつんは、小声で俺に聞いた。

「わかんない」

俺は、そうまっつんに答えた。みんなスマホを見ている。

「なあ、何かスマホでうつってるのかな?」

「そんな気がするよな」

まっつんは、スマホを取り出した。

「有名人だから見ない方がいいんじゃないか?」

俺の言葉にまっつんは、「一瞬だけ」と言った。SNOWROSEをまっつんは、俺に見せるように検索した。

ジュンさんのSNSの記事が現れる。
【SNOWROSEを全力で応援する!天使なら、俺の言うことは絶対な!】

俺様キャラのジュンさんは、その文章の後に俺達のCDな写真を載せていた。まっつんは、スマホを切ってポケットにしまって「これだな」と俺に小さく言った。

「そうだろうな」

智天使(ケルビム)のインフルエンサーだとジュンさんは言われている。ジュンさんが発信した物とか人は、すぐに流行ると言われている。だから、ジュンさんは個人でCMもいくつか出演していた。

「もう、後戻りは出来ないな」

まっつんは、そう言って俺にだけ聞こえる声でポツリと言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

売れ残り同士、結婚します!

青花美来
恋愛
高校の卒業式の日、売り言葉に買い言葉でとある約束をした。 それは、三十歳になってもお互いフリーだったら、売れ残り同士結婚すること。 あんなのただの口約束で、まさか本気だなんて思っていなかったのに。 十二年後。三十歳を迎えた私が再会した彼は。 「あの時の約束、実現してみねぇ?」 ──そう言って、私にキスをした。 ☆マークはRシーン有りです。ご注意ください。 他サイト様にてRシーンカット版を投稿しております。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。

hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。 明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。 メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。 もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...