上 下
530 / 646
エピローグ【凛と拓夢の話】

いちいちいらないよね【凛】

しおりを挟む
「不妊の人は、全員不倫しちゃうみたいな記事だったでしょ?」

はやとさんに言われて私は、頷いていた。

「週刊紙(あっち)は、そうやって書くんだよ!その方が売れるから」

週刊紙に怨みがありそうなはやとさんは、そう言ってから珈琲を飲んでいる。

「俺も散々やられたからわかるんだよ!凛さん、あんなので傷ついちゃ駄目だよ」

「はい」

「世間の言葉みたいに言ってるけどさ…。結局、100人全員が思ってるわけじゃないから…。それを100人全員が言ってるようにしちゃうのが怖い所なんだよ」

はやとさんは、そう言いながら首を左右に振っていた。

「近所の人とかにバレなかったらいいんだけど…。大丈夫?」

私は、その言葉にはやとさんを驚いた顔で見つめていた。

「バレないと思ってた?」

私は、はやとさんの言葉に頷いていた。

「特徴的なものは、映ってなかった?大丈夫?」

「多分…」

「それなら、いいんだけど。だいたい、そういうのから見つかったりしちゃうから」

そう言って、はやとさんは苦笑いを浮かべていた。

「そろそろ。仕事だよ」

相沢さんは、龍ちゃんと話し終わってチラリと時計を見てそう言った。

「日曜日も仕事って大変ですね」

龍ちゃんの言葉に相沢さんは笑って「みんなが休みの日が稼ぎ時ですからね」と言った。

「じゃあ、行こうか」

「うん」

私と龍ちゃんも帰る支度をする。

「ゆっくり出来なくてすみません」

相沢さんは、龍ちゃんに申し訳なく話していた。

「充分しましたよ」

そう言って、相沢さんと龍ちゃんは一緒に出て行く。

「素敵な人だね」

隣に立ったはやとさんにそう言われた。

「そうなんです」

私は、少し恥ずかしくなりながら答えた。

「優しさだけじゃ癒えない傷があったんだよね」

そう言って、はやとさんは笑った。

「わがままですよね」

私の言葉にはやとさんは、「ううん」と言って首を左右に振った。

「あの日の私には、拓夢が必要でした。そうじゃなかったら、私は…」

その言葉にはやとさんは、何かを察してこう言った。

「俺の親友と同じ事になっていたかもしれないんですよね」

「同じ事?」

「俺の親友は…」

「はやと、急ぐぞ」

「あっ、はい」

相沢さんに呼ばれてはやとさんは、急いで歩きながら「よかったら、これ見て」と言った。

はやとさんは、私にスマホの画面を見せる。
そこには、【鴨池はやてが親友について】と書かれたサイトがうつっていた。

「ごめんなさい。暇だったら、検索して読んで見て」

そう言って、はやとさんは足早に相沢さんの元に行った。

「じゃあ、我々はここで」

「クリスマスに必ず行きます」

龍ちゃんは、相沢さんに頭を下げて私達は入り口で解散した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

[完結]要らないと言ったから

シマ
恋愛
要らないと言ったから捨てました 私の全てを 若干ホラー

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

処理中です...