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エピローグ【凛と拓夢の話】
敵わない人と久しぶりの再会【拓夢】
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皆月龍次郎さんが、帰宅してからしばらくは動けずにいた。情けないけど、負けたのがわかった。
あの人が、もっと嫌なやつならよかった。
コンコンー
「はい」
「先輩、今日は上がりますか?」
「うん、そうしようかな」
溝口がやってきて、声をかけられた。
「疲れたでしょ?引き継ぎとか色々」
「そうだな」
「まだ、色々あるんですよね。パンケーキの店も、もう一回残ってますし」
「そうだな」
「じゃあ、また明日」
「わかった!ありがとう」
俺は、溝口に頭を下げる。鉛みたいな体を引きずってるような感覚で帰宅した。
「拓夢、話そう」
「勘弁してくれよ」
「どうして?私が嫌いだから」
「そんな事言ってないだろ?」
「もう、いい」
美沙は、そう言っていなくなった。女ってめんどくさいな。俺は、玄関の鍵を開けて家に入る。
「凛に会いたい」
鍵を閉めて、体を引きずるように歩いてベットに倒れ込んだ。
ポケットから、スマホを取り出して凛の写真を見つめる。
ウェディングドレスを着た凛…。
「俺、凛と結婚したかったよ」
写真を見つめながら、泣いてるのがわかる。凛との生活は、絶対幸せだってわかる。
でも、凛は俺とは違う未来を想像していた。旦那さんが言った話だ。凛は、俺と結婚しても…。
きっと、不倫する。
同じ未来を辿るなら、そうなんだろ?
俺は、スマホを強く抱き締める。
「凛、会いたいよ…。俺、会いたい」
凛がいないだけで、こんなに辛いなんて思わなかった。
それからの日々は、モノクロだったり、欠けてたり、変な感じの時間を過ごしていた。
「先輩」
「あっ!車に忘れ物したから取ってくるわ」
「はい」
俺は、パンケーキの店を後にした。
雨降ってきたか…。
店員さんが、傘を貸してくれて俺は車に向かって歩く。
うん?見た事がある人がいる。
「凛」
俺は、すぐにその名を口に出していた。
「傘、渡すよ」
俺が、車に傘を取りに行こうとしたら、何故か凛は走り出す。
「凛、待って」
俺は、驚いた顔をして凛を追いかけようとする。
「凛」
「星村先輩、出来ましたよ」
その声に立ち止まるしかなかった。
「ごめん、今取る」
「さっきのって、前におばさんに殴られてた人じゃないですか?」
「あぁ!そうだったっけ?」
俺は、溝口にそう言ってから、車の助手席を開ける。持ってきていた、資料を取って扉を閉めた。
「先輩、顔色悪いですよ?」
「大丈夫」
「これ終わったら、直帰して下さい」
「ああ、ありがとう」
俺は、溝口と一緒にパンケーキの店に戻った。
「これが、資料になります。これからは、溝口が引き継いでいきますので…」
「星村さんがよかったけど、残念です。でも、これからはファンとして応援します」
「ありがとうございます」
一生懸命、資料の説明をした。
「結局、あっち側も工事した方がいいのよね?」
「そうですね。この内容だと…」
溝口が一生懸命説明しているのをぼんやりと見つめていた。先輩が作ってくれた資料には、あちら側のリフォームをするならこちら側もするべきだという内容が詳しく書かれていた。
でも俺は、全然聞いていなかった。
さっき逃げた凛の姿が浮かんでは消えていく。
あの人が、もっと嫌なやつならよかった。
コンコンー
「はい」
「先輩、今日は上がりますか?」
「うん、そうしようかな」
溝口がやってきて、声をかけられた。
「疲れたでしょ?引き継ぎとか色々」
「そうだな」
「まだ、色々あるんですよね。パンケーキの店も、もう一回残ってますし」
「そうだな」
「じゃあ、また明日」
「わかった!ありがとう」
俺は、溝口に頭を下げる。鉛みたいな体を引きずってるような感覚で帰宅した。
「拓夢、話そう」
「勘弁してくれよ」
「どうして?私が嫌いだから」
「そんな事言ってないだろ?」
「もう、いい」
美沙は、そう言っていなくなった。女ってめんどくさいな。俺は、玄関の鍵を開けて家に入る。
「凛に会いたい」
鍵を閉めて、体を引きずるように歩いてベットに倒れ込んだ。
ポケットから、スマホを取り出して凛の写真を見つめる。
ウェディングドレスを着た凛…。
「俺、凛と結婚したかったよ」
写真を見つめながら、泣いてるのがわかる。凛との生活は、絶対幸せだってわかる。
でも、凛は俺とは違う未来を想像していた。旦那さんが言った話だ。凛は、俺と結婚しても…。
きっと、不倫する。
同じ未来を辿るなら、そうなんだろ?
俺は、スマホを強く抱き締める。
「凛、会いたいよ…。俺、会いたい」
凛がいないだけで、こんなに辛いなんて思わなかった。
それからの日々は、モノクロだったり、欠けてたり、変な感じの時間を過ごしていた。
「先輩」
「あっ!車に忘れ物したから取ってくるわ」
「はい」
俺は、パンケーキの店を後にした。
雨降ってきたか…。
店員さんが、傘を貸してくれて俺は車に向かって歩く。
うん?見た事がある人がいる。
「凛」
俺は、すぐにその名を口に出していた。
「傘、渡すよ」
俺が、車に傘を取りに行こうとしたら、何故か凛は走り出す。
「凛、待って」
俺は、驚いた顔をして凛を追いかけようとする。
「凛」
「星村先輩、出来ましたよ」
その声に立ち止まるしかなかった。
「ごめん、今取る」
「さっきのって、前におばさんに殴られてた人じゃないですか?」
「あぁ!そうだったっけ?」
俺は、溝口にそう言ってから、車の助手席を開ける。持ってきていた、資料を取って扉を閉めた。
「先輩、顔色悪いですよ?」
「大丈夫」
「これ終わったら、直帰して下さい」
「ああ、ありがとう」
俺は、溝口と一緒にパンケーキの店に戻った。
「これが、資料になります。これからは、溝口が引き継いでいきますので…」
「星村さんがよかったけど、残念です。でも、これからはファンとして応援します」
「ありがとうございます」
一生懸命、資料の説明をした。
「結局、あっち側も工事した方がいいのよね?」
「そうですね。この内容だと…」
溝口が一生懸命説明しているのをぼんやりと見つめていた。先輩が作ってくれた資料には、あちら側のリフォームをするならこちら側もするべきだという内容が詳しく書かれていた。
でも俺は、全然聞いていなかった。
さっき逃げた凛の姿が浮かんでは消えていく。
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