531 / 646
エピローグ【凛と拓夢の話】
堂々としとけば…【凛】
しおりを挟む
「帰ろう」
「うん」
私は、龍ちゃんの言葉に歩きだした。
「相沢さんと連絡先交換しといた」
いつの間にか、番号を交換していたらしく。龍ちゃんは、そう言って笑った。
「あのね龍ちゃん、週刊紙」
そこまで言うと車について、龍ちゃんは助手席を開けてくれる。
「ありがとう」
「うん」
ドアが閉められて、龍ちゃんは運転席に乗り込んで、扉を閉めてエンジンをかける。
カチッとシートベルトをかける音が同時に車内に響いた。
「坂東さんの事、心配してる?」
右のウィンカーを出したカチカチって音と龍ちゃんの声が重なった。
「私ってバレたら…」
「別に殺人したわけじゃないんだから、堂々としとけばいいんだよ」
龍ちゃんは、そう言って車を発進させた。
「いいのかな?」
「いいに決まってるだろ!」
そう言って龍ちゃんは、ジッと前を見つめている。
「世間は、許さないよ!不貞行為に厳しいから」
「許すのは、世間じゃなくて俺だから」
そう言った龍ちゃんの横顔は、いつもよりもかっこいい。
「許せるの?」
許してくれるの?こんな私を…。言いたい言葉をうまく話せなくて俯いた。
「許すとか許さないとかでしか判断しなくちゃいけないのかな?俺は、いつもそう思ってた。二択しか選べないってしんどいよなって」
龍ちゃんは、そう言いながら真剣に前を見てる。運転に集中してる龍ちゃんを私は邪魔してる。
「いい加減な事をしたのは、私だから…。許されないってわかってるから」
私は、自分の手を握りしめながら言った。涙が流れてきて、ポタポタと手にあたる。
「凛、許すかどうかは俺が決めるんだよ」
赤信号で停まった龍ちゃんは、パーキングにシフトを入れて私の手を握りしめる。
私は、泣き顔で龍ちゃんを見つめる。
「凛、もうそんなに自分を責めるなよ」
「何で?何で、そんなに優しいの」
私は、大人げない声を上げて言ってしまう。何で私が龍ちゃんに怒ってるのよ。そんなの間違ってる。わかってるのに、わかってるのに…。
「週刊紙が出るの怖いんだな」
龍ちゃんは、そう言って私の手を擦ってきた。
パアー、パアー
「青だった」
龍ちゃんは、すぐに運転モードになって私から手を離した。もっと手を握りしめていて欲しかった。私は、両手を自分で擦りながら龍ちゃんを見つめていた。
「12月23日に週刊紙が出て、どうなるかはわからないけど…。世間は知らないけど、俺は何も変わらないから」
そう言って、龍ちゃんはニーと口元を引っ張っていた。私に笑ってるってわかるぐらいに大袈裟に…。
龍ちゃんみたいに優しい人は、私の周りを探したって見つからないと思う。龍ちゃんに出会えたのは、奇跡だったと今でも思う。
だから、私は龍ちゃんを幸せにしたかったし。龍ちゃんにも幸せになってもらいたかった。
だから…。だから…。
「うん」
私は、龍ちゃんの言葉に歩きだした。
「相沢さんと連絡先交換しといた」
いつの間にか、番号を交換していたらしく。龍ちゃんは、そう言って笑った。
「あのね龍ちゃん、週刊紙」
そこまで言うと車について、龍ちゃんは助手席を開けてくれる。
「ありがとう」
「うん」
ドアが閉められて、龍ちゃんは運転席に乗り込んで、扉を閉めてエンジンをかける。
カチッとシートベルトをかける音が同時に車内に響いた。
「坂東さんの事、心配してる?」
右のウィンカーを出したカチカチって音と龍ちゃんの声が重なった。
「私ってバレたら…」
「別に殺人したわけじゃないんだから、堂々としとけばいいんだよ」
龍ちゃんは、そう言って車を発進させた。
「いいのかな?」
「いいに決まってるだろ!」
そう言って龍ちゃんは、ジッと前を見つめている。
「世間は、許さないよ!不貞行為に厳しいから」
「許すのは、世間じゃなくて俺だから」
そう言った龍ちゃんの横顔は、いつもよりもかっこいい。
「許せるの?」
許してくれるの?こんな私を…。言いたい言葉をうまく話せなくて俯いた。
「許すとか許さないとかでしか判断しなくちゃいけないのかな?俺は、いつもそう思ってた。二択しか選べないってしんどいよなって」
龍ちゃんは、そう言いながら真剣に前を見てる。運転に集中してる龍ちゃんを私は邪魔してる。
「いい加減な事をしたのは、私だから…。許されないってわかってるから」
私は、自分の手を握りしめながら言った。涙が流れてきて、ポタポタと手にあたる。
「凛、許すかどうかは俺が決めるんだよ」
赤信号で停まった龍ちゃんは、パーキングにシフトを入れて私の手を握りしめる。
私は、泣き顔で龍ちゃんを見つめる。
「凛、もうそんなに自分を責めるなよ」
「何で?何で、そんなに優しいの」
私は、大人げない声を上げて言ってしまう。何で私が龍ちゃんに怒ってるのよ。そんなの間違ってる。わかってるのに、わかってるのに…。
「週刊紙が出るの怖いんだな」
龍ちゃんは、そう言って私の手を擦ってきた。
パアー、パアー
「青だった」
龍ちゃんは、すぐに運転モードになって私から手を離した。もっと手を握りしめていて欲しかった。私は、両手を自分で擦りながら龍ちゃんを見つめていた。
「12月23日に週刊紙が出て、どうなるかはわからないけど…。世間は知らないけど、俺は何も変わらないから」
そう言って、龍ちゃんはニーと口元を引っ張っていた。私に笑ってるってわかるぐらいに大袈裟に…。
龍ちゃんみたいに優しい人は、私の周りを探したって見つからないと思う。龍ちゃんに出会えたのは、奇跡だったと今でも思う。
だから、私は龍ちゃんを幸せにしたかったし。龍ちゃんにも幸せになってもらいたかった。
だから…。だから…。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します

裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる