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エピローグ【凛の話5】
病院へ向かう
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「私、龍ちゃんと病院行くから…」
私が、そう言うと理沙ちゃんとまっつんさんは、うんと頷いていた。
「凛ちゃん、何かあったら連絡してね」
「わかってる」
龍ちゃんは、まっつんさんに何かを話していた。
「じゃあね!優太行こう」
「うん。それじゃあ」
まっつんさんと理沙ちゃんは、いなくなった。私は、龍ちゃんと並んで歩き出す。
「ごめんね、龍ちゃん」
「何で、凛が謝るんだよ」
龍ちゃんは、私を見つめながらくしゃくしゃと笑った。
「こんな事になっちゃって」
「泣くなって!凛が、何もされなくてよかったよ。あっ、待って」
そう言って、龍ちゃんはポケットからハンカチを取り出した。ハラハラと何かが落ちる。
「あいつにつけられたな!気持ち悪かったよな」
私を頬を撫でる、そのハンカチは少し濡れてる。
「龍ちゃん、何か落ちたよ」
私は、飛ばされないようにそれを拾った。
【星村拓夢】と書かれた名刺だった。
「ごめん。ポケットにいれて…」
龍ちゃんは、私の驚いた顔を見つめていた。
「会ったんだ」
そう言って、私の手から名刺を取ってポケットに入れる。さっきの怒っていた龍ちゃんの顔が浮かんだ。
「とれたかな?」
「大丈夫。病院で洗うから」
「そう」
そう言って、龍ちゃんは歩きだす。私もついていく。
「星村さん、想像してたよりいい人だな」
龍ちゃんは、私の顔を見ないまま歩いてく。
「もっと、悪いやつなら殴れたかな」
そう言って、蓮見のものを握った私の汚い手を握りしめてくれる。
「汚いよ、龍ちゃん」
「汚くない。例え、凛があいつとそうなっても…。俺は凛を抱くよ」
その言葉に、私は手を握り返す。
「龍ちゃん、いつから気づいてたの?不倫してるって」
龍ちゃんは、「最近」と小さな声で言った。嘘なのがわかった。龍ちゃんの声に宿る温度で、嘘をついてるのがわかっていた。
「そっかあ…。ごめんね」
私は、そう言うしか出来なかった。
「謝らなくていいんだよ。凛が、星村さんと出会って救われたならそれでいい。人間ってめんどうな事が嫌いだろ?だから、一歩踏み込んだ関係を嫌がる。でもさ、星村さんは違ったんだろ?凛の中に一歩踏み込んできた。凛の事を受け止めてくれたんだろ?それって凄いよな!凛の中を渦巻いてる痛みや悲しみに寄り添ってくれたんだろ?そんな事簡単に出来ないよ。俺は、星村さんと話して。覚悟みたいなのを感じたかな…。だから、怒れなかった。逆に、ありがとう何て言っちゃったよ。ハハハ」
そう言って、龍ちゃんは私と繋いでない手で頭を掻いていた。うわべをなぞるだけの優しさだったら、きっと龍ちゃんは拓夢を殴っていたのだろう…。龍ちゃんがいるのをわかっていながらも、私の傷をきちんと拭おうとする気持ちを汲み取ったのがわかった。
私が、そう言うと理沙ちゃんとまっつんさんは、うんと頷いていた。
「凛ちゃん、何かあったら連絡してね」
「わかってる」
龍ちゃんは、まっつんさんに何かを話していた。
「じゃあね!優太行こう」
「うん。それじゃあ」
まっつんさんと理沙ちゃんは、いなくなった。私は、龍ちゃんと並んで歩き出す。
「ごめんね、龍ちゃん」
「何で、凛が謝るんだよ」
龍ちゃんは、私を見つめながらくしゃくしゃと笑った。
「こんな事になっちゃって」
「泣くなって!凛が、何もされなくてよかったよ。あっ、待って」
そう言って、龍ちゃんはポケットからハンカチを取り出した。ハラハラと何かが落ちる。
「あいつにつけられたな!気持ち悪かったよな」
私を頬を撫でる、そのハンカチは少し濡れてる。
「龍ちゃん、何か落ちたよ」
私は、飛ばされないようにそれを拾った。
【星村拓夢】と書かれた名刺だった。
「ごめん。ポケットにいれて…」
龍ちゃんは、私の驚いた顔を見つめていた。
「会ったんだ」
そう言って、私の手から名刺を取ってポケットに入れる。さっきの怒っていた龍ちゃんの顔が浮かんだ。
「とれたかな?」
「大丈夫。病院で洗うから」
「そう」
そう言って、龍ちゃんは歩きだす。私もついていく。
「星村さん、想像してたよりいい人だな」
龍ちゃんは、私の顔を見ないまま歩いてく。
「もっと、悪いやつなら殴れたかな」
そう言って、蓮見のものを握った私の汚い手を握りしめてくれる。
「汚いよ、龍ちゃん」
「汚くない。例え、凛があいつとそうなっても…。俺は凛を抱くよ」
その言葉に、私は手を握り返す。
「龍ちゃん、いつから気づいてたの?不倫してるって」
龍ちゃんは、「最近」と小さな声で言った。嘘なのがわかった。龍ちゃんの声に宿る温度で、嘘をついてるのがわかっていた。
「そっかあ…。ごめんね」
私は、そう言うしか出来なかった。
「謝らなくていいんだよ。凛が、星村さんと出会って救われたならそれでいい。人間ってめんどうな事が嫌いだろ?だから、一歩踏み込んだ関係を嫌がる。でもさ、星村さんは違ったんだろ?凛の中に一歩踏み込んできた。凛の事を受け止めてくれたんだろ?それって凄いよな!凛の中を渦巻いてる痛みや悲しみに寄り添ってくれたんだろ?そんな事簡単に出来ないよ。俺は、星村さんと話して。覚悟みたいなのを感じたかな…。だから、怒れなかった。逆に、ありがとう何て言っちゃったよ。ハハハ」
そう言って、龍ちゃんは私と繋いでない手で頭を掻いていた。うわべをなぞるだけの優しさだったら、きっと龍ちゃんは拓夢を殴っていたのだろう…。龍ちゃんがいるのをわかっていながらも、私の傷をきちんと拭おうとする気持ちを汲み取ったのがわかった。
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