上 下
488 / 646
エピローグ【凛の話5】

変わらない日常……?

しおりを挟む
どうやら、あのまま龍ちゃんと寝てしまっていた。

「うーん」

「おはよう」

龍ちゃんは、目を覚ましてそう言った。

「歯磨き忘れてた、汚いよね」

「別に、たまにはいはいんじゃない?」

「でも、あのままだよ!寝ちゃったの!」

「嫌だったよな?」

龍ちゃんは、私の唇を優しく撫でる。

「嫌じゃない」

私は、そう言って龍ちゃんの手を握りしめた。

「起きなきゃ!仕事だから」

「うん!お弁当と朝御飯するね」

「うん」

私と龍ちゃんは、起き上がって並んで洗面所に向かう。軽く口をゆすいでから、歯ブラシをとって、二人で並んで磨く。鏡越しに目があって、ニコニコしそうになる。

私をわかってくれる存在。

否定しない存在。

龍ちゃんがいるだけで、私はやっぱり花を咲かせていられる。

先にうがいしていいよと差し伸べられた手に導かれるようにうがいをした。ついでに、顔を軽く洗った。

「じゃあ、私。ご飯するね」

フェイスタオルで、拭きながら話す私に龍ちゃんは丸を作った。私は、洗面所を出てキッチンに行く。

お米を洗ってスイッチを押す。その間に、ワカメと豆腐の味噌汁と目玉焼きにウインナーを焼いて、龍ちゃんのお弁当用に照り焼きチキンを焼いた。三口あるコンロを、全て使っていた。

「できたー」

作り終わって、お皿に盛り付けるとお米は炊き上がった。少し蒸らしてから、ご飯を龍ちゃんのお弁当箱によそった。龍ちゃん、喜ぶかな?

朝御飯を食べ終わる間に冷めるよね!私は、トレーに朝御飯を乗せてダイニングに持って行って並べる。

「あー、いい匂いだな」

タイミングよく龍ちゃんは、シャワーから上がってきた。

「もう出来るよ!」

「お水飲んだら座るわ」

「うん」

キッチンから、龍ちゃんが戻ってきて向い合わせで座る。「いただきます」そう言っていつものようにご飯を食べる。「ごちそうさまでした」食べ終わって、トレーにお皿を乗せて下げに行く。

「龍ちゃん、お弁当」

「ありがとう!今日、起きたの遅かったから行ってくるわ」

龍ちゃんは、お弁当を受け取ってバタバタと玄関に向かう。

「いってらっしゃい」

「行ってきます」

「気をつけてね」

「凛も気をつけて」

龍ちゃんは、玄関を開けて出て行った。私は、鍵を閉めてリビングに戻る。

昨日の鞄からスマホを取り出すと11%だった。画面を見ると、着信が35件も入っていた。私は、履歴を確認する。30件以上が知らない番号だった。

「かけ直すかな」

私は、その知らない番号にかけ直した。

プルルルー

プルルルー

『もしもし』

その声に、背筋に寒気が走る。

    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ

ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。 それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。 しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

50歳前の離婚

家紋武範
恋愛
 子なしの夫婦。夫は妻から離婚を切り出された。  子供が出来なかったのは妻に原因があった。彼女はそれを悔いていた。夫の遺伝子を残したいと常に思っていたのだ。  だから別れる。自分以外と結婚して欲しいと願って。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

王妃の私には妾妃の貴女の考えなどお見通し

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
王太子妃となったミリアリアは不妊症であると医者に告げられ嘆き悲しむ。 そんなミリアリアに従妹のクローディアは自分が代わりに王の子供を産むと宣言した。 世継ぎを産み育てる役割だけはクローディアに。 それ以外の役割はミリアリアに。 そして宣言通り、クローディアは王子を出産した。 月日が経ち、ミリアリアは王太子妃から王妃になったが、そんな中で夫である王が急死してしまった。 ミリアリアはまだ年若い王子に王位を継がせずに自分が即位することにし、今まで表に出せなかった真実を露わにしていく。 全4話。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

処理中です...